新海誠監督と声優の花澤香菜が、9月20日に都内で行われた映画「すずめの戸締まり」“おかえり上映”舞台あいさつに登場。新海監督と花澤が共に舞台あいさつに登壇するのは「言の葉の庭」(2013年5月31日)の初日以来10年ぶり。2人は今回の“おかえり上映”の見どころや、新海監督作品の魅力などについて語った。
半年間にわたる超ロングラン上映も“終映”
同作は、2022年11月11日に全国420館(IMAX41館含む)で公開され、国内興行収入148.6億円を記録し、海外では興行収入290億円を突破するなど、世界中で“すずめ旋風”を巻き起こした大ヒット映画。半年にわたる超ロングラン上映が2023年5月27日に終映し、9月20日にBlu-ray&DVDがリリースを迎えた。
それを記念して9月20日から10月5日(木)まで、全国100館にて特別バージョンの映画本編を上映する“おかえり上映”がスタート。その初日に新海監督と花澤が舞台あいさつに登壇した。
主人公・すずめ(岩戸鈴芽)の母・椿芽の声を担当した花澤は、今作関連の公式イベントに初登壇。新海監督は「花澤さんと一緒に舞台あいさつに立つのは『言の葉の庭』という映画で主演をやっていただいて以来なので、ちょうど10年前の初日以来。その後もずっとお仕事していましたけど、(一緒に)登壇は10年ぶりですよね。こんな機会を頂けてとてもうれしいです」と感慨深い表情で語り掛けると、花澤も「こちらこそうれしいです。ありがとうございます!」と笑顔で返した。
5月27日の終映から約3カ月半で再び上映されるということに、新海監督は「5月に『これで最後です』と皆さんとお別れしたんですけど、割とすぐ戻ってきてしまって本当に申し訳ないなという気持ちの方が大きいです」と笑みを浮かべながらも、「実はすずめの旅というのは、2023年の9月を描いたつもりで、ちょうど今なんです。『このタイミングに合わせて上映できればいいよね』という話は去年からしていて、それが実現できたことはとてもうれしいです」と、万感の思いを吐露。
会場にはこれまで何度も劇場で映画を見た人や、早速Blu-ray&DVDを見てから駆け付けた人、そして初めて見る人とさまざまな観客が集結した。
「何回も見ている方は気付くかもしれません」
あらためて“おかえり上映”ならではの見どころについて、新海監督が「実はパッケージ(Blu-ray&DVD)に収録されているバージョンと今日見ていただくバージョンは少しだけ違うんです。もちろん物語は一緒ですし、ほとんど99%一緒なんですけど、物語の最後のところで去年まで上映していたバージョンには入っていなかった一言が入っていたりとか…」と明かすと、花澤は「あー!あれだー!!映画館で聞きたいですね~」と大興奮。
続けて、新海監督は「パッケージにもちょっとだけそこの独立したクリップが入っているんですけど、それともまたちょっとだけ違う、劇場のために編集し直したバージョンですので、本当に微かな差ですけど、何回も見ている方は気付くかもしれません」と紹介した。
さらに、「もう一個だけ、本当にマニアの人向けなんですけど、前半の一箇所だけ、『ン゛ッ』って息を追加しているカットがあって。このバージョンでしか入っていないんですけど、松村北斗くんがやってくださっているキャラクター(宗像草太)で、そのキャラクターが何かを押しているシーンで(笑)。ここに息が欲しいなとずっと思っていたけど入れていなかったというカットがあって、そこに追加しました。ほっくん(松村)にも言ってないんですけど、他で押している息を取ってきてそのシーンに付けました」と声優を務めた松村にも話していないというレアな情報を伝えると、花澤も「それはうれしいですねえ」と感激していた。
また、「言の葉の庭」から「君の名は。」「天気の子」、そして今作とこれまで新海監督作品に出演してきた花澤は、新海監督作品の魅力を聞かれると「モノローグで畳み掛けていくところが、監督の作品を見ていて一番グッとくるところですね」と話し、今後見てみたい新海監督作品については「モノローグがいっぱいの作品と、やっぱり大人の恋愛も見てみたいなというのはあります」とニッコリ。
それを受けて、新海監督は「大人かあ…(笑)。やりたいんですけど、やるべきタイミングがもう少し先にあるような気がするんですよね。今は小さな子から大人まで劇場に足を運んでくれるものを作りたいと思っていて。もうちょっと時間がたったら…」と展望し、「『黄昏流星群』っていう、人生の黄昏時の50代、60代、70代の人ばかりが恋愛する漫画あって、すごく好きなんですけど(笑)。日本の平均年齢がどんどん上がっているから、ああいうアニメーションを作りたいとはずっと思っています。(その時は)花澤さんにおばあちゃん役をよろしくお願いします」と打ち明け、花澤は“公開オファー”をその場で快諾していた。
◆取材・文=ブルータス・シーダ(STABLENT LLC)
東宝
発売日: 2023/09/20