長らくテレビを見ていなかったライター・城戸さんが、TVerで見た番組を独特な視点で語る連載です。今回は『有吉クイズ』(毎週日曜深夜0:25-、テレビ朝日)をチョイス。
動いていないLINEグループが苦手である「有吉クイズ」
もう動いていないLINEグループというのは誰しもに覚えのあることであろうが、私はどうも苦手である。2017年2月を境に会っていない友人や、催されていない会、それらの痕跡を目の当たりにすると、何か沢山のものをそこに置いてきたような気がするのだ。途端に、時間や、人間関係というものが恐ろしくなるものだが、かといって、またグループを動かそう!という気にもならない。まっとうに面倒くさいからだ。
今回の『有吉クイズは』、何年も動いていないLINEグループにメッセージを投稿し、3分以内に既読が付いたら勝ちという企画だ。こういう遊びって若い頃によくやるよね。スマホを奪われるのは、霜降り明星・せいやと、さらば青春の光・森田。当然だがふたりとも芸能人だから、稼働していないLINEグループも芸能人同士が多い。まったく羨ましい。芸能人と同じLINEグループにいるのってどんな気持ちなのだろうか。自分も芸能人だから、もう芸能人にときめくとかは無くなるのだろうか。もし私だったら、自分がどれだけ有名芸能人であろうが、LINEなんかめっそうもなく、局の廊下で鈴木杏樹とすれ違ったりするだけで大声を出してしまうと思う。
かなり乱暴な企画だが、これくらいのきっかけがあるほうが、また稼働させやすくていいのかもしれない。何年も動いていないLINEグループで先陣を切って発言するのは至難の業だ。さらに無理なのが退会。「他のメンバーに悪く思われないだろうか」という心配は勿論、「ああ、そういえば、こんなグループあったなあ。こんな奴いたなあ」と思われるのも怖いのだ。私は、過去の自分を一切信用していない。今の自分と、過去の自分はまったく違う人間であると自負しているのだが、はたから見りゃ一緒なのであって、それならば、もう、過去の存在しない私のことなど、すぐにでも忘れ去ってくれたほうがいい。この、いかにも自分勝手な考えがあるせいで、昔の友人に連絡を取ったりすることができない。地元の友人関係も、ほとんどすべて切れている。今を生きているといえば聞こえはいいが、やはり健全だとも思えない。
それにしても『有吉クイズ』、日曜深夜の放送にも拘らず、この”昼時のバラエティ番組”感は何だろう。そのシンプルさや、色合いから、どこか牧歌的なものを感じるのかもしれない。また、これはなぜだか分からないが、どことなく、ヒコロヒーから昼を感じるのだ。
PARCO出版
発売日: 2022/12/23