水樹奈々が約1年3カ月ぶりの新曲「Sugar Doughnuts」を10月1日にリリースした。本作は、TVアニメ「でこぼこ魔女の親子事情」のOPテーマであり、皆が自由に愛をかわせるような世界になってほしいというメッセージが込められている。長年に渡って活躍を続ける彼女に、今回のシングルと音楽活動に対する想いを聞くと、自身にとって歌は「魔法」であり「なくてはならないもの」と、その想いを語ってくれた。
新曲「Sugar Doughnuts」は“同じ展開がない曲”
ーー新曲「Sugar Doughnuts」の制作についてお聞かせください。
まず「でこぼこ魔女の親子事情」の原作を読ませていただいて、私たちのチーム内で浮かんだイメージがありました。それを制作陣に依頼して、コンペで曲を選ばせていただきました。「でこぼこ魔女の親子事情」がハートフルドタバタコメディなので、聴いていてワクワクするキャッチーな曲にしたいなと。でもストレートなだけじゃない、クセも欲しいとお願いし、軽快だけどドラマチックな曲を目指しました。作曲をしてくださったサカノウエさんには、サビを何度も作り直していただいて…本当に感謝しています。ホーンも入っていて、キュートさの中に艶っぽさもある楽曲に仕上がっています。
ーー楽曲制作について、水樹さんの意見を取り入れるというのは今までもやっていたのでしょうか？
はい、すべての曲がそうです。メロディの修正なしで完成する曲の方が少なくて、「このメロディをこうしたい！」とか「アレンジはこんな方向性で構成はこうしたい」とか、「歌詞のテーマは○○で、キーワードは○○です」と、アイディアや意見を毎回しっかりお伝えしています。作家の皆さんにはいつもリクエストに応えていただいていて、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。毎回曲を作る時には、自分の中で鳴っている音とか見えている世界があって、それを曲全体で表現したいと思っているんです。
ーー楽曲の制作とアニメのアフレコは、どちらが先だったのでしょうか？
同時でした。去年の秋にアフレコが始まって、同じタイミングで曲の制作に入りました。なので、すごくイメージが湧きやすかったです。作品とキャラクターに没頭しながら、良いテンションで楽曲制作に取り組むことができました。
ーー「Sugar Doughnuts」の特に聴いてほしいポイントを教えてください。
大切な人を想う高揚感に満ちたとてもキュートな楽曲なのですが、一筋縄ではいかない展開になっています。同じ展開がないというのが、一番の聴きどころですね。オーソドックスな曲は、1番がAメロ、Bメロ、サビという展開だったら、2番も同じようにAメロ、Bメロ、サビときて、大サビへという流れですが、この曲は全部ちょっとずつ違うんですよ(笑)。ジェットコースターのようなワクワク感を楽しんでいただきたいです。
ーー…となると、それを歌唱する水樹さんも大変ですね！
大変ですが、次から次へと畳みかける展開が心地良くて、程よい緊張感を持って楽しんでいます(笑)。ブレスポイントが少なくて、特にAメロは一息で歌わなくてはいけない曲なので大変です。でも、それがクセになるんですよ。
ーーライブで披露した時のお客さんの反応はいかがでしたか？
振り付けを真似して踊ってくださったり、ペンライトの色をピンクにして応えてくださったり、皆さんの順応性の高さに改めて感服しました。
実体験に基づいたメッセージ「人と違うことをやっていても、不安に思う必要はない」
ーーTVアニメ「でこぼこ魔女の親子事情」のファンタジーな世界観を音楽で表現するにあたって、大切にしたことはどんな点でしょうか。
ファンタジーな作品のエッセンスは入れつつも、作品を知らない方が聴いても日常とリンクさせて共感していただける曲を目指しました。枠に囚われたり、見た目や、先入観で決めつけると大切なものを見失ってしまう、そんなメッセージを込めて、多様性をテーマに歌詞を書いていただきたいと藤林さんにお話ししました。「でこぼこ魔女の親子事情」で描かれているように、線引きをせずに皆が自由に愛をかわせるような世界になれば良いなという想いが込められています。
ーーコミカルな雰囲気でありながら、メッセージ性もある楽曲になったのですね。
そうですね、コミカルに見えて根底には大きな愛を込めています。歌詞の中にもあるように、人と違うことに自分自身が不安を覚えることもあると思うのですが、世の中には優しく受け入れてくれる人もいる。私も幼い頃から演歌を歌っていたので学校では浮いていて、イジメの対象になりました。そんな中でも、家族や友達が「かっこいいよ、歌っている奈々ちゃん」と言ってくれたことがすごくパワーになっていました。そういった自分の過去の体験とリンクしている部分もあって、自分を愛し、受け入れてくれる他者を愛し、その愛が繋がって大きな輪になると良いなという想いを「Sugar Doughnuts」という言葉に乗せました。
ーーお話を聞いていてすごく濃い想いが込められていると感じます。楽曲への熱量はいつも高いのでしょうか？
そうです！毎回これが最後かもしれないという気持ちで、悔いが残らないよう全力で楽曲を作っています。アルバムの曲もカップリング曲も全部同じ熱量で作るので、いつもめちゃくちゃ時間がかかります(笑)。
ーーアニメ「でこぼこ魔女の親子事情」では声優としてもメインキャラクタ―で出演されますね。アニメの見所を教えてください。
「でこぼこ魔女の親子事情」は、肩の力を抜いて見ていただける作品です。子育てをしたことのない魔女のアリッサが、人間だけど魔力を持つ赤子のビオラを拾って育てるところからストーリーが始まります。熱意と愛を持って娘を育てるという、見返りを求めない愛の偉大さを感じる物語になっています。コメディ要素がありながら、心が癒されるような側面もあるところが見所です。
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