コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回ピックアップするのは、X(旧Twitter)に数多くのショート漫画を投稿しているまるいがんもさんの『落ち込んだ時に観る映画』だ。
まるいがんもさんは、コミックエッセイを毎日執筆するかたわら、たまに創作漫画を投稿している漫画家。そんなまるいがんもさんが2023年7月17日(月)にツイートした『落ち込んだ時に観る映画』は、意外な視点から描かれた内容に対して納得する読者が続出し、4万以上の「いいね」を獲得している。
作者のまるいがんもさんに話を伺い、同作が生まれた経緯や裏話などを語ってもらった。
店員さんがおすすめした作品は…
本作ではレンタルビデオショップの店員とお客さんのやり取りを中心に描いている。「今すごく…落ち込んでいるんです…」と悩むお客さんに、1枚のDVDをおすすめする店員さん。後から同僚が「何の映画を選んだの?」と聞くと店員さんは、「観たらズタボロに精神落ちて二日くらい引きずっちゃう暗い映画」と答える。
同僚は「せ、性格悪いなぁ…」と驚きますが、「落ちるとこまでいったん落ちた方がスッキリしますよ…」という意見に妙に納得。次の日、おすすめした映画を返却しにきたお客さんは、落ち込んでいた様子から一変して…。
同作の読者からは「意外な面白い視点ですね」「私も落ち込んだ時は暗い映画を見ます!」「マジで何の作品を紹介したのか知りたい…」など様々な反響が相次いでいる。
作者の過去の実体験をきっかけに生まれた作品
――『落ち込んだ時に観る映画』を創作したきっかけや理由があればお教えください。
元々暗いテーマや雰囲気の映画が好きでした。20歳くらいの時は、人生という長い尺で見たときに割と落ち込んでいる時期だったんです。その頃、なぜか毎日のように映画を見ていました。なぜか暗めの映画ばかり見ていてなんとかその時期を乗り越えたことが、きっかけといえばきっかけでしょうか。暗い映画に浸っていい意味で気晴らしになっていたように思います。
TSUTAYAで映画を借りようとしているときに、なんだかその頃を思い出してこのマンガを描いた気がします。
――描いたうえで「こだわった点」あるいは「ここに注目してほしい!」というポイントがあれば教えてください。
こだわった点ではないのですが、DVDを研磨機でクリーニングしているところに注目してくれた方が何名かいてくれて、「そこを見てくれるのか」とちょっと嬉しかったです。僕の通っていたTSUTAYAではセルフレジのところにあの機械があって、お客さんでも自分でギュイーンってできたんです。あれなんかちょっと気持ちいいんですよね。
――特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由とともにお教えください。
「人の心なんてそんな単純なものじゃないでしょう?」「それならいっそ落ちるところまでいったん落ちた方がスッキリしますよ…」というセリフです。
ハッピーな気持ちになりたいからハッピーな映画を観る。おそらく正しい行動かもしれませんが、僕はちょっとあまのじゃくな性格なので「正直そんなことないだろう?映画はハッピーなストーリーかもしれないけど、それを見たからって果たして自分がハッピーになれるのか?」みたいなことを考えてしまいます。
「凹んだときはとことん凹んでしまった方がむしろスッキリ復活に向かえるのではないか」と自分が凹んだときは思ってしまいます。中途半端な状態だとなんかモヤモヤしてしまい…。
例えるなら、「ダイエット中に欲望に負けてちょっと食べ過ぎてしまった。→ならばいっそ今日はもう好きなだけ食べよう。」みたいな感じです。多分これは自己破壊的な気もしますのであまり良くない心理だとはわかっているんですが、自分ではそうなることがたまにあります。
――“暗い気分のときに暗い映画を観て元気になる”という発見は、ご自身の経験にもとづくものなのでしょうか? 気づいた経緯も、ぜひ教えてください。
そうですね。これは最初の問いの答えと同じで経験にもとづきます。ただ、自分の場合は元気になる、というよりかは不安などがなぜか少し和らぐ、落ち着くという感じでしょうか。
――同作の公開後に4万いいねも集まりましたが、特に印象的だった、嬉しかったコメントがあれば教えてください。
特にこのコメントがというよりかは、みなさん「あの映画かな?この映画かな?」とそれぞれ思いあたる映画をコメントしてくれていたのが嬉しかったですね。で、僕はそこに上がっている映画はだいたい観ていて、「そうだよなあ、それを思い浮かべるよなあ」とコメントを読ませていただきました。
実際このマンガを描いたとき、頭に思い浮かべたのは「この一本!」というわけではなく、複数の映画を僕自身は頭に浮かべて描きました。
――今後の展望や目標をお教えください。
今後の展望、理想は、コルクでWebtoon(縦スクロールマンガ)のネーム担当を軸に据えてやっていきつつ、自分のマンガも並行して描いて作品を重ねていくことです。
――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします!
読んでくださり本当にありがとうございます。もしまた何かのきっかけで僕のマンガを目にする機会があれば、「ああ、あの暗い映画が好きって言ってた根暗な作者か…」と思い出していただければありがたいです。