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【インタビュー】ダンサーが活躍できる表現の世界を広めていくためには?

2017/07/31 18:30

日本のダンス界で多岐に渡って活動しているJUN。SMAP、SPEEDなどのアーティストや「SMAP×SMAP」といった番組での振付も手掛け、そして自身が主宰を務めるエンターテインメント集団・Blue Printでは演劇を通してダンスを表現している。バックダンサーとしてではなく、ダンサーが主役に / 表舞台に立つことのできる活路を追求してきた彼が、これまでどんな経験を重ねてきたのか。そんなテーマのトークから、若い年代のダンサーたちにとって、きっと刺激を受ける言葉が多くあることだろう。

【写真を見る】JUNが主宰するエンターテインメント集団・Blue Printは、8月2日から新作舞台「父親参観日」を上演
【写真を見る】JUNが主宰するエンターテインメント集団・Blue Printは、8月2日から新作舞台「父親参観日」を上演撮影:中村功


鏡があると踊ってるっていう……もう中学生の時と何も変わらない(笑)


――JUNさんがダンサーとして本格的に活動する前、つまり10代のころに大事にしていたことってありますか?

「僕は今52歳なんですけど、僕が10代のころはまだ今でいう“ダンサー”ってなかったんですよね。あったんですけど、クラシックバレエとかアカデミックなダンスのほうで、ストリートダンスという言葉自体もなかった。もともと僕はディスコで遊んだりする中でカッコいい人を見て“自分もカッコよく踊りたい”みたいな感じでダンスを始めたんですけど、当時、ストリートダンスで食べてる人ってほぼいなかったんですよね。だから10代のころといえば、ただカッコよくなりたい、上手くなりたいという気持ちだけでした」

――その後、20代はダンスとどのような関わり方をされてきたんですか?

「20代前半で東京に出てきたんですけど、当時から踊りで食べていきたいという意識はありました。ただ、そういう場所がなかったし、世の中にまだダンススタジオすらなかった。そんな中で、当時流行っていたショーパブで働きながら踊ってたら、ある別の店から『新たにショーパブをオープンしたいから手伝ってくれない?』みたいな依頼があって。それでショーの構成を考えたり、踊れる若い子を集めてまとめたりっていうのをやってたので、水商売ではありますけど、そのころにはもう1本のショーを作ってましたね」

――アーティストの振り付けを始めたきっかけ何だったんですか?

「30歳になる少し前、ロサンゼルス留学から帰ってきたあとです。そのころはお金がなかったので、少しずつやっと街にでき始めていたダンススタジオでスクールをやってたんですが、当時、僕の友達がライジングプロダクションでマネージャーをしてたんですよ。で、話をしてたら、まだSPEEDって名前が付く前の彼女たちの振り付けを『やってみない? バイト代くらいにしかならないけど』みたいな感じで声をかけてもらって」

――SPEEDがCDデビューする前、歌番組の「THE夜もヒッパレ」で他のアーティストの曲を歌っていたころですよね?

「そうです。で、僕も『やるやる』って言って、その番組で披露する曲の振り付けと演出とバックダンサーを引き受けたんです。それが先方さんに気に入ってもらえたのか、その後、SPEEDの1stコンサートの振り付けとダンサーもやることになって……。本格的なアーティストのライブ仕事でいうとそれが初めてになりますね」

「僕みたいな50代の親父がこんなに踊ってるんだよっていうのも見せたいし、こんな大人もいるんだとも思ってほしい」(JUN)
「僕みたいな50代の親父がこんなに踊ってるんだよっていうのも見せたいし、こんな大人もいるんだとも思ってほしい」(JUN)撮影:中村功


――その後、再び海外に渡ってオールジャンルのダンスを習得したり、自身主宰の劇団やダンスユニットを立ち上げたりと、多岐に渡る活動を展開されているJUNさん。本当にさまざまな表現に挑まれていますよね。

「なんだろう……表現の仕方っていろいろあっていいと思うんですよ。ダンスの種類も芝居の形もいろいろあっていいし。ただ、生だから楽しいっていう、そういう世界が広がっていくとダンサーにも希望があるのかなっていう。バックダンサーに徹するのももちろんいいですけど、例えば踊りだけの作品で主役になれたりとか、最近だとシッキン(s**t kingz)や(菅原)小春とか、ダンサー側のスターも出始めてるじゃないですか? 今までいなかったこっち側の、ストリートダンサー側のスターが。その子たちがアーティストとして認知されて個人としても職業として成り立っていけば面白いなって思うし」

――そうですよね。今のエンタメ業界の構図が何か変わる気がします。

「あとはダンサーも武器はいっぱいあったほうがいいと思うんです。ダンスにしてもいろんなジャンルが踊れるとか、芝居や歌、笑いもできるとか、“ダンサー”の中にもいろんな幅があって、かつ一人一人の個性が見えてくるといいなって。あともっと欲を言えば、次はそれを見る環境ですよね。ふらっと映画館に行くみたいに、当たり前のように整っていけばいいなって。若い子が『今からショーケース見に行くんだ』みたいな感じでね。ブロードウェイじゃないですけど、ちっちゃい小屋からでも全然いいんで」

――確かに、今はそういうものが見たくてもどこへ行けばいいか分からないですよね。

「うん。今って、キッズダンサーがものすごく多くて、しかもめちゃくちゃ上手いんですよ。でもたぶん彼らは、いずれ行き場がなくてやめちゃうんじゃないかなって。それを職業につなげる道がないんですもん」

――相当なスキルを磨いても趣味で終わってしまうのはもったいないですよね。

「そういう意味では、将来、例えば“ダンサーってものすごい稼いでるんだよー”みたいなことがあったりするとね。何かが違ってくるんじゃないかと思いますね」

「裾野が狭いと積み上げた時にあまり高さが出ないんですよね」(JUN)
「裾野が狭いと積み上げた時にあまり高さが出ないんですよね」(JUN)撮影:中村功


――キッズや10代のダンサーが急増している今、憧れの対象がいるとみんながそれに似せちゃう傾向があるという話も最近よく耳にするのですが、それに対してはどう思いますか?

「最初はいいんじゃない?って思いますけどね。初めはカッコイイ人に憧れても。僕もよく生徒たちに言うんですよ。『そこになりたいわけでしょ? じゃあ真似して頑張りなさい。でもその人に勝つには他のことやらないと勝てないよ』って。『人がやらないことをやって違う武器を身に付けて自分を作っていきなさい』って僕が言ったことに対して、意識的にやる人は実際伸びますし」

――そうなんですね。ちなみに、ダンスって人間性が出ますか?

「すごい出ると思います。踊ってると性格わかりますもん。なんとなくですけど、こういう人なんだなって。しかも大体当たってます」

――ダンスのスキルにつながってくるような部分で、普段から意識していたほうがいいことってあるんですか?

「やっぱり、いろんなことにアンテナを張ってたほうがいいんじゃないかなって。これも僕がよく言ってることなんですけど、裾野が狭いと積み上げた時にあまり高さが出ないんですよね。でもいろんなダンスのジャンルに触れてると、積み上がるのは遅いかもしれないけど、上がった時にデカくなる。さらに芝居だ、笑いだ、何だって積み上げていくと、めちゃめちゃ大きいものになるんじゃないですか? ひとつのことだけを極めるのもいいと思うんで一概には言えないですけど、僕はわりと広く浅くタイプなので、そっちのほうが好きなんです」

「ストリートダンサー側のスターたちが、アーティストとして認知されて個人としても職業として成り立っていけば面白いなって思う」(JUN)
「ストリートダンサー側のスターたちが、アーティストとして認知されて個人としても職業として成り立っていけば面白いなって思う」(JUN)撮影:中村功


――JUNさんの幅広い活動でいうと、8月2日(水)~6日(日)には主宰するエンターテインメント集団・Blue Printの最新舞台「父親参観日」が上演されます。

「みんなで『こんなのやりたいねー』って意見を出しながら作っているステージです。タイトルは、今、“父親参観日”がないというところから付けたんですが、作・演出の(福島)カツシゲさんはWOWOWのシナリオ大賞も受賞(2011年、「エンドロール~伝説の父~」)されている実力のある方。脚本・演出・出演をされている舞台「イシノマキにいた時間」は東日本大震災におけるボランティア活動が元になっていて、ご自身も被災地に2年以上ボランティアで行かれているんですよね。そんなカツシゲさんが今回手がけてくださった『父親参観日』は、テーマとしてはちょっと重たいんです。子供を見ているようで実は自分の親父を見てるっていう。介護施設で親父がみんな認知症……っていうことなんですけど、そんな中でも初めは思い切り笑わせたいし、あとは親父との関わり合いを見た人が少しでも考えるきっかけになったらなって。あとは自分たちもいつかこうなる日が来るんだよっていうメッセージもあったりするし」

――10代の若い子が見ても響くものがありそうですね。

「そうなんですよ。あと僕みたいな50代の親父がこんなに踊ってるんだよっていうのも見せたいし、こんな大人もいるんだ、バカなことやってんなーみたいな。くだらないことだけど一生懸命やってるなーって思ってもらえたら僕はそれでいいんです。うちの舞台、子供も結構見に来るんですよ」

――そうなんですね。期待しています! では最後に、JUNさんのダンス愛とはどういうものですか? 長いキャリアの中で変化してきた部分もあれば教えてください。

「うーん、でもあまり変わってないかな。表現の仕方はそれぞれの段階で違ってたんでしょうけど、全然辞めようとは思わないし、今も毎日踊ってますから。鏡があると踊ってるっていう……もう中学生の時と何も変わらない(笑)。それに今の若い子のダンスもよく見ますよ。キャリアを重ねて偉くなると、『あのダンスは違うな。どうのこうの……』みたいに言うやつがいるじゃないですか? 僕、そういうふうにはなりたくなくて。歳とかは関係なく、いいものにはいつもリスペクトを持ち続けられる人間でいたいと思ってます」

舞台「父親参観日」のリハーサル風景
舞台「父親参観日」のリハーサル風景撮影:中村功


(撮影 / 中村功)

プロフィール


1989年ダンサーとして本格的な活動を開始。フジテレビ系「DANCE DANCE DANCE」“MEGA MIX”(現在のTRF)としてレギュラー及びゲスト出演。1992年、LAへダンス留学。アメリカのTV番組「SOUL TRAIN」など、現地のメディアにダンサーとして多数出演。1993年、CAPOEIRA(カポエイラ)修得のためブラジル留学。その後再びLAにて数々のダンスイベントに出演する傍ら、JAZZ、HIPHOP、HOUSE等、オールジャンルのダンスを修得。帰国後、日本に初めてカポエラを伝承し「CAPOEIRA JAPON」を発足。その後、SMAPなど有名アーティスト、「SMAP×SMAP」「笑っていいとも」や劇団SETなど演劇公演の振付を手掛ける。プレーヤーとして数多くのメディア、舞台に出演している。2012年、自らの呼びかけでBlue Printを結成し主宰を務める。全公演のパフォーマンスを監修。ダンスで心情を巧みに表現し、演技では年長者特有のとぼけた空気感の役柄で観客の笑いをさそっている。

イベント詳細


Eccentric Dancetainment Crew Blue Print Vol.7 「父親参観日」

【脚本・演出】福島カツシゲ

【出演】JUN / KUNI NISHIZAWA / TATSUO / ATSUSHI / MAEDA / TOMO(DA PUMP) / 山根和馬 / 大竹浩一(劇団SET)

【日程】2017年8月2日〜6日

【場所】CBGKシブゲキ!!:東京都渋谷区道玄坂2-29-5 ザ・プライム6F

この記事はWEBザテレビジョン編集部が制作しています。

【Blue Print 関連リンク先】
Official Site:https://www.blueprint-bp.com/
Official Twitter:https://twitter.com/blueprint_2012

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  • JUN
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  • 舞台「父親参観日」のリハーサル風景
  • 「ストリートダンサー側のスターたちが、アーティストとして認知されて個人としても職業として成り立っていけば面白いなって思う」(JUN)
  • 「僕みたいな50代の親父がこんなに踊ってるんだよっていうのも見せたいし、こんな大人もいるんだとも思ってほしい」(JUN)
  • 「裾野が狭いと積み上げた時にあまり高さが出ないんですよね」(JUN)
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