長らくテレビを見ていなかったライター・城戸さんが、TVerで見た番組を独特な視点で語る連載です。今回は『二軒目どうする?~ツマミのハナシ~』(毎週土曜夜24:55-、テレビ東京)をチョイス。
人生を動かすには、外に出なきゃ始まらない「二軒目どうする?~ツマミのハナシ~」
博多大吉、松岡昌宏、ゲストの吉田明世が”二軒目”でひたすら飲むバラエティ番組『二軒目どうする?~ツマミのハナシ~』は、こちらもただひたすら、いいなあ、いいなあ、と羨むばかりだ。それは酒や料理が旨そうというのは勿論、なんだか、エエところで飲んでいるのである。最近はわたしも”飲み”というのが好きですから、一軒目から出てきたところから始まる洒落たオープニングから本編まで、気軽に楽しめるというか、普通に参考にさせてもらいたいような番組であった。
というのも、ここのところ、意識的に酒を飲みに行っている。これまでも、飲みに行くこと自体は好きだったのだが、まあ大人が3人や4人も集まったらそうするほかないだろう、本当は桃鉄やりたいけど、というどこか消極的な理由で居酒屋に行き、酒があるなら飲みますよ、という一段上からの目線が抜けきっていない部分があった。金が高いというのもある。店で飲むなら家で飲みまっせ、3000円かかるところが300円で済みまっせ、いつでも寝れまっせ、と宣ったところでもう若くはない。店に飲みに行く、という文化には確かに、何にも代えがたい魅力がある、という事が、30を目前にした今になって分かったのだ。
まず、家の外に出られるというのが大きい。当たり前の話だが、外に飲みに行くという事は、外に出るという事で、この、外に出る、という行動が、人生において大きく、尊い。家にいてもマジで仕方がない。一度の人生、外に出なきゃいけない。中と外、何かが起こるのは決まって外だ。『SAW』や『CUBE』の登場人物たちだって、外に出るために精いっぱいもがいていた。外に出なきゃいけない。私は放っておくとずっと家にいて、ウソップ編までしか知らないくせにワンピースの考察サイトを読みふけったりし、時間を無駄に過ごしてしまう。シャンクス双子説が何の役に立つ?外に出なきゃいけない。でも、外に出たって、特段やることはない。だから酒を飲んで、退屈に色をつけるのだ。
なので最近、勇気を振り絞って、下北沢の洒落たバーに入ってみたり、ゴールデン街を飲み歩いてみたりしている。ひとりで飲み屋になど入ったことがないんで、あまりの緊張にコミュニケーションをミスったり、悪い酔い方をして帰りの電車でうずくまったりすることもありながら、しかし、明確に人生が動いていると感じられて悪くない。自分で起こさなきゃ起こらない出来事。自分には無理だ、と思っていても、やってみれば、ダメージを負いつつも、案外できてしまったりするものだ。
人生を動かす為、今、電車で仙台へ向かっている。この原稿も、宇都宮線のボックス席で書いている。これは単なる自慢である。