コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回はなまくらげさんが描く『庶民の生活を受け入れられない元お嬢様が幸せのハードルを下げる薬を飲んだ話』をピックアップ。
幸せの感度を高める薬を飲んだ女性に起こった感情の変化を繊細に描いた本作。作者のなまくらげさんが2023年10月3日に自身のX(旧Twitter)に本作を投稿したところ、8000を超える「いいね」が寄せられ反響を呼んだ。この記事ではなまくらげさんにインタビューを行い、創作の背景やこだわりについて語ってもらった。
幸せを感じやすくなった女性に起こった思いがけない"異変"に注目の本作
お嬢様として育った女性が没落貴族となった後も庶民の感覚を受け付けられずに困り、医者に相談すると、"幸せの感度を上げる薬"を処方された。「これで私も幸せになれるかな…」と不安に感じながらも女性が薬を飲むと、そこから女性の生活は大きく変化したのだった。
今までおいしいと感じられなかった学食をおいしく感じられたり、退屈だったテレビ番組が楽しく感じられたりと、今までにはなかった楽しい生活を送れるようになっていた。そんな生活の変化に「こんな便利な薬があるならみんな苦労せずに幸せになれるんじゃないの？」と思うほどである。
そんなある日、女性は友達にご飯に誘われる。今まで美味しさを共有できなかった料理を美味しく感じられ喜ぶ女性だったが、周りの友達の反応は少し違っていた。友達の「あ～ハズレだった‼」の言葉に女性は薬によって"良くないもの"がわからなくなっていることに気付いてしまい…。
幸せの感度を上げる薬を飲んだ女性に起きた様々な変化を描いた本作。X(旧Twitter)上では「飲んでみたい！」「この薬ずっと飲んでいたい」という賛成派と「崩壊する未来しか見えない」「これは幸せなのか？」という反対派、両者の声が寄せられていた。さらに「考えさせられるな…」「これはハッピーエンドなのか？」などのコメントも寄せられ、大きな反響を呼んでいる。
「幸福に関する心の機微について、自分なりに表現してみよう」作者・なまくらげさんが語る創作の背景とこだわり
――『庶民の生活を受け入れられない元お嬢様が幸せのハードルを下げる薬を飲んだ話』を創作したきっかけや理由をお聞かせください。
食や芸術分野などで度々起こることですが、「自分が良いと感じていたものが、より感覚の優れた誰かにとっては陳腐なものに感じられていた」みたいな過去の経験が基になっています。
一度「見る目」が肥えてしまうと、それまでと同様の方法では同等の幸せを感じられなくなるのではないか─。そういった幸福に関する心の機微について、自分なりに表現してみようと思いました。
――本作では、幸せのハードルを下げる薬によって"良くないもの"の分別がつかなくなった一種の怖さが印象的でした。本作を描くうえでこだわった点や、「ここを見てほしい」というポイントがあればお聞かせください。
「幸せのハードルを下げることは幸せか」という問いかけをテーマとして置いたので、そのメリットデメリットについて考えてもらえるような話の構成にしました。
メリット面は言わずもがな、感じて頂いた怖さをきっかけにデメリット面についても考えてもらえたら本望ですね。
――本作の中でなまくらげさんにとって特に思い入れのあるシーンやセリフがあれば理由とともにお聞かせください。
月並みですが、ラストのシーンが気に入っています。
表面的にはみんな幸せでハッピーエンド…でも本当にこれでいいの？という不穏な感じも出せて、今回のテーマに沿った締めになったかなという気持ちです。
――もし"幸せのハードルを下げる薬"が実在したとしたら、なまくらげさんはそれをどのように扱うと思いますか？
個人的にはなるべく飲みたくないですね。飲めば間違いなく主観的な幸福度は上がるのですが、客観的に幸福かといわれると微妙なところがあります。また、現状で満足しきってしまうため、貪欲さが消え、元々少ない向上心もゼロどころかマイナスになってしまいそうです。
飲むとしても辛い時に瞬間的に、くらいがちょうど良いのかもしれませんね。
――なまくらげさんの作品は、読後に考えさせる余地を含むような作品が多いようにお見受けします。普段どのようなところから着想を得ているのかや創作全般において特に意識していることについてお聞かせください。
哲学や倫理など、興味のある分野や思想からテーマを選ぶことが多いです。
普段から好きで考えていることなので、話を考えること自体が楽しく、自身の思考の整理にもなりますね。できれば読者の方にも一緒に考えてもらいたいという気持ちで描いているので、わかりづらく独りよがりな内容にならないよう意識しています。
――最後に作品を楽しみにしている読者やファンの方々へ、メッセージをお願いします。
いつも私の作品にお付き合い頂きありがとうございます。毎回様々な感想を拝見し、刺激を頂くと共に創作の励みになっています。
基本的に趣味の範囲ではありますが、これからも色々な作品を作っていけたらと思っていますので、よろしくお願いします！
この記事はWEBザテレビジョン編集部が制作しています。
