コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、“老人の家に現れた2人の不思議な子供”を描いた漫画『座敷わらしの話』をピックアップ。
作者である漫画家のかんさびさんが、2023月7月15日に本作をX(旧Twitter)に投稿したところ、5700件を超える「いいね」や反響が多数寄せられた。本記事ではかんさびさんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについて語ってもらった。
不思議な子供たちと老人の間に絆が芽生える
主人公は祖父の遣いで、ある家に訪問していた。家の主である老人がお茶を淹れている間、客間で待っていると、障子の隙間からこちらの様子を覗く2人の子供の姿が。妙に小さなその子供は、すぐにぴょんぴょんと跳ねて去って行った。
その後主人公は玩具の数々を渡しながら「さっきお孫さんたちがさっそくおもちゃを見に来てましたよ」と老人に話すと、老人は“一人暮らし”だという。「お客さんが珍しくて出てきたのかもしれませんねえ」と言うので、ワケを尋ねると、老人はこの家に住み始めた時の出来事を説明し始めた――。
以前、家に遊びに来る孫たちのためにおもちゃやお菓子を用意した際、孫たちが帰った夜中に客間から話し声が聞こえたという。こっそり見ると2人の小さな子供たちがおもちゃで遊んでおり、その子供たちは「またお菓子を食べたいなあ」などと話していたそうだ。
そこで老人は、次の日饅頭を買ってこっそり客間に置いておくと、その子供たちは饅頭を食べながら、「全部食べたら怪しまれるからちょっとにしておこう」と言って、少しずつ食べていたのだという。
翌日老人はわざと大きな声で、「おや、お菓子が減っている。これはきっと、座敷わらし様が食べたに違いない」「座敷わらし様にもっとお菓子を食べていただきたいなあ」と言うと、その後もお菓子が減ったりおもちゃが別の場所に移動するようになるのだった。
そしてある夜、2人の子供たちの「もっと供物をもらうために座敷わらしらしくせねばな」という話し声が聞こえてくる。それからというもの、時々「おい、もうすぐ嵐がくるぞ」などと老人の傍で囁き、天気のことや家の戸締りを知らせてくれるようになったそうだ。
そんな彼らについて、老人は「座敷わらしのように振る舞うために頑張っているのが妙に可愛くてね」「私にすればもう十分立派な座敷わらし様ですよ」とほほ笑みながら主人公に語るのだった。
本作を読んだ人たちからは、「とても素敵な話でほっこりした」「心が温まる」「和みました」「こういうお話大好き」「子供たちの正体が気になるけど、可愛いから我が家にも住みついてほしい(笑)」などのコメントが多数寄せられている。
かんさびさん「怪談になるような話も、視点を変えれば温かいお話になるという内容にしたかった」
――『座敷わらしの話』を創作したきっかけや理由があればお教えください。
この話は、からくりのおもちゃを題材にしたお話を作りたいなと思って調べている時に、おもちゃで遊ぶ子供の霊の話や妖怪の話などを聞いてインスピレーションを得ました。ただ純粋に遊びたいだけの霊が家にいて、それが座敷わらしになっていくという話を思いついたのですが、それがこの不思議な子供たちという形になりました。
――本作では、家主の優しさや、それに応えるかのように2人の子供の優しさも垣間見えるシーンが印象的でした。本作を描いたうえで「こだわった点」あるいは「ここに注目してほしい!」というポイントがあればお教えください。
私の作品は、世の中には違った価値観があって、それにより幸せの形も違うということを示すように作っています。今回の座敷わらしは、本来なら家で起こる怪奇に家主は怯えるのが普通なのでしょうが、偏見を持たずに不思議な子供たちと接し、それぞれ良い関係を築くことができるという内容にしています。怪談になるような話も、視点を変えれば温かいお話になるという内容にしたかったのです。
――特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。
特にここが気に入っています!というのはないんですが、小鬼たちがお饅頭を美味しそうに「うまいなあ」としみじみ言っているところでしょうか(笑)。家に住む怪異の純粋さを表している、と言えば大げさですが、そこで家主もこの子供たちが悪いものでないことを確信したと思います。
――2人の子どもの“正体”について、ネット上では様々な考察があがっていましたが、もともとは何をイメージして2人のキャラを描いたのでしょうか?
無邪気に遊ぶ家に憑く霊を最初は想像していたのですが、小鬼という形にしています。真の正体というものは読者様にお任せします。こういう背景などを想像していただくのも面白いかなと思いますので。
――普段作品のストーリーはどのようなところから着想を得ているのでしょうか?
日本と海外の民俗学や地域に伝わる昔話、行事、骨董品の歴史などや、心理学や行動学からヒントを得ることがあります。まずはヒントになるような骨董品を調べて、面白い使い道などからお話のアイデアを得たりします。
――かんさびさんの作品は、いずれも不思議なストーリーをベースに、心温まるエピソードやテーマ性などが盛り込まれている印象を受けました。作画の際にこだわっていることや、特に意識していることはありますか?
上記で既に述べてしまったのですが、私の作品は、世の中には違った価値観があって、それにより幸せの形も違うということを示すように作っています。怪談は大抵、不気味で怖い雰囲気のものが多く、私もそういう怪談は好きなのですが、私の作るお話は、見方によっては怖い話になるようなことも、実は別の見方ができる、幸せな終わり方ができる、というようなお話にしたいと思っています。
加えて、夢の中で味わうような非現実的な感覚も味わっていただきたく、マジカルリアリズムというジャンルを意識して作るようにしています。
――今後の展望や目標をお教えください。
これからもSNSを中心に不思議な話を作り続けていき、次は長編にも挑戦したいと思っています。
――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします!
私の作品は民俗学や日本の行事、民話、または海外に伝わる不思議な話などを題材にしています。こういう雰囲気のお話が好きな方たちとたくさん繋がりたいと思ってSNSで漫画を投稿しはじめたので、皆さんからのご感想や面白いお話などを聞けるのは大変ありがたいです。私の作品の雰囲気を気に入っていただけましたら、ぜひ他の作品も覗いていただけると嬉しいです。