画面の前にいるだけで「明るくて楽しくて華やかなアメリカの青春」の空気に触れることができる人気ドラマシリーズ「ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル」が、最終章となるシーズン4に突入した。ジョシュア・バセット(リッキー役)、ソフィア・ワイリー(ジーナ役)、マット・コーネット(EJ役)、ジュリア・レスター(アシュリン役)、フランキー・ロドリゲス(カルロス役)、さらにシーズン3のキャストからエイドリアン・ライルズ(ジェット役)、セイラー・ベル(マドックス役)も登場と、ちょっとした同窓会と言っていいだろう。だが、「あれ? あの人物はどうしたの? 今回は出ないの?」と気をもんでいる人も多いはず。「ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル」のシーズン1~3にかけて出演し、主役の1人として作曲に才能を発揮するキャラクター:ニニに扮(ふん)して大活躍していたオリヴィア・ロドリゴだ。同ドラマシリーズで人気を博し、現在は歌手として世界的に注目を集めるオリヴィアについて解説する。
歌手デビューして世界的人気に
オリヴィアは2003年2月20日生まれの20歳。本シリーズにはシーズン1より出演していたが、歌手として本格的な活動を始め、しかも猛烈に大ヒットしたということもあるのか、“永遠のワイルドキャッツ ニニより”という手紙を残してシーズン3で卒業してしまった。「オリヴィア=ニニ」というイメージが今なお頭から離れないファンは多いはずだし、シーズン4にもサプライズとしてどこかに出るはずだとの希望的観測を捨てていなかった人も多かろう。
もっとも、彼女は演技を始める前から音楽に夢中だった。4歳からボーカルやピアノのレッスンを始め、小学生の頃にはギターも手掛け、やがて作詞・作曲に取り組むようになった。演劇体験は6歳の頃だという。
2015年には、映画「An American Girl: Grace Stirs Up Success」で主人公のグレースを演じ、翌年になるとディズニーチャンネルのTVシリーズ「やりすぎ配信! ビザードバーク」でペイジを好演。「ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル」のニニ役が始まったのは2019年からだ。演技と音楽の双方で才能をアピールできる同作に出合えたことで、オリヴィアのキャリアは大いに加速した。
「ニニ」を離れて発表した2021年のデビューシングル「ドライバーズ・ライセンス」は全米総合ヒットチャートでいきなり初登場1位、しかも首位を計8週間も続け(前代未聞であるという)、しかも最年少での初登場首位獲得であったという。デビュー早々に米タイム誌が発表する「次世代の100人」の2021年版にも選出された。
ファーストアルバムが大ヒット
ファーストアルバム『サワー』も全米総合アルバムチャートで初登場首位、Spotify「2021年世界で最も再生されたアルバム」部門でも首位に。「第64回グラミー賞」(2022年)では新人賞、ポップ・ソロ賞、ポップ歌唱アルバム賞の3部門に輝いた他、主要4部門にもノミネート。オリヴィアの歌声、ソングライティングはもちろん、プロデューサーを務めたダン・ナイグロの卓越したセンスも含めて、見事に時代に刺さったということなのだろうが、「ニニが歌っている」ということで購入したファンも相当数、いたのでは。
そこで『サワー』だが、当たり前かもしれないけれど、そこで歌われているのは「ニニの心の情景」ではない。オリヴィア・ロドリゴという当時10代の女性が、熱い恋をし、別れを知り、悩み、苦さ(サワー)の中で考え、ブチ切れ、内省し、“それでも私は生きていく”的なストレンクスが、非常にタイトなメロディーやリズムに乗せて表現されていく。新しい彼女の許で幸せにやっているかもしれない元彼に向けての未練というかメッセージ的な楽曲も目立つが、こうした題材が実体験に基づいているのだとしたら、その元彼は不特定の、本当に多数の人々に「過去を見られている」ことになり、身が縮む思いであろう。そしてニニに憧れていた少女たちは今後、オリヴィアの歌を聴いて、1人の女性として力強く飛び立っていくに違いない。
去る6月下旬には先行シングル「ヴァンパイア」がリリースされ、9月8日(金)には待望のセカンドアルバム『ガッツ』も登場する。オリヴィア・ロドリゴ現象、もうそろそろ派手に日本にやってきてもおかしくないはずだ。
オリヴィアの出世作ともいえる「ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル」シリーズは、ディズニープラスで独占配信中。
◆文=原田和典
https://www.disneyplus.com/ja-jp/series/high-school-musical-the-musical-the-series
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