コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、『奈落の星』をピックアップ。
後に文豪と呼ばれる若者たちが共に同人誌をつくりあげていく物語を描いた本作は『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(スクウェア・エニックス)などで知られる漫画家・豊田悠さんによるオリジナルの創作漫画だ。8月4日に自身のX(旧Twitter)に第1話を投稿したところ、1.8万以上の「いいね」が寄せられ話題を集めている。この記事では作者である豊田悠さんにインタビューを行い、創作の背景やこだわりについてを語ってもらった。
ぶつかり合う“天才”と“凡人”…大正時代を生きる若き作家たちの情熱の物語
時は大正10年8月。小説家を志し大学を中退するも全く売れずにいた烏丸すばるは、実家にも勘当され仕事も3度首になり、借金取りに追われる日々を過ごしていた。
そんな苦しい生活に耐えられなくなったすばるは、火鉢と練炭で命を断つことを考える。しかし火鉢を持っていなかったため、借りようと仕方なく隣の家を訪ねることに。そこで目にしたのは、大量の原稿用紙とともに必死に机に向かう物書きたちの姿だった。
仲間たちと“同人誌”を作っていると話す男に「編集を手伝ってほしい」と言われ、火鉢を諦めて帰ろうとするすばる。そこに同人誌の主催者である若手作家・柳楽幻歩が現れる。同い年である彼の作品やその活躍を以前から羨望の眼差しで見ていたすばるは、すべてが正反対の幻歩を前にして自分自身を惨めに感じ、居た堪れなくなっていた。
しかし幻歩は、劣等感に苛まれるすばるに原稿用紙を突きつけて「何でもいいから書け」と迫る。正論を振りかざされ言い返すこともできず悔しさを滲ませたすばるは「同じ盤上に載せた事を後悔させてやる」と一晩かけて渾身の作品を書き上げるが…。
後に文豪と呼ばれる天才と凡人が、共にひとつの同人誌を作り上げていく物語を描く本作。絶望の淵で“創作”に生かされるすばるの人間味溢れる生き様や、同人誌に情熱を燃やす若き作家たちがぶつかり合う姿に、X(旧Twitter)上では「大作の予感」「引き込まれました」「登場人物たちが魅力的」「心を打たれる作品」「世界観の美しさに息が止まる」「何かを作り出す事の難しさ愛しさが伝わってきます」「続きが早く読みたい」など多くのコメントが寄せられ、大きな反響を呼んでいる。
大正時代の破天荒な文豪をモチーフに 作者・豊田悠さんが語る創作の背景とこだわり
――『奈落の星』を創作したきっかけや理由があれば教えて下さい。
以前から漠然と創作をする人の話を描きたいなと思っていて、漫画家でも画家でも音楽家でも良かったのですが、大正時代は破天荒な文豪が多く、作家が雑誌上でお互いの作品を批評しあっていたのを読んだ時にめちゃくちゃ罵りあってるんですけど文が面白くて、何て自由で面白い時代なんだ…と思った事がきっかけで、大正時代の作家の話にしようと決めました。
――烏丸すばると柳楽幻歩、それぞれのキャラクターはどのように生み出されたのでしょうか?
まだ一話なので全く書けてないのですが、とにかく正反対の二人にしようと思って作りました。
――本作を描くうえでこだわった点や特に意識した点がありましたら教えてください。
小説の世界を漫画で描くので、絵ならではの文章の表現を模索しています。
――第1話をX(旧Twitter)に投稿後、読者から多くの「いいね」と感想コメントが寄せられ話題を集めています。今回の反響について、豊田悠さんの率直なご感想をお聞かせ下さい。
今までに描いてきた作品(チェリまほ、パパ飯)とは全く違う作風だったので不安だったのですが沢山の感想をいただきとても嬉しかったです!やっぱり続きが気になる!と言っていただけた事が何よりでしたね。
――“チェリまほ”は2018年から豊田さんがガンガンpixivで連載されている『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』のことですね。これまでに実写ドラマ化、映画化もされ大きな話題となっていますが、あらためて作品の見どころを教えていただけますか。
ありがとうございます。童貞のまま30歳を迎えた安達清は“触れた人の心が読める魔法”を手に入れてしまった。魔法を持て余していた安達は、ひょんなことから社内随一のイケメンで営業部エースの同期・黒沢優一の心を読んでしまう。すると聞こえてきたのは自分への恋心で…?X(旧Twitter)で応援上映のように応援しながら読めるラブコメを目指したので、ツッコミをいれたり応援しながら読んでもらえると嬉しいです。
――2023年夏にはアニメ化も決定するなど話題が尽きない“チェリまほ”ですが、豊田さんにとって世界観や物語を長く作り上げていくうえでこだわっている点や「ここを見てほしい」というポイントがあれば教えてください。
最初は4Pだけのつもりだったのが続きを読みたいというお声のおかげでそこからどんどん連載が伸びていって今に至るので、先を見据えての何かというものはほぼ無いのですが、X(旧Twitter)という気楽に数秒で読める場所だからこそ、シンプルに楽しめるラブコメでありつつ、本で纏めて読んだ時にはキャラクターの成長や恋愛の変化を楽しんでもらえたらいいなと思って描いています。
――最後に作品を楽しみにしている読者やファンの方へメッセージをお願いします。
作品を読むだけでなく拡散やコメントして応援して下さる皆様、本当にありがとうございます!現在『チェリまほ』の連載が忙しいため『奈落の星』の続きがいつ描けるかは未定なのですが、ずっと描きたかった物語なので気長に見守っていただけると嬉しいです。