演じることに対して自然な稲垣さんがすてきだと思った
――検事の寺井啓喜を演じる稲垣吾郎さんとのエピソードはありますか。
稲垣さんとの撮影は少ししかなくて、現場ではそんなにお話しできなかったのですが、この間のインタビューで、やっとちゃんとお話しすることができました。稲垣さん演じる寺井啓喜は、マジョリティーの人として描かれているのですが、それがだんだんどっちが正しいのか、どっちが違和感なのかわからなくなっていく。やっぱりそれは稲垣さんの絶妙なナチュラルさとちょっとした狂気が相まっているからだと感じました。
磯村さんもそうなんですけど、稲垣さんも演じることに対して自然で、自分の中の一部のように向き合っているところが、すごくすてきに感じました。私がハラハラしていたところに、稲垣さんはワクワクしていたと聞いて、もっとお話ししてみたいなって思いました。
――原作では、稲垣さん演じる寺井啓喜とは最後に会うだけですが、映画ではその前の出会いがあります。映画オリジナルのシーンが入ることでギャップがさらに表現されていると感じますが、新垣さんはどう思われましたか。
2人の出会いのシーンと最後のシーンでは、お互いの印象が大きく変わっていますよね。人って本当に一方向からだけじゃなくて、いろんな人がいろんな方向から見たり、状況や立場が違ったりすると、見え方って全然違うんだなってすごく感じましたね。
自分の想像できる範囲外のことがあるというのを、常に意識していきたい
――公式コメントで「撮影では、自分なりに夏月たちが生きる世界を必死に生きたいと思います」とありましたが、“夏月”として生きた撮影期間を得て、新垣さん自身に変化はありましたか。
何か変わるというよりは、より強く思うということは増えたような気がします。いかに自分自身が、新垣結衣が、ここまで生きてきて、環境や出会う人に恵まれてきたかっていうのを改めて感じ、周りの人たちを大事にしたいなってさらに思うようになりました。
また映画が取り上げている内容や題材などに対する考えを深めたいなとも思いました。自分の想像できる範囲外のことがあるというのを、常に意識していきたいなと思っています。
――本作は「生まれ持った自分らしさ」や「その自分でどう生きるか」について考えさせられる作品かと思います。新垣さんが思うご自身の「生まれ持った自分らしさ」は何だと思いますか。
「自分らしさ」を言葉にするのはすごく難しいですね。例えば、私が何かの作品で演じた役が、誰かが見たときに「新垣結衣らしい」と思ったりすることもあるだろうし、自分もすごく自然体で演じられたなって思ったりする瞬間もあります。
でもそれは自分の中のひとつをピックアップしているだけだと思うんです。ひとりの人にはいろんな側面があって、見る人によっても受け取る人によっても違いますし。自分の中の自分はたくさんいて、そのどれもが自分だって思えたらいい、そう思っています。