長らくテレビを見ていなかったライター・城戸さんが、TVerで見た番組を独特な視点で語る連載です。今回は『霜降り明星のあてみなげ』(毎週木曜夜0:15-、静岡朝日テレビ)をチョイス。
私には青春コンプレックスというものがある「霜降り明星のあてみなげ」
私には青春コンプレックスというものがある。オンラインゲームにどっぷり浸かっていた学生時代、人とのコミュニケーションといえばチャットでの煽り合い。外を歩けば、視界にエイムが表示され、道行く人々をヘッドショット……高校に入ってからはある程度改心したが、少なくとも花より男子と比べると、ロクな学生生活とは言えなかっただろう。青春をドブに捨てたという自覚があるから、いま青春を送っている連中がとにかく輝いて見え、胸が張り裂けんばかりに苦しくなる。私だってそれなりに楽しく生きているんだから良いんだけども、コンプレックスは理屈で解消されるものではない。私は、ただ、ただ、恋愛がしたいのだ。
静岡朝日テレビ『霜降り明星のあてみなげ』では、霜降り明星のふたりが静岡県にある”科学技術高等学校”を訪問し、授業の体験や生徒たちとの交流を深めるという企画が2週連続で放送されていて、今回私が見たのは8月3日放送回の後編。前編は残念ながら見られていないが、同じく工業高校出身の私としては、後編だけでお腹いっぱい、全編を鑑賞していたならば胃袋がはちきれていただろう。
まずもって、私の通っていた工業高校と、この静岡県科学技術高等学校という場所は、何もかもが違いすぎる。綺麗で大きくて人が多い。立地や偏差値からして違うだろうし比べても仕方がないかもしれんが、私は比べるのをやめられない。高校に学食があるというのはどういう事か?まず学食というのがうらやましい。人生に学食があった試しがない。この間、ある大学を訪れる用事があって、初めて学食というものを食べたのだが、鉄の味しかしなかった。鉄の味というのはつまり、嫉妬の味である。
こうして、現役の高校生たちが志を持って活動しているのを見ると、高校時代、自分に何が起きていたのか、まったく分からない。工業高校にいながら、はんだごてすらマトモに使えないくらい何もやっていなかったのだから当然だが、何かやればよかった。この”何かやればよかった”という後悔を体内に炸裂させるために、他人の青春を見ている節もある。もしかしたら自傷行為に近いのかもしれない。
自分の話ばかりしてどうしようもない。嫉妬以外の感想を言うと、霜降りのふたりがやいのやいの言いながらロケをするのはそれだけでやっぱり面白いし、20キロの俵を持ち上げる時間を競う『TAWARAちゃん』という力勝負でウェイトリフティング部の生徒と対決する際、さっと後ろに応援団が現れて応援を始めたりなど、番組そのものの動的な魅力も感じた。特に今回は、せいやの魅力が溢れていた。あの人懐っこい人柄が、学生相手だと、気のいい兄ちゃんのようにも映る。どうにかしてせいやと友達になりたいと常々思っている私からすれば、せいやと至近距離で会話をしている、という意味でも、あの静岡県科学技術高等学校の学生たちには嫉妬を覚えずにはいられない。