コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は暮田マキネさんの『はじめて、はじめました。』をピックアップ。
通信制高校に通う27歳の苦労人・鴇(とき)と元子役で俳優・尭良(たから)が徐々に距離を縮めていく物語が「ドキドキする」と話題の本作。作者の暮田マキネさんが2023年8月28日に自身のX(旧Twitter)に第1話を投稿したところ、5.8万を超える「いいね」が寄せられ反響を呼んだ。この記事では、暮田マキネさんにインタビューを行い、創作の背景やこだわりについて語ってもらった。
8歳下の同級生とのやりとりが初々しくて尊いと話題
中学卒業後5人兄弟の長男として10年間家族を支えてきた青年・鴇は、母の再婚をきっかけに27歳にして通信制の高校に通うこととなった。「これからはあなたの好きなように生きていいのよ」と言われた鴇だったが、最初の登校日、年の離れた同級生たちを前に緊張した時間を過ごしていた。
すると、いきなり誰かに「鴇ちゃん?」と声をかけられる。それは俳優をしている弟の友人・尭良で、いつも弟から鴇の話を聞いていたらしい。尭良に対してもいつもの兄性が出てしまう鴇だったが、「兄ちゃんより…友達になって欲しいかも」と言われてしまう。これが鴇にとって初めて友達ができた瞬間だった。
弟を交えた交流をきっかけに鴇の家に遊びに行くことになった尭良。鴇の溢れる兄性を感じつつ、一緒にご飯を食べたり映画に行く約束をしたりする中で徐々に2人の関係は深まっていく。尭良が帰る間際、鴇にはじめて芽生えた感情とは…。
家族のために犠牲にしてきた時間を取り戻すかのようにさまざまな"はじめて"を経験する青年の姿を描いた本作。初恋ならではの繊細な心情変化や年齢に見合わない初々しさにも注目が集まり、SNS上では「汚れた心が浄化される」「キュンキュンした」「純愛…」「ピュアで初々しい」「やばい!尊い!」「幸せで口角上がりっぱなし」など多くの声が寄せられ反響を呼んでいる。
「登場キャラクターの感情に読み手をいかに巻き込むか」作者・暮田マキネさんが語る創作の背景とこだわり
――『はじめて、はじめました。』を創作したきっかけや理由についてお聞かせください。
直接のきっかけは、ある俳優さんのご兄弟にまつわるインタビュー記事を拝見したことです。元々“大兄弟の長男”という設定に憧れがあったのですが、件の記事の影響もあって、今この設定で描くならヤングケアラー問題とは切り離せないなと感じまして、このような形になりました。
――本作は27歳に見えない苦労人の鴇と弟の友人で俳優の尭良がお互いを気遣いながら少しずつ距離を縮める様子が印象的です。それぞれのキャラクターや設定はどのように生み出されたのでしょうか?
鴇ありきのお話ということもあって、彼の人柄は生育環境や家族構成を考えているうちに自然と形成されていきました。外見には私の性癖が惜しみなく注がれています。
対する尭良は「年下で背が高いのだけ絶対!」と決めてありましたが、後は「鴇とどこでどう出会うか」をとっかかりにシミュレーションを重ねながら肉付けしていった感じです。彼の下半身事情に関しては結構ギリギリまで真剣に悩みました。
――本作を描く上で特にこだわった点や「ここを見てほしい」というポイントがありましたらお聞かせください。
尭良と鴇それぞれバックグラウンドが重いのですが、メインテーマはあくまで「初恋」なので、読んでいて一番印象に残るのがそういうシーンや表現であって欲しいなと思いながら描きました。「マシュマロにちょっと山椒入ってる」ぐらいの読み心地になっていたら良いなと思います。
――本作の中で暮田マキネさんにとって特に思い入れのあるシーンやセリフがあれば理由とともにお聞かせください。
3話で、尭良から映画に誘われた鴇の「外食も…しない?」という台詞は、シーン自体はほのぼのなんですけど色んな悲哀を含んでいて、鴇という人が哀しくて愛しくて、私はネーム描いている間ずっと泣いてしまいました。
純粋にコミカルだったりハッピー可愛いシーンにもお気に入りはあるんですけど、泣きながら描いたシーンはやはり印象に残るし、思い入れも強かったりします。
――暮田マキネさんは本作以外にもさまざまBL漫画を描かれていますが、創作全般においてのこだわりや、物語を創り上げる上で特に意識している点がありましたらお聞かせください。
キャラクターの描き方として「言葉や行動がその人の人物設定に矛盾しないこと」「感情の推移にリアリティを持たせること」は特に心掛けています。
創作におけるリアリティって人によって基準が違うので加減が難しいところがあるのですが、私は最近「登場キャラクターの感情に読み手をいかに巻き込むか」が肝かなと思うようになってきたので、そういう観点で試行錯誤しています。苦しいけど楽しい時間です。
――最後に作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。
いつもさまざまな形で応援頂きましてありがとうございます。おかげ様でこのような記事にして頂きまして…興奮と感謝が隠せません。表紙詐欺、タイトル詐欺と言われることの多い私ですが、今作は表紙にもタイトルにも従順なお話を描けたんじゃないかと思います。
過去一二を争う初々しいお話ですが、何かしら琴線に触れるものがありますように。ご新規様も大歓迎ですので、お試し頂けましたら嬉しいです。