“韓国で最も美しい女優”と評されるキム・テヒ。今年43歳を迎えた彼女は、表面的な美しさだけに留まらず、役者として積み上げてきた実績と実力で新たなファン層から支持を得ている。今回は、進化し続けるキム・テヒのこれまでの活躍と現在を深堀りする。
チェ・ジウを不幸に陥れる悪女役でブレイク
1980年生まれのキム・テヒは、2000年にテレビCMで芸能界デビュー。2001年に映画「ラスト・プレゼント」の出演で女優デビューを果たすと、2002年には短編映画「新都市人」と連続テレビドラマ「レッツゴー」で演技力を磨いた。
知名度を上げるきっかけとなった作品は、2003年に出演したドラマ「天国の階段」。韓国で最高視聴率45.3%を突破した同作は、当時の韓国ドラマの定番であった交通事故、記憶喪失、禁断の愛、病魔といったテーマを盛り込んだ作品で、キム・テヒはハン・ユリ役に抜擢。富と名声目的でクォン・サンウ演じるチャ・ソンジュとの結婚を企み、彼とチェ・ジウ演じるハン・チョンソの再会を妨害するために交通事故を起こすというキャラクターを演じている。薄幸のヒロインであるハン・チョンソとは対照的に、己の欲望を叶えるためなら他人を陥れることもいとわない強烈な悪女ぶりは、当時視聴者の間で大きな反響を呼んだ。
そして2004年には韓国に伝わる伝説をモチーフにしたファンタジー・アクション「九尾狐外伝」や、大学生の恋愛物語を描いた「ラブストーリー・イン・ハーバード」に出演し、演技の幅の広さが評価された。
低迷期を乗り越えて辿り着いた新境地
そのキャリアは決して順風満帆という訳ではなかった。主役を演じた2006年の映画「レストレス~中天~」、2007年公開の映画「喧嘩 -ヴィーナスvs僕-」、2009年に封切りされた映画「グランプリ」が商業的成功を収めるに至らなかったため、“実力不足”のレッテルを貼られてしまったのだ。前述した通り、ルックスを賞賛するキャッチコピーで一躍スター入りしたために、このような批判が起こったのかもしれない。
映画というフィールドでは不遇の時代を迎えたキム・テヒだが、テレビドラマでは多くの視聴者から愛された。2009年に放送されたイ・ビョンホン主演のスパイドラマ「IRIS-アイリス-」でプロファイリングの専門家であるヒロイン役、2011年放送のラブコメディー「マイ・プリンセス」では皇女と勘違いされてしまう女子大生役を担当。シリアスなキャラクターを演じ切る技術はもちろん、彼女自身の遊び心が随所に現れる表現力で、その人気が“美しさ”によるものだけではないことを証明した。
活躍は国内だけに留まらず、日本で2011年に放送されたドラマ「僕とスターの99日」では西島秀俊とダブル主演を務め、本人をそのまま投影したような人気俳優役としてキャスティングされている。
結婚と出産…3年ぶりの復帰作で一皮剥けた圧巻の演技力を披露
2017年に俳優で歌手のRAIN(ピ)との結婚を発表し、同年に第一子、2019年に第二子を出産。アイドル的人気の高い俳優であればフェードアウトしてもおかしくないが、もちろん彼女は芸能界を諦めることはなかった。
2023年には韓国ドラマ「庭のある家」で約3年ぶりにドラマ復帰。本作では、完璧な家庭を築いていたはずの女性・ジュランが、自分とは正反対の生活を送るサンウンと出会うことで物語が大きく動き出すサスペンススリラーだ。キム・テヒはメインキャストであるジュラン役を演じており、ある日自宅の庭から漂う悪臭によって死体が埋められていることに気づいたジュランは、病院の院長である夫に疑惑の目を向けるようになる――。
年齢を重ねた彼女の最大の武器は、まさに圧巻の演技力だ。愛する夫と息子と共に何不自由ない生活を送っていたはずが、突如として当たり前の幸福を失い、足元が崩れ落ちていく女性の姿を見事に演じ切っている。誰を信じていいかもわからず、戸惑いを隠しきれずに錯乱するシーンでは、“韓国で最も美しい女優”という評価を覆すかのような緊迫感とリアリティーに溢れた演技を見せつけた。かつては表層的な美に縛られていた彼女が、年月を積み重ねて自ら勝ち取った実力で、さらなる高みへとステップアップした作品と言えるだろう。
そんなキム・テヒの新たな一面を感じることができる「庭のある家」(動画配信サービス「Hulu」で全話配信中)。先の読めない展開で繰り広げられるストーリーはもちろん、復帰作とは思えないキム・テヒの息を飲むような演技も見どころとなっている。
NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
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