コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、『ハイパーコンプライアンサー岩子』をピックアップ。
原作・相田カンナさん、作画・兎月メイさんによる本作は、主人公の厳島岩子が会社で巻き起こるセクハラやパワハラを厳しく指摘していく姿が「スカッとする!」と話題に。6月10日に相田さんが自身のTwitterにて第1話を公開したところ3.1万以上の「いいね」が寄せられ、反響が相次いだ。この記事では相田カンナさん、兎月メイさんのお二人にインタビューを行い、創作の背景についてを語ってもらった。
コンプライアンス厳守!誰にでも毅然とした態度で“物申す”主人公が「頼もしい!」
主人公の厳島岩子は、営業事務として新しく勤務する会社で入社挨拶をすることに。すると、男性社員から早々に「早速お茶でも淹れてもらおうかな」「可愛い子が淹れるお茶は美味しそうだな」と声をかけられる。しかし、その言葉に岩子は顔を歪ませて「それセクハラです」とブチギレる。岩子は“ハラスメントを絶対に許さない”、コンプライアンスに超厳格な人物なのだった。
岩子の入社した会社はみんな良い人ばかりながら、社内には陰湿なセクハラやパワハラが蔓延っていた。同僚女性のスカート丈に口を出す男性社員や、女性にお酌を強制させる時代遅れの飲み会、そして「彼氏と別れたんだって?」と女性社員をデートに誘い、結婚にまで言及する上司…。その場面に立ち会うたび、岩子はハラスメントを一つひとつ厳しく指摘していく。岩子の怒りによりそれぞれが自身の言動を改め、職場の環境は少しずつ改善されていくのだった。
そんな中、岩子の過去を知る風間という人物が現れる。同じ営業部で働いている風間は岩子に「前はこんなに口うるさくなかったのに一体どうしちゃったの?」と突っかかる。それから、風間は岩子に対して執拗な嫌がらせをするようになり…。
コンプライアンスに超厳格な岩子が、会社に蔓延るパワハラやセクハラなど様々なハラスメントを思いっきりぶった斬っていく本作。Twitter上では「痛快」「厳島さんカッコイイ」「頼もしい!」「自分の代わりに言ってもらえた気持ちになってスッキリしました」「うちの人事にも来てほしい」「パワハラモラハラ防止ガイドブックとかにして全会社に置いて欲しいレベルの出来」「自分でも気付かぬハラスメントしてるんじゃないかとヒヤヒヤするな…」など多くのコメントが寄せられ、スカッとする物語が反響を呼んでいる。
相田カンナさん、兎月メイさんのお二人が語る創作背景とこだわり
――原作を担った相田カンナさんにお尋ねします。『ハイパーコンプライアンサー岩子』はどのようにして生まれた作品ですか?
相田カンナ:企画段階で「会社のハラスメント」を題材にした漫画のコンペがありまして、私自身もホワイト企業からブラック企業まで多くの会社を経験し、会社のさまざまな問題を目の当たりにしたため、その経験を漫画で表現したいと思い制作に至りました。
――ハラスメントを絶対に許さない厳島岩子のキャラクターさはどのように生み出されたのでしょうか?
相田カンナ:「ハラスメントを指摘・解決して、会社をより良い方向に導く女性社員」という存在はある程度始めから固まっていました。1話では自分自身も岩子のキャラクターを掴みきれていなくて、変な顔で怒る女性のイメージだったので、話が進むにつれて柔らかい部分とプライベートの部分に意外性を出し、より馴染みやすい存在に肉付けしていきました。
――続いて、作画を担当された兎月メイさんにお尋ねします。『ハイパーコンプライアンサー岩子』について、原作を元に厳島岩子やその他登場人物のビジュアルを生み出す際、特に意識した点やこだわった点があれば教えてください。
兎月メイ:岩子に関しては、内容がシリアスになり過ぎないよう当初は「半沢直樹」の大和田常務のような顔芸を」と版元様からコミカルな要素を求められました。とはいえ、以前の職場では美人で評判の受付嬢だった岩子の外見とどうマッチさせるか悩みました。結果、髪を一つに束ねメガネをかけて仕事用の自分に武装し、瓶底メガネをクッションにして顔芸の時と穏やかな表情の時を区別した感じです。
岩子はプライベートまでは完全に女性らしさを失ったわけではないので、オフの時は髪を下ろしたりメガネを外したりなど普通の女の子である彼女の素の部分も残しました。岩子以外に外見のビジュアルにこだわったのは風間です。理屈っぽい、自信に溢れた若者を作り出そうとしました。あえて眉毛を出さないことで、彼の表情を乏しく、ただのイケメンよりも何を考えているかわからないサイコ感を出そうとしました。前職の岩子にアプローチした時の彼は前髪を分けていたので(気づいた方いらっしゃるでしょうか)、きっと彼にも前髪をおろすきっかけがあったのでしょう。彼にはまたいずれ前髪を分けてもらいたいですね。
――本作を漫画として仕上げていくうえで印象深かったエピソードはありますか?
兎月メイ:上記にも書きましたが、評判の美人である岩子の変顔と極端ともいえる彼女の言動をどうやってうまく混ぜるか迷いました。原作者様がかなり個々のコンプラについて詳しく、真面目に向き合っている分、作品として重くならないように「コミカルな要素」を出すとなると岩子の極端とも言える言動でそれを演出するようにしました。1話目、2話目と進めていくうちに自然とキャラが動き出した感じです。
そのとき実はすごく助かったのが、本田のキャラです。本田は最初のハラスメントの無自覚な加害者ではありますが、彼の性格、立ち居振る舞いが容易に想像しやすく、彼のおかげでかなり岩子の動き方についても助けてもらいました。これ、あえて本田のようなキャラを最初に出したのだとしたら原作者様には本当に脱帽です。
早乙女と奥沢のロマンスも個人的には描いていて楽しかったです。岩子には基本的に恋愛要素は皆無なので、早乙女の「乙女感」がうまく出ていればいいな、と思いました。
――お二人にとって、本作の中で特に思い入れのあるシーンやセリフがあれば、理由と共に教えてください。
相田カンナ:具体的には4話からの岩子が風間との出会いで自分自身を見つめ直し、悩んでもなお突き進もうと決意するシーンです。一見メンタルが最強そうに見える岩子ですが、岩子も他の人間のように悩んだりするし、短所もありつつ、直そうと努力します。そういった部分が人間らしいと思いますし、岩子との距離感もグッと近づいた感覚がありました。風間は根本的に嫌な奴ですが、作品をより良くしてくれた存在なので、感謝しています。
兎月メイ:ハラスメントといえば男性から女性に行う、という構図になりますが、女性同士、しかも女性上司からのハラスメントも十分にある。相手が同性であろうと岩子のキレッキレの指摘が描いていて気持ちよかったです。
特に対泉川課長。彼女の「あなたのためを思って」という姿勢で来るハラスメントにはなかなか言い返せない人が多いのではないのでしょうか。その意味では、男性上司よりもやっかいですよね…。ハッとしたのは、「女性だからって気安く触らないでほしい」という鈴音の言葉です。確かに、同性だったら気安く触っていいのかってそんなことは無いですよね。
個人的に気に入っているのは、本田が1話以降改心していく姿を感じられるところです。あんなに無自覚にハラスメントをしていた鈴音に対し、彼女の体調を気遣うようになったり、風間の行き過ぎた言動を静止する場面があったりと、彼の成長を描くのが楽しかったです。
――最後に作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。
相田カンナ:岩子のキャラクターが濃すぎて冒頭で読むのをやめてしまった方もいるかもしれませんが、女同士のいざこざ、会社の闇、外見・悪口の話など日常に潜んでいる話題も詰め込みました。素敵な終わり方にしてもらったので、是非最後まで読んで欲しいです!
兎月メイ:冒頭だけ読んでしまうと「よくある男叩きのハラスメント話」と捉えられがちですが、きちんと女性に対しても岩子は気持ちよくぶった斬っていきます!作画担当としては登場人物全員に幸せになって欲しかったので、ほっこりエピソードも最終話に盛り込んでいます。もしまだ読んでいない方はぜひ読んでみてください。
■作者Twitter:
相田カンナ [ @aida_kanna ]/兎月メイ [ @UsazukiMay ]
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