コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、漫画家として活動するさわぐちけいすけさんがX(旧Twitter)に投稿した『マンガ描き方マンガ』を紹介する。
同作は漫画の登場人物の心理描写を描くためのテクニックを解説するショート漫画。同業の漫画家だけでなく、普通の読者からも関心を集めたようで、8月10日に投稿された後、1万7000件の「いいね」を獲得している。
ちなみに『マンガ描き方マンガ』はシリーズ化しており、その後に「その2」「その3」も公開。そこで作者のさわぐちけいすけさんにインタビューをおこない、同作が生まれたきっかけや裏話を語ってもらった。
全ての読者は漫画家の手のひらの上で踊らされている…
「なぜ急に俺の正面からのショットを?」。そう驚く男性に対して、もう1人の男性が「片方は狼狽えていて、もう一方は泰然自若としている様子が読者に伝わるようにするためだ」と、このコマの描写の意味を解説していく。
さらに「なぜ部屋全体を上から写す?」「手だけ写してなんの意味が…?」など、漫画でよく見かける場面に対しての質問も。1人の男性は淡々と「キャラの感情だけでは読者を置いていってしまう」「視線誘導だ」と彼の疑問に対して答えを述べる。
そして2人にフォーカスが当たっていたが、次の場面でアングルを引いた形に。そこで、その場には2人の男性の他に、背中の刺傷から血を流してうつ伏せで倒れている人の姿が…。
漫画を描く際のテクニックがいくつも明らかになり、読者からは「漫画家じゃないけど、すごい勉強になる!」「意図がわかると、さらに面白く読める!すべてのカットに意味があるんだね」といった様々な反響が寄せられている。
描かれている漫画家の意図は実際の100分の1にも満たない!?
――『マンガ描き方マンガ』を創作したきっかけや理由があればお教えください。
以前、友人に「そんなに色々考えながらマンガを描いてるのか!」と驚かれたことがありました。8月に入り、仕事の合間にいつもと違う漫画を描いてみたいなと思った時に不意にそのことを思い出したので、「考えていることを寧ろバラしちゃうマンガ」を描いてみたら面白いのか試してみたくなり描き始めました。
――描いたうえで「こだわった点」あるいは「ここに注目してほしい!」というポイントがあれば教えてください。
「こだわった点」
マンガを描く上で考えていることを本当に全部描いてしまうとびっしり文字だらけになってしまうので、マンガとして読めるように解説セリフはかなり削りました。マンガの中でマンガの描き方を解説しているセリフは、実際に考えていることの100分の1にも満たない分量だと思います。
「ここに注目してほしい」
今回はメイキングや演出の裏側という別の楽しみ方をマンガにそのまま混ぜてみました。本来であれば読者には作り手の工夫や意図なんか気にせずに作品を楽しんで欲しいので、敢えて注目して欲しい点というのはありません。ですが世の中に存在する様々な素晴らしい作品たちを、いつもと少し違った視点で楽しむきっかけになったら嬉しいです。
――特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。
この作品そのものが作り物であることを強調するセリフで構成されているのですが、その中でも『マンガ描き方マンガ2』の最初のページの2コマ目にある「前回話が気になる奴は放っておいても勝手に探して読む」というセリフが好きです。一貫して茶番である世界のキャラだからこそ使える「普段はあんま言っちゃダメなのに、この作品の中で使われると自然に思えるセリフ」だと思います。
――同作は1~3まで公開されていますが、やはり他の漫画家さんからの反響が多かったのでしょうか?またクリエイターではない方からもコメントがあれば、印象的だったものを教えてください。
プロフィールだけではクリエイターかどうかの明確な判断ができないのではっきりと言えませんが、体感はいつもよりクリエイターからの反応が多かったように思います。「単純にマンガを楽しんでいたつもりだったのに、いつの間にかマンガを学んでいた」という感想が散見されて印象的でした。「学ばせるつもりで描いたわけではなかったのにごめんね笑」と思いつつ、いつもとは違った形で楽しんでもらえたようで良かったと思いました。
――同作のようなマンガの描き方のノウハウは、どういった形で習得してきたのでしょうか?
マンガを読むのは苦手なのでマンガはあまり参考にしておらず、セリフは小説から、カメラワークは映画から、の影響が大きいと思います。
――今後の展望や目標をお教えください。
蚊に刺されない場所でネコと暮らしたい。
――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします!
仕事と体調優先なので不定期の更新ですが、描ける時はどんどんアップしていくと思います。お楽しみに。