俳優の杏が8月28日、都内で開催された映画「私たちの声」(9月1日[金]より公開)の公開直前トークイベントに、呉美保監督と共に出席。仕事と育児の両立方法や、俳優復帰のために行ったことについて語った。
アカデミー賞授賞式には「自分の力で戻りたい」
世界の映画界で活躍する女性監督と俳優が集結し、女性が主人公の7つのストーリーを紡ぎ出した同映画。実際の出来事から着想を得たエピーソードから、物語仕立てのフィクション、アニメーションなど世界各地を舞台に感動的で力強い物語が描かれる。杏は、7つのストーリーの中の「私の一週間」に出演し、シングルマザーのユキを演じた。
現在、フランスを拠点に3人の子どもをシングルマザーとして育てている杏。同映画には、呉監督の指名で出演することになったと言い「感情はユキのもので、家事や子どもと触れあう動作は、日常の経験がすごく生かされているんじゃないかなって思います」と撮影を振り返った。
主題歌「Applause」を手掛けたのは、ダイアン・ウォーレン。同曲は、2023年度のアカデミー賞の歌曲賞にノミネートされ、杏と呉監督も授賞式に参加した。杏は「歌曲賞ってことで、すてきなご縁があって歩かせていただきました。また自分自身の力で戻ってきたいなって思いましたね」と感想を述べた。
呉監督は「杏さんと一緒に、レッドだと汚れ目立たないけど、シャンパンだと汚れが目立つから『掃除が大変だね』って言いながら歩きました(笑)」と笑わせ、「スクリーンで見ていたそうそうたる俳優陣、監督、世界のスターの方たちの中にいる。本当に夢のような瞬間で、帰ってきて『あれは夢だったのかな』って、家で洗濯物をたたみながら思う瞬間がありました。でも、初めてネイルをしたんですけど、ネイルを見るとちゃんとあるから『夢じゃなかったんだ』ってなりましたね」としみじみ。
これに杏は「全く同じ。ネイルを見ながら『行っていたんだな』って。(ネイルを)落とす時寂しくなりました」と共感した。
俳優復帰にあたり育児マニュアル作成
映画の内容にちなみ、仕事と子育ての両立方法についてもトークを展開。杏は「両方同時は無理ですね。(子どもを)見ていると、仕事のことを考えるのはかなり難しいと思います。(子どもが)寝た後に自分のことを優先順位を付けて片付けていく。前もって『何時からこれをやる』っていうのは難しいので、ブルドーザー育児と言っていて(笑)、とにかくやれることを時間の限りバーっとやっていく。多少、周りの方に助けていただいて、なんとかやっています」と話した。
また、SNSや観客から寄せられた質問に二人が答える企画も。「育児休業を経ての再就職のタイミングがつかめず、今に至る。どのように仕事復帰されたのでしょうか」という質問に杏は「撮影の間どうするかという段取りがすごく大変でした。誰が手伝いに来てもいいように『この子はこれとこれがセット』、洗濯機には『この子はこれがサイズ』、掃除機の使い方から洗剤の位置も全部わかるように、エクセルで作りました」と答えていた。
◆取材・文=大野代樹