長らくテレビを見ていなかったライター・城戸さんが、TVerで見た番組を独特な視点で語る連載です。今回は『開運!なんでも鑑定団』(毎週火曜夜8:54-、テレビ東京)をチョイス。
洗練された”変わらない”面白さ「開運!なんでも鑑定団」
そういえば、子供の頃以来見ていない気がする。当時は、モノの相場も分からないし、そもそもルールすら理解していなかったはずで、イチ、ジュウ、ヒャク、センという機械音声と共に数字がひとつずつ表示される番組……という程度の認識だっただろう。現在は今田耕司がホストを務めていることは知っていたけども、改めて、これがどんな番組で、うっすらとした記憶との違いを確かめてみることにしよう……。
と再生した『開運!なんでも鑑定団』だが、まず驚いたのは、私の薄い記憶や漠然としたイメージから一切漏れるものではなかったという事。予想外の事が何もないというか、たとえば『行列のできる法律相談所』の豹変ぶりと比べると安心感を覚える。しいて言うならば、案外お値段の発表があっさりしているなあ、とか、本編の大部分は、ロケやドキュメンタリーに費やされているんだなあ、くらいの発見はあったが、どことなく泥臭さを感じるような”変わらなさ”ではなく、常に新陳代謝を繰り返しながら”変わらなさ”がスマートに維持されているような印象で、とにかく洗練されているのだ。芸術品を扱っているというのもあるのだろうが、それ以前に、こんなに無駄がなく見やすい編集もそう無いだろうと思う。
今回(10月31日放送分)が初めてらしい、名店に行き、そのお店のお宝を鑑定するというコーナー”名店のお宝鑑定大会”。いずれも東東京に居を構える、洋食屋さん、蕎麦屋さん、とんかつ屋さんの3店が登場するのだが、これがどれも美味しそうで、さらに下品を承知で言うならば、値段が良い。ハヤシライス2,500円、せりかしわ蕎麦1,300円、特上とんかつ定食で3,100円。決して安くはないが、私のような貧しい偽善者でも「たまの贅沢に今度行ってようか」くらいには思える、テレビで見るのに丁度いい金額たちなのだ。店主の3人もそれぞれ個性的で、人間集としても見ていて非常に興味深い。
あと、何かのプロフェッショナルが、何かの解説をしている様子が大好きなので、鑑定人たちの総評には聞き惚れた。讃美をするにしても、まず事実の開示をしてから、という誠実さ。何においてもプロフェッショナルというものには憧れる、クールである。
ひとつ、驚いたというか、そうなんだ~と思ったのは、鑑定されたものを出品者が持ち帰る事。鑑定人は「大切になさってください」と最後に言い添える。てっきりそのまま番組が買い取って、出品者が鑑定額を貰うものだと思っていた。私がどれだけ金のことしか考えていないのかがよくお分かりだろう。