コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、魅力的な人外キャラクターを多く描く紀ノ目さんの『人喰い化物と友達になるお話。』をピックアップ。
Twitterで2023年7月15日に投稿したところ、5.3万件を超える「いいね」と共に、多くの反響コメントが寄せられた。本記事では、紀ノ目さんにインタビューを行い、創作のきっかけやこだわりについて語ってもらった。
バケモノと主人公たちの出会いから始まる切なく優しい物語
この物語は、とある惑星に住む唯一の人間の子ども“ラッカセイ”と育ての親で人外の“ロジカ”が過ごす日々を描いた作品だ。そして、今回のストーリーは、悲しくも心が温かくなるお話。
「この森 バケモノが出るんだよ」
暗い森のなかでラッカはいたずらそうにロジカへ話しかける。ロジカが怖がる様子を見せていると、なんと目の前に怪我をして倒れている人外が現れた。苦しそうにうめき声をあげていたため、夢中で家まで連れて帰ったが、容姿は噂に聞くバケモノそっくりだ。もしかして君があの――
「みんなおれのことバケモノってよぶ」
朝起きると、人外はそう言った。やはり、噂のバケモノだったようだ。この人外は何でも食べられるらしい。ドーナツは満足そうに皿ごと食べた。岩も食べられる。だけどお腹を壊す。食べてはいけないものは誰も教えてくれないから、違いがわからないという。色々話してみると、お父さんとお母さんは喋らない、自分に名前はない、と寂しそうな様子を見せた――。
名前がない人外に、ロジカは“バクバク”と名前をつけた。「なんでも食べるから“バクバク”」。わかりやすく親しみやすい名前だ。バクバクもとても嬉しそう。
それからバクバクの怪我は徐々に回復していき、ロジカやラッカと一緒に外で走り回れるようになった。ふと、バクバクは怪我をした日のことを思い出し、ロジカとラッカから差し出されたドーナツを食べながら涙する。ドーナツはすごく美味しくて、なんだか心が温かい。
そんな楽しい日々を過ごすなかで、事件が起きる。かくれんぼをしていたときに、ラッカが毒虫に刺されてしまい、命の危険にさらされてしまったのだ。遠くに住んでいる医者を呼ぶため、家を飛び出すロジカ。バクバクは家でラッカを見守るよう頼まれた。
バクバクは一人でラッカを見守る間、これまで過ごした日々を思い返していた。キズを治してくれた、名前を付けてくれた、ドーナツをくれた、優しくしてくれた――。
苦しむラッカを見て、バクバクは決心する。
“ラッカのなかにある毒を食べてあげよう”
涙を浮かべながら毒を食べようとするバクバクにはわかっていた。毒を食べると自分がどうなってしまうのか――。満天の星空のもと、バクバクが苦しくて震える足でゆっくり歩きながら向かったのは、木のお父さんと花のお母さんのそばだった。最後、バクバクは優しく微笑みながらお父さんとお母さんのそばで静かに眠りについた。
この悲しくも心が温かくなる作品に、Twitterでは「泣いた」「切な過ぎる」などの反響コメントが多く寄せられた。
作者・紀ノ目さん「愛情は決してキレイなものだけじゃない」
――『人喰い化物と友達になるお話。』を創作したきっかけや理由などがありましたらお教えください。
当時の担当さんから、泣ける話を描いてほしいと言われたのがきっかけでした。
描いたのがだいぶ前なので、どこから発想を得たかなどは忘れてしまったのですが、泣ける絵本を結構調べていたような気がします。
――今回のお話で『ロジカとラッカセイ』を読んでみたいと思った読者の方へ、漫画の見どころをお教えください。
ロジカとラッカセイの見どころは、いろんな愛が見られるところでしょうか。
愛情は決してキレイなものだけじゃないというのを、楽しんでいただければなぁと思います。
――作品を描くうえで、特に心がけているところ、大切にしていることなどをお教えください。
本当に基本的なことですが、とにかく分かりやすく、というのを気を付けて描いてます。
――今作のなかで特に気に入っているシーンやセリフを理由とあわせてお教えください。
気に入っているシーンは、星空の下をバクバクが去ってゆくところです。
チョコドーナツを食べて涙ぐんでいるところも好きです。
どちらも美しく描けたので、気に入ってます。
好きな台詞は、バクバクに「やめろー!」と言われてビックリしたおじさんが言う「バケモノ!」です。
言っている本人も大概バケモノみたいな顔をしているけどなぁと思いながら描いた記憶があります(笑)
――紀ノ目さんの今後の展望・目標をお教えください。
やっぱり人外が好きなので、人外の良さを伝えていけたらいいなと思います。
――最後に、作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。
いつも応援してくださってる皆様、本当にありがとうございます。
今回初めて知ったという皆様は、今後もぜひよろしくお願いいたします。