一生懸命に生きている不器用なすべての人を肯定する優しいメッセージ
とはいえ、もちろんいちばんの見どころは魅力的な登場人物たちと、予想のつかないストーリー展開にある。
恋する前のやさぐれたシャオチーには親近感が湧くし、恋してからのシャオチーはとびきりキュートだ。グアタイのヘタレぶりや、しばらく頭のなかでのリピートが止まらなかったリウのタイエビダンスも愛おしい。完璧なヒロインや王子様はおらず、何かしら欠けたところを抱えた人物だらけだが、見ていくうちにそんな彼女らが大好きになってしまうはずだ。
そして、登場人物たちに心を寄せて感情移入しているからこそ、「消えたバレンタインデー」の謎が明かされていく後半のワクワク感に心が弾み、ワンテンポ早い彼女とワンテンポ遅い彼の時間が重なり合ったときに起こる奇跡の温かさが心に染みる。
人とテンポが違う、一生懸命に生きているのに何かうまく嚙み合わない。または、人とテンポを合わせようと寄り添いすぎてしまって息苦しい、いっそ逃げ出してしまいたい、逃げ出してしまったというすべての人を肯定する優しいまなざしを、きっと感じられるのではないだろうか。
最後に、ネタバレにならない範囲で1つだけ。すべての謎がとけたところで、もう1度最初から本作を見直すことをおすすめしたい。おそらく初見では目に入らなかった、後半で明かされるもう1つの物語が見えてきてキュンとするのではないだろうか。誰だって、自分が気付かないうちに、誰かを救ったり、誰かに見守られたりして生きているのかもしれないと、ちょっぴり人生にポジティブになれる良作だ。
<ザテレビジョン 映画部>