コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回三森みささんの『ガタガタの境界線と心理療法の話。』をピックアップ。
トラウマ治療の一環として心理療法を受けた実体験を元に描かれた本作。作者の三森みささんが2023年8月27日に自身のX(旧Twitter)に本作を投稿したところ、5.2万を超える「いいね」が寄せられ反響を呼んだ。この記事では、三森みささんにインタビューを行い、創作の背景やこだわりについて語ってもらった。
自分と相手の間にある境界線は何本?セラピストの腑に落ちすぎる説明が興味深い
作者である三森みささんは、これまで性被害や虐待の後遺症に悩まされていた。そんなトラウマを治療する一環として受けた治療が今回漫画で描かれている心理療法である。
トラウマの専門機関を訪れた三森さんは、カウンセリングで辛い過去を打ち明け、セラピストの先生に「心理療法を受けさせてください…‼」と訴えた。そこで勧められたのが境界線ワークである。そもそも心理学における境界線とは自分と他人を区別するためのラインのことで、この境界線をうまく引けないと人間関係でのトラブルや心身の疲労が増えてしまうようだ。
ここで三森さんはセラピストの先生から「私とみささんの間に境界線は何本あると思いますか?」と問いかけられる。1本だと確信していた三森さんだったが、実際は2本あるというのが答えだ。境界線が2本あることで自分の意見も相手の意見も尊重できるという。
この話をふまえ、身体にアプローチをかける心理療法を始めた三森さん。初めての体験に怪しさや種劇を感じていたものの、心理療法を受けた後にはこれまでの自分とは変わった何かを感じられるようになったのだった。
心理療法を受けたことによって確かな変化を感じ取った三森みささんの実体験を描いた本作。X(旧Twitter)上では「境界線は2本って聞いて目玉飛び出そうになった」「心理療法で体験する感覚やイメージがわかりやすく伝わってくる」「めちゃくちゃタメになる」「自他境界が曖昧だと苦しむのだろうね」「いろんな人に届け。」「多くの方が身体指向系のトラウマ治療を受けようと思うきっかけになりそう!」などの声が寄せられ、反響を呼んでいる。
「心の悩みや苦しみはプロに頼った方が早い」 作者・三森みささんへのインタビュー
――『ガタガタの境界線と心理療法の話。』を漫画にしたきっかけや理由があればお教えください。
トラウマを治療する漫画の一環で制作しました。心理療法も初めてやるもので面白かったのですが、当時のメモを読み返していると、境界線の話にすごく驚いていたなと思いまして、境界線のお話も入れました。
――本作では、心理療法を受けたことで起こった自分の感情の変化がリアルに描かれています。描く上でこだわった点や意識したことがあればお聞かせください。
私は長い間、心の問題はカウンセリングや考え方を変えることで解決すると思っていたのですが、今回の心理療法は身体にアプローチしたりイメージしたりするもので新鮮でした。ですので、文字ではなくイメージだけでも伝わりやすいように絵の分量を多めにしています。理屈で語れることではないので…。
――今回、自分と他者の間にある境界線が”2本”であることに驚きを覚えました。三森さんが心理療法を受けられた中で1番ハッとさせられたのはどのようなところだったのでしょうか。生活が変わるきっかけになったものなどがあればお聞かせください。
境界線の話こそ知っていたのですが、1本だとずーっとイメージしていたので、2本と言われてびっくりしました。でも境界線っていうけれど、英語では”boundary”で、囲むイメージならそりゃそうよねと。自分でも自然と人物の周りに円がある形で描いていたので納得しました。
また、親子関係の影響で、私は特定の出来事や人物に対して非常に境界線が曖昧で脆弱であり、その側面から厄介ごとを抱えやすかったのですが、自分の境界線を引けるようになってから自分の内側に入れるもの、入れないものを見分けやすくなりストレスが減りました。
――本作は境界線をうまく引けずに悩んでいる方にとって一歩踏み出すきっかけになるようなお話が詰まっているようにお見受けします。同じような悩みを抱えている方に向けて伝えたいことなどがあればお聞かせください。
私は親子関係中で重い問題を抱えてしまった結果の境界線の脆弱さなのですが、そもそも日本には学べる機会が少なく、文化的にも曖昧なので、自分の境界線の弱さを自分のせいにしなくてもいいのかなと思います。これから学んでいけばいいじゃん、ぐらいで。
――三森みささんの今後の展望や目標についてお聞かせください。
この漫画は元々、性被害や虐待の後遺症を治療する心理療法の漫画であり、この話はその冒頭になります。クラファンで皆様にご支援いただき700万円を達成しました。ネームを発表しつつ、心理士に監修をつけつつ、2024年には完成させて、まずは電子での自費出版を目指しています。
――最後に読者の方々へメッセージをお願いします。
私は子供の頃から精神面で色々悩んできましたが、心の悩みや苦しみはプロに頼った方が早かったです。そして10年前だと治らないと言われていたPTSDの問題も今は解決ができます。多くの方に心理の面で様々な治療法が開発されていることを知っていただければと思います。
時事通信社
発売日: 2020/03/02