歪んだ思いが交錯し、謎が混迷を深める(第5話)
第5話の冒頭、船内に2発の銃声が響いた。部屋に駆けつけたクルーたちが見たのは、手を出血するアーサーと、浴室で倒れるグロリア。アーサーは彼女が銃を出したため自己防衛し、その末に銃の暴発によってグロリアが死んだと話す。彼女のポケットからは殺されたコワルスキーのIDカードが発見され、同カードがザック殺害時に使用された経緯から彼女が研究結果を盗もうとしたスパイだったと結論付けられた。
しかしその結論に違和感を覚える人も。ユウトは直前までグロリアと一緒にいて、彼女がアーサーの部屋へ報告に行ったことも知っている。レイチェルもアーサーへグロリアの犯行が信じられないと言うと、救護室で治療を受けていたアーサーは人生哲学を明かす。「人間は皆弱くて、惨めで、おびえた魂を隠して生きてる。愛情や思いやりを受けるに値するフリをしてるんだ。本性は違う。仮面舞踏会のようなものさ。残酷さも隠してる」と、グロリアが本性を皆に明かさなかっただけだという。
そしていままで研究のために一切家庭を顧みなかったこれまでの人生を悔やみ、レイチェルに「救いたい命は1つだけ。娘のために世界を救う」と声をかけた。
場面は変わり、マギーの姿が映される。彼女はレイチェルの動向からアーサーの行方を追っていたが、何者かによって誘拐されていた。目覚めた彼女に事情を話すのは白髪の老婆。彼女は組織の利益のために、マギーにすべての真実を告白するよう迫る。「ポラリス6」での殺害がマギーの手によるものであること、計画的にアーサーへ罪をかぶせたこと、裁判での偽証…。もちろんアーサーの名誉のためではなく、彼の研究成果が生む金のためだ。そして組織にとってもアーサー自身はもう不要で、“彼の身になにかあったとき”はマギーの告白ビデオは公開しないと約束した。ただ老婆はこれがフェアな取引ではなく、マギーには選択肢もないと告げる。
場面は再び船へ。真のスパイは生物学者のエイミー(ジョゼフィン・ネルデン)だった。彼女はユウトに自分がスパイであることを明かした上で、誓って誰も殺していないこと、500万ドルを払う代わりに藻を外に持ち出す協力をしてほしいと願った。一時は協力したユウトだが、エイミーが言葉とは裏腹にレイチェルを冷凍庫に閉じ込めた張本人である証拠を見つけて揉みあいになってしまう。エイミーは一瞬の隙をついてユウトを押し倒すと、彼が構えていた液体窒素のボンベでユウトを撲殺した。
ユウトが死に、マギーは告白ビデオを証拠として押さえられ、そしてさらに船内では狂ったチャーリーの手によって機関が暴走を始める。このままではオーバーヒートの末に船が爆発してしまう。一刻の猶予もない、緊迫した状況が船を包み込む。
「生存者は1名」マギー執念の追跡の果てにあったものは(第6話)
最終章である第6話。冒頭でアレクサンドリア号の発見、そして「生存者が1名」であるとの報道が流れる。船が爆破の危機にあることを知ったアーサー、アレック、レイチェル、エミリーの4人が1つだけ残った救命ボートで脱出を試みることに。そしてマギーは事件の生存者が運び込まれたという病院へ忍び込む。マギーの復讐の行方は、そしてすべての殺人事件の犯人は誰だったのか…。
どこにも逃げ場がない船の上という極限状態、莫大な金を生む研究成果、名誉に取りつかれた科学者たちの歪な人間関係が、シーズン1以上に複雑な謎を張り巡らせる。物語が進むにつれて謎のピースの1つひとつがはまっていく感覚と、ラストの一瞬まで目が離せないどんでん返し。誰が、なぜ、どのように…シーズン1以上に研ぎ澄まされた濃厚なミステリーとその結末は、決して期待を裏切らないはずだ。
NHKエンタープライズ
発売日: 2023/08/18