コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、漫画家・荒井小豆さんの『醤油を借りにいくだけで死ぬことがある世界の中級サバイバルガイド』をピックアップ。
2016年からネット上で連載をスタートし2017年に単行本化も実現した本作は、ゾンビに蝕まれた世界で生きる女子3人組のサバイバル術とゆるい日常を描き、話題を呼んだ。2023年8月現在までの間で計47話が公開されている中、6月15日に作者がX(旧Twitter)に第1話を投稿したところ5万以上の「いいね」が寄せられ再び注目を集めている。この記事では荒井小豆さんにインタビューを行い、創作の背景やこだわりについてを語ってもらった。
ゾンビのいる世界でも日常を謳歌する女子3人の“知恵”と“勇気”の物語
突然人類がゾンビと化した、人口50万人のとある地方都市。国は急遽街を封鎖し、巨大な隔離壁の建造を始めるも中にはまだ生存者が閉じ込められたままだった。
街中の下宿に住む吉竹と浅井、馬場の3人は、ゾンビが外を闊歩するなか下宿に立て篭もり、どうにか毎日を過ごしていた。そんなサバイバル生活も92日目を迎えた頃、浅井の部屋にいた吉竹がふとドアを開けて廊下に出ると、1人のゾンビと遭遇してしまう。
吉竹は思わず浅井の部屋に戻り、ゾンビを机で押さえ動きを阻止して事なきを得た。吉竹が言い訳をする中、机を押さえていた馬場が「トイレに行くから交代して」と言い部屋を出る。しかし、馬場はそのまま逃げてしまったようで部屋に戻ってこない。そこで2人はひとまずゾンビを部屋から出そうと、大きな音を出して気を引き廊下へと誘い出すことにする。
フライパンを叩きながら階段を降り、1人でゾンビを誘導する浅井と、上から見守る吉竹。しかしその大きな音に釣られて、外のゾンビたちが1階の割れた窓から次々に侵入していた。背後まで迫るゾンビの群れに驚いた浅井は、足を滑らせ階段から落ちてしまう。四方を囲まれ絶体絶命の中、3人はそれぞれの手段でゾンビに立ち向かうが…。
かけがえのない日常を謳歌するため、知恵と勇気を振り絞って日々奮闘する3人をコミカルに描く本作。ゾンビがいる世界ながらも随所に生活感が散りばめられ、リアリティを感じさせるストーリー展開やクスッと笑えるセリフ、そして時にホラーに描かれるサバイバルコメディが話題を集めている。X(旧Twitter)上では「最高に面白い」「ゾンビ系でここまでギャグに走れるのすごい」「日常的なゆるさも持ち合わせていて素晴らしい」「すごい世界観！」「何周しても面白いな」「これほどアニメ化してほしい漫画ほかに無いかもしれない」などのコメントが寄せられ、大きな反響を呼んでいる。
ゾンビ映画に影響を受けて 作者・荒井小豆さんが語る創作の背景とこだわり
――『醤油を借りにいくだけで死ぬことがある世界の中級サバイバルガイド』はどのような発想から生まれたのでしょうか。創作のきっかけや理由があれば教えて下さい。
もともとゾンビ映画が好きで、ゾンビが支配する世界に友達と一緒に行けたら楽しいだろうなというところから発想しました。当時、会社を辞めて遊び惚けたかったのでその動機も強かった気がします。またロメロ監督のショッピングモールで生活するシーンとか、ドラえもんの鉄人兵団で鏡面世界で敵を迎え撃つ前夜のシーンとか、危険地帯のなかの安全地帯で仲間と過ごすシチュエーションがとても好きで、そういう感じの肉付けをしていきました。
――浅井や吉竹、馬場たちの会話をメインに、“非日常の中で日常が進行していく”物語が魅力的です。本作を描く際に特にこだわった点や「ここを見てほしい」というポイントがありましたら教えてください。
本作に出てくるゾンビは「走らないゾンビ」です。走らないため、弱いです。きちんと作戦をたてればまあまあ簡単にミッション成功できそうにみえます。そのためキャラクター達は「そんなことで！？」というくらい、しょーもない理由でゾンビがうろつく危険地帯に出かけていきます。そして時にピンチに陥ったりします。キャラクター達はぼくらと同様、特別な力や強い武器をもっているわけではありません。使えるのは人並みの知恵と勇気だけです。そういった点で、自分ならどうするかなとパズルを解くように考えながら読むと、面白くなるかなと思います。
――現在47話まで創作されている本作ですが、荒井小豆さんがストーリーを創り上げていくうえで各話ごとのテーマや設定はどのようなところから着想を得ているのでしょうか？
あの世界でキャラクターたちが何を欲したら面白いか、それもできるだけ下らなくてキャラクターにとっては切実なものは何か、そういうことから考えてネタを練っています。
――本作の中で特に思い入れのあるシーンやセリフはありますか？
吉竹(主役のひとり)が公衆トイレの個室でゾンビに囲まれて出れなくなるエピソードが一番気に入ってます。
――荒井さんが現在ウェブコミック配信サイト「裏サンデー」(小学館)で連載中の『異世界ありがとう』も話題を集めていますが、作品の見どころを教えていただけますか。
いわゆる異世界転生ものなんですが、ファンタジーは好きだけどハーレムや無双の要素が苦手という人にお勧めします。
――最後に作品を楽しみにしている読者やファンの方へメッセージをお願いします。
長らく醤油の連載がとまってしまっていますが、最後まで描き切りたい意思はありますので、長い目で見守っていただけるとたすかります…！
この記事はWEBザテレビジョン編集部が制作しています。
■作者X(旧Twitter)：荒井小豆 [ @araiazuki ]
■記事で紹介した『醤油を借りにいくだけで死ぬことがある世界の中級サバイバルガイド』をニコニコ静画／pixivで読む
■荒井小豆さんの連載作品『異世界ありがとう』を裏サンデーで読む
