モーニング娘。の絶対的エースと呼ばれた鞘師里保。グループ卒業後の彼女がどんな音楽を追い求めているのか。鞘師の新しい音楽世界に触れられるワンマンライブ「鞘師里保 Billboard Live YOKOHAMA 2023」が9月17日(日)に、CS放送局の衛星劇場(昼3:00~)にて放送される。本記事では鞘師の魅力について振り返っていく。
アイドルの枠に収まらなかったダンスの才能
現在はソロアーティストとして活躍する鞘師だが、その名前を聞いて多くの方が思い浮かべるのが、モーニング娘。時代のエースとしての姿だろう。これはモーニング娘。在籍時の彼女の人気が突出していたからに他ならない。鞘師がモーニング娘。に加入したのは2011年。若干12歳ながら天性のダンスセンスで存在感を放つと、1年7カ月後のシングル「One・Two・Three」ではセンターに抜擢。グループ再ブレイクの立役者となったが、それからわずか3年余りの2015年12月。17歳で卒業を決断し、ファンを驚かせた。そんなモーニング娘。の象徴だった鞘師が今、モーニング娘。時代とは打って変わった音楽をパフォーマンスしているのはあまり知られていないかもしれない。
モーニング娘。の頃から鞘師の魅力はなんといってもダンス。ファンの間では「鞘師と言えばダンス」が合言葉になっていた。6歳の頃からアクターズスクール広島に通い、磨いてきたダンススキルは12歳にして確かにひときわ光るものだった。ハロプロファン内外を騒然とさせた当時の卒業理由について、さまざまな葛藤がありながらも「環境を変えるため」「新しい世界を見るため」だったというのは、のちの自叙伝やインタビューで述べられているところだ。
グループ卒業後はダンスを学び直すため、本場ニューヨークに2年間留学。いくつかのサプライズステージを経て、2021年、EP「DAYBREAK」のリリースで音楽シーンに電撃復帰する。歳月を数えれば卒業からはや5年半。23歳になった鞘師は、歌唱もダンスも、音楽ジャンルもすべてを切り替えて、文字通りに“歌って踊る、新生・鞘師里保”というべきソロアーティストに生まれ変わっていた。
“今の鞘師里保”を表現する情熱的なダンスパフォーマンス
2021年のEP「DAYBREAK」。続けてリリースした2022年のEP「Reflection」と「UNISON」。夜明け(DAYBREAK)から始まり、光の広がり(Reflection)、過去の自分と自由を求めて歩き出す新しい自分(UNISON)。そうしたコンセプトで制作された3作は、いずれも鞘師が追い求める新しい音楽世界だ。懐かしいシティ・ポップ調のナンバーやクールで鮮烈なダンスナンバー、ニュージャズなナンバーなどが多種多様にそろい、ステージで見せるのは曲構成のために踊るダンスではない。自分自身を表現するための情熱的なダンス。それが今の鞘師のダンスパフォーマンスだ。
加えて、復帰後の全曲には作詞で携わり、歌詞には彼女が今伝えたい言葉が込められている。作詞について、最初は自分をさらけ出すという書き綴りに照れがあったというが、飾らないワードによって、歌には隠さない本音、メッセージ性が浮き彫りになる。鞘師の新しい世界を親密に感じられると同時に、彼女の復帰を待ち続けていたファンにとっては一層刺さる楽曲群になっていると言えるものだ。これら新曲を引っ提げてのライブはコロナ禍のため声出しこそできないものだったが、ファンの熱量も取り込む素晴らしいパフォーマンスだったのは間違いない。中野サンプラザ、Zeppといった大箱での開催も成功させているのは、決して復帰御祝儀と呼ばれるものではなかったからだ。