反町隆史主演の「GTO」が26年ぶりに復活し、2024年春にカンテレ・フジテレビ開局65周年特別ドラマ「GTOリバイバル」として放送されることが発表された。アラフォー前後の世代にとってはまさに青春の1ページに刻まれた作品であり、小栗旬や池内博之ら当時の生徒役キャストに思いをはせたことであろう。クラスきっての天才児を演じた窪塚洋介もその1人。「池袋ウエストゲートパーク」(2000年、TBS系)でのカリスマ不良役のイメージも強いが、“世間に見つかった”という意味ではこちらのほうがしっくりくる。最近では長男・窪塚愛流も俳優として学園モノに出演していて、事あるごとに一緒に写った写真をSNSで披露するなど、良き父親としての顔ものぞかせているが、ここでは俳優、歌手、MV監督、写真家とさまざまな顔を持つ“表現者”窪塚洋介の魅力に迫る。
俳優デビューは「金田一少年の事件簿」
窪塚は、1995年に放送された堂本剛主演の連続ドラマ「金田一少年の事件簿」(日本テレビ系)で俳優デビュー。当時は“ヨースケ”名義で、いじめを苦に自殺したとされる生徒という役どころだった。
その後、1998年には「GTO」(フジテレビ系)でクラスきっての天才にして、“教師いじめ”の黒幕である問題児・菊池善人を演じ、注目を集めた。頭が良く、達観していて、どんな時も冷静。なんなら教師よりも賢く、教師側にしたらこれ以上扱いにくい生徒はいない、というキャラクターをどこか冷めた雰囲気で好演。
後に鬼塚(反町)のよき理解者として“つるむ”ため出番も多く、この作品が彼にとって大きなターニングポイントの一つになったことは間違いなさそうだ。
その2年後にレギュラー出演した“IWGP”こと「池袋ウエストゲートパーク」も窪塚初期の代表作として挙げられる名作だ。窪塚が演じたのは、主人公・マコト(真島誠/長瀬智也)も一目置くカラーギャングのリーダー・タカシ(安藤崇)。池袋界隈を仕切るG-Boysのリーダーで、“キング”と呼ばれ恐れられるカリスマ不良だ。
カラーギャングのリーダーと聞くといかにもコワモテで、ごっつい男をイメージしてしまいそうだが、白のタンクトップにチェックのシャツを羽織り、ゆるふわな金髪、しゃべり方もユルいというか脱力系で、パッと見はそこらのあんちゃん。ただ、しっかり芯を持っており、いざという時には容赦なく残忍なことをするタイプで喧嘩も強く、菊池とは違った意味で敵にしたくない男を好演した。
それからの躍進ぶりは目覚ましいものがあり、「溺れる魚」「GO」「Laundry」「ピンポン」「凶気の桜」といずれも趣の異なるタイプの映画で立て続けに主演を務め、「GO」では「第25回日本アカデミー賞」最優秀主演男優賞を史上最年少で受賞するなど、若手俳優の中で確固たる地位を築いた。出演してきた作品柄、女性人気もさることながら男性からもカリスマ視される存在となっていた。
そんな中、2004年には窪塚ヒストリーを語る上で避けては通れない、自宅マンション(9階)からの転落事故が発生。人気絶頂の俳優が転落事故で重傷を負うというセンセーショナルな出来事だった。当時のことを18年ぶりの主演作「Sin Clock」(2023年)の舞台あいさつで自らこう語っている。
どん底のタクシードライバー3人が人生逆転を賭けた運命の一夜に挑むストーリーにかけて、“一発逆転”エピソードとして「某マンションから落っこって、何とか復活しなきゃいけなくて。マーベルみたいに派手に復活できたらよかったんですけど、地味な作業でちょっとずつ自信を取り戻して。『沈黙-サイレンス-』(※日本では2017年1月公開)という映画で、マーティン・スコセッシさんとお仕事をすることができたとき、一発逆転できたかなという気がしました」と。
また、「だんだんいろんなパターンで話せるようになってきました」と無邪気に笑っていた。
そもそも9階から転落し、その後活動再開して今も第一線で活躍していること自体奇跡のようなもの。タブー視するのではなく、“笑い話”に変えてしまうメンタルもさすがは我らがキングだ。
北川景子や中村倫也も“カリスマ視”
卍LINEとしてレゲエ歌手デビューしたり、写真家としても活動したり、ミュージックビデオの監督を務めたり、多才なことでも有名な窪塚。
これまで強烈な存在感のあるキャラを演じることも多かったためか、「ファーストラヴ」(2021年)で共演した北川景子や中村倫也も「共演は緊張する」「私らの世代のカリスマ」「(弟役の)オファーを断ろうと思ったくらい」と語るなど、やはりどこかで“孤高のカリスマ”というオーラをまとっている。だが、それはあくまで役や作品での話。
映画のイベントでのリップサービスやSNSなどでのおちゃめな姿を見れば、決して怖いお兄さんではないことが分かる。
それは「公の場だから」ということでもなく、以前楽屋でインタビューさせてもらった際に、初対面で恐らく緊張の色が顔に出ていた新人記者に対して「そのTシャツいいっすよね。限定のやつでしょ?俺も欲しかったんですよ」とフレンドリーに話し掛けて和ませ、帰る頃には彼も「ブクロサイコー!」と心の中で黄色のバンダナを掲げ、緊張など忘却の空に飛んで行っていたのは言うまでもない。誰に対しても分け隔てなく接し、どんなときもほんの一瞬で人の心をつかむカリスマの求心力だろう。
近年では「ファーストラヴ」や「みをつくし料理帖」など、主役以外のポジションでも味わい深い演技、存在感を示している窪塚。公開中の映画「スイート・マイホーム」でもある種の新境地というべき役柄に挑み、「あまり演じたことのない役柄が楽しかった」と語るなど、進化を続けている。
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