コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、AIが発達した世界で生きる漫画家の苦悩を描いた物語『AIで漫画が作成できるようになった未来の漫画家の話』をピックアップ。
作者の砂糖野しおんさんが、2023月10月20日に本作をX(旧Twitter)に投稿したところ、1.7万を超える「いいね」や反響が多数寄せられた。本記事では砂糖野しおんさんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについて語ってもらった。
何でオレ漫画家になったんだっけ…AI漫画が発達した世界での苦悩を描く
本漫画は、AIが当たり前に漫画を生み出す時代が舞台となっている。AI漫画を電子で消費するのが主流となった世の中では、紙の漫画がどんどん数を減らし、漫画制作の作業時間が減ったことにより連載漫画の更新頻度も毎日更新が当たり前となっていた。
いつものようにAIに漫画作品を出していた漫画家だったが、生きる手段として漫画を描いていることにつまらなさを感じ、「何でオレ漫画家になったんだっけ…」と虚無感に襲われていた。
ふと小さい頃もらったボロボロの紙漫画の作画に感銘を受け、死んでも誰かに大切に読んでもらえるような漫画家になりたいと願った過去を思い出した漫画家は、時間が経つのも忘れるほど一心不乱に手書きの漫画を描き始め…。
そう遠くない未来に訪れそうなAIが発達した世界でもがく漫画家の苦悩を描いた本作。手書きで漫画を描く意義を見つけたラスト展開も話題を呼び、X(旧Twitter)上では「素敵なお話」「色々深いな」「情緒を振り回される」「漫画を描くというのはこうであってほしい…」「登場人物がちゃんと生々しく生きてる」「人が作るからいいんだ」「手書き漫画バンザイ」など多くの声が寄せられ反響を呼んでいる。
砂糖野しおんさんへのインタビュー
――『AIで漫画が作成できるようになった未来の漫画家の話』を創作したきっかけや理由についてお聞かせください。
去年AIが話題になった時期がありまして、この先AIで漫画が描けるようになったら私だったらどうするんだろう、と考え出したのがきっかけでした。
この話を思いついたときはまだ『マイ・リグレット』の連載中だったので、ひとまずささっとメモだけして残しておいて、何か月か後に形にしたんですけど、その数か月でもかなりAIイラストが進化しているような印象を受けて驚きました。
――本作を描く上で特にこだわった点や「ここを見てほしい」というポイントがありましたらお聞かせください。
主人公の部屋にある小物とかですね。
紙たばこ、クラシックギター、ノートPC、1970年代に活躍した海外バンドのポスターなど…ぱっと見、時代設定がおかしいんじゃない?と思いたくなる小物なんですけど、今回はなるべく短いページで完成させたかったので、ストーリーに直接関係ない部分の説明はなるべく省いて絵にしよう、と思いましてとにかく古きよきものを収集している主人公テルキの紙の漫画への執着がここでなんとなく伝わればよいかなと思って描きました。
――本作では、AIが漫画を生み出すようになった世界で紙の漫画を描く意義や漫画家としてのあり方などが描かれているようにお見受けします。もし、遠くない将来このような世の中が本当に訪れた時、砂糖野しおんさんはどのような行動をとると思いますか?
難しい質問ですが…。もしそのような未来が来て漫画家としてやっていけなくなったとしても何もせず受け入れてしまうかもしれません。
ただ、読む側の楽しさと作る側の楽しさは全くの別物なので、作る側として作品を吐き出す場所は他に確保したいですね。
そして、物質として残っていくものの価値も必ずあると思っているので、読む側としても紙の漫画が無くなってしまう未来は想像したくないですね…。
――本作の中で砂糖野しおんさんにとって特に思い入れのあるシーンやセリフなどがあれば理由とともにお聞かせください。
主人公のテルキが久しぶりに原稿用紙とペンを引っ張り出してきて机に向かうシーンです。
絵や漫画を描くことから長く離れた生活をしていて、久々に描いてみたらものすごく下手になっていた、というシーンなんですけど最近自分も似たような経験をしていて、胸を痛めながら描いたのでその分思い入れも強いです。
――砂糖野しおんさんは本作以外にも少年たちの苦悩と葛藤を描いた『マイ・リグレット』(KADOKAWA)を手掛けられていますが、登場人物の人間らしさを出す上でこだわっている点や、物語を創り上げる上で特に意識している点があればお聞かせください。
そのキャラクターらしい仕草や動き方などは少しこだわって描いてます。
例えば、『マイ・リグレット』の主人公の竜丸は、クセでよくそわそわと首から上を触っていたり、その友達の勇仁は人と話すときに至近距離でも構わず相手を指差して喋ったり、落ち着きなく動いたりしています。
もっと細かく言うと、2巻で竜丸が涼介のお母さんにパウンドケーキをごちそうしてもらうシーンがあるんですけど、はじめフォークを握って行儀悪く一口食べた竜丸が、パウンドケーキっておいしい食べ物なんだ、とわかってからはフォークもちゃんと持ち直して一口大に切って食べていたり、それでも食べるときの他のマナー自体はあまりよくなかったりと、その時の感情の流れとキャラの生い立ちに合わせた立ち振る舞いなどは描けるだけ描くようにしています。
――最後に作品を楽しみにしている読者やファンの方々へ、メッセージをお願いします。
いつも作品を読んでくださりありがとうございます。ご感想なども本当に励みになっております。
これからも楽しく作品作りができればと思っていますので、今後ともどうぞよろしくお願いします。