コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、漫画家の戌森四朗さんが描く『だぶるぶる-Double Bull-』の第1話をピックアップ。
X(旧Twitter)で2023年7月25日に投稿したところ、8,500件を超える「いいね」と共に、多くの反響コメントが寄せられた。本記事では、戌森四朗さんにインタビューを行い、創作のきっかけやこだわりについて語ってもらった。
“夢中になって楽しめるもの”を探している主人公がある日ダーツに出会う
物語は、主人公の津田みち(高校1年生)が友人とカラオケに来ていたところから始まる。ここは、カラオケや漫画喫茶、ビリヤードやダーツが楽しめるアミューズメント施設だ。
楽しい時間を過ごしたみちだったが、表情は不満げ…。きっかけはカラオケで思うような点数が出なかったことに始まる。そしてさらに、これまで色々な趣味や遊びを経験してきたが、どれも今一つ夢中になれないことに、もどかしい気持ちを爆発させていた。
みちにもすごいところがあると励ます友人と共に、ドリンクバーのグラスを持ちながら歩いていると、友人が男性にぶつかってしまい、飲み物をかけてしまう。男性は酔った様子で、下心から「許す代わりに連絡先を交換しよう」と提案してきた。しかし、知らない人に連絡先を教えるのには抵抗がある――。
二人の嫌がる様子を見た男性は、施設内にあるダーツで勝負をしようと持ち掛けてきた。男性が勝ったら連絡先を交換。みちたちが勝ったら連絡先交換はなし。みちたちが勝てば何事もなく許してもらえることになるが、どうやら男性はマイダーツを持っているほど慣れている様子で、勝敗は一目瞭然のように思える。
みちが「ずるい」と抗議すると、マイダーツを使わないことと更にハンデを提案され、勝負を受けた。近くで一人ダーツをやっていた女子高生“多月琴海(たつきことみ)”が、みちたちの騒がしい様子を少し呆れた様子で見つめている。
いざ勝負が始まると、みちはフォームも投げ方も間違っていて、ダーツがボードに刺さりもしない。思わず琴海が声をかけてくる。ダーツの持ち方やフォームなどのコツを教えてくれた。
やり方がわかったことでやる気を出したみちは、改めて勝負に戻る。すると、今度はきちんとボードに命中した。その後も、琴海がそばで見守り、アドバイスを送る。
ドキドキ…ドキドキ…
みちは勝負に夢中になり始めていた。そのとき、男性のミスで“もしかしたら勝てるかもしれない”というタイミングがやってくる。みちは琴海からのアドバイスに耳を傾ける。
成功をイメージしながら、みちは段々とゾーンに入っていった。ボードに吸い込まれるように投げられたダーツは3本ともBULLに入る。ハットトリックだ。
最後はナイススローを見せたものの、結果的には男性に負けてしまった。みちは悔しかったが、それと同時に夢中になれるものを見つけた喜びでいっぱいだった。
後に、琴海も同じ高校に通っていたことを知り、楽しいダーツ生活が始まる予感を残して第1話は終わっている。この青春ダーツストーリーは全4巻。完結しているため、続きが気になる人はぜひ一気に読んでみてほしい。
作者・戌森四朗さん「楽しい時間を共有出来るダーツ漫画を作りたくて」
――『だぶるぶる-Double Bull-』を描き始めようと思ったきっかけや理由などをお教えください。
ダーツは日頃から好きでやっていたのですが、ある日『自分の作品でオリジナルのダーツグッズが欲しい――!』と漠然とした私欲が押し寄せてきたんです。
キャラクターを作って、物語を作って、同人誌を作ってグッズを作ろうかと考えていましたが、丁度そんな時にSQUARE ENIX様からお声がかかり、本格的に『だぶるぶる-Double Bull-』の制作が始まりました。
連載当初はそういった感じだったのですが、時は進み、現在は連載終了しているので振り返る形になってしまうんですが、誰かと一緒にボードに向かって、ダーツを投げたり雑談したり、良いプレーが出来たら声を掛け合い、心地の良い高揚感を感じられる。
そんな楽しい時間を共有出来るダーツ漫画を作りたくて『だぶるぶる-Double Bull-』を描き始めたのかも知れない。今はそう感じています。
――今作を描くうえで、特に心がけているところ、大切にしていることなどをお教えください。
ネームや作画をする時、とにかく楽しそうな時間や空間を描こうと意識していました。
主人公のみちちゃんは楽しそうなオーラがあって表情も多彩なので、描いている自分もかなり楽しませてもらいました。
作画面でいいますとダーツを持つ手や指、女の子なので身体のラインに気を付けて描きました。
――今回紹介させていただいた第1話の中で、特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由とあわせてお教えください。
『ダーツがボードに吸い込まれるみたいに』と、 極限まで集中したみちちゃんが3投目のセットアップをしている見開きシーンです!
このカットは一回完成させた後に、集中を表現しきれてない!これじゃない!と気に入らなくてラフスケッチから描き直しました。
ちなみに次のコマ、瞳に映ったダーツボードを左右反転し忘れたのはいい思い出です……。
――ダーツのお話を描くにあたり、ルールやフォーム、競技としての魅力など多くの知識が必要になると思います。どのようにして知識を深めていったのでしょうか。
描くにあたり、改めてプロの試合やHOWTO系の動画などを見漁りました。
その過程の中で、色んな選手を参考にキャラクターを考えていったのですが、同じプロと一括りしても、姿勢やダーツの持ち方、リズムやルーティン……本当に人それぞれ個性があって凄く面白いんです。
その中から更に深掘りしていく形でちょっとずつ勉強していきました。
――戌森四朗さんの今後の展望・目標をお教えください。
自分は人生に行き詰まった時、素晴らしい作品に出会って、人をここまで惹き込ませるモノがあるのかと感動しました。
そして月並みではありますが、それで自分もクリエイターになりたいと思いました。
それから紆余曲折ありましたが、ようやく単行本を出せる漫画家になりました。そして今でも変わらずその作品が大好きです。
自分もいつかそういってもらえるモノを作りたいです。
――最後に、作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。
まずはここまで読んでいただきありがとうございました……!
亀の歩みかも知れませんが、まだまだ精力的に活動していくつもりなので、温かい目で見守っていただけると嬉しいです!
協力:株式会社ダーツライブ