長らくテレビを見ていなかったライター・城戸さんが、TVerで見た番組を独特な視点で語る連載です。今回は『徹子の部屋』(毎週月~金曜昼1:00-、テレビ朝日)をチョイス。
その堂々とした座り方が、歴史の深さを象徴している「徹子の部屋」
一度の人生、見たことのない番組を見てみよう、ということで、今回は『徹子の部屋』をチョイスしてみることに。徹子の部屋、そういえば見たことがない。徹子の部屋のことをあまりにも知っているから、てっきり見たことがあるのかと思っていたが、よくよく考えてみれば見たことがない。見たことのないものの中で、一番よく知っている、それが徹子の部屋だ。
まず驚いたのが、月曜から金曜まで、週に5回放送されているという事だ。昼番組という印象はあったが、なぜか週5日やってるとは知らなかった。1976年から2023年まで一貫して週5回放送を続け、放送回数は12,000回を超えている異常な番組。『同一司会者によるトーク番組の最多放送』としてギネスを貰っていると聞いても、「凄い!」というより、「さすがにギネスくらい貰って然るべきだろう」というような納得感のほうが強い。そんな回数をこなしながら、今でもひたすら健康的な黒柳徹子とは一体何者なのか…。
ということで鑑賞した『徹子の部屋』、今日のゲストが登場するオープニング、見たことないのに聞いたことのありすぎるあのテーマが流れ、おおっ、徹子の部屋だ……マジだ……という謎の感慨深さに襲われる。なんとなく想像していたのは、”遠慮の一切ない黒柳徹子がゲストに無茶振りをする番組”というマジで勝手なイメージだったのだが、その実態は、非常にスムーズなトーク番組であった。黒柳徹子は聞き上手だし、何よりキュートである。ずっと聞いていられる話し声。私が鑑賞した回のゲストが古田新太だったというのもあって、なんか「ちゃんと見て感想を言うぞ!」みたいな気持ちも忘れて、普通にリラックスしてふたりの会話を聞いてしまった。年齢的に節目を迎えることへのためらいを嘆く古田新太に、「あなた60になる事にビクビクしてるの?ダメじゃない」と笑う黒柳徹子90歳、かっこよすぎる。私も、もう28歳になるというのに、未だに25歳になることにビクビクしている。
それにしても徹子の部屋、何の気取りもない、非常に堂々とした番組であった。黒柳徹子の、まるでそれ以外の体勢はありえない、といったようなドシッとした座り方が、その歴史の深さを象徴しているかのようだ。
そういえば、黒柳徹子の話し方、誰かに似ている。それも有名人ではない、私の個人的な、いつかの誰か…。しかしそれが誰なのか思い出せない。それなりの誰かであったはずだ。だから何だという話だが、季節の変わり目には、こういうことがままある。