託した言葉は呪いになるか、生きるための十字架になるか
「後は頼みます」と虎杖に言葉を残したあと、七海は真人によって上半身を吹き飛ばされて死亡した。
以前の改造人間との戦いで、虎杖が誰かのために怒ることができる人間だというのを七海は知っていた。そんな虎杖にとってこの言葉は呪いになるのも分かりきっていた。ひょっとしたら七海も灰原から同じように後を託され、苦しんできたのかもしれない。それでも口を出てしまったのは、虎杖が自分とは違い、逃げずに怒れる人間だったから。
このときの七海の本当の気持ちは作者以外には分からない。しかし、自分の中に棲み続けていた灰原に理非を問い、最後は穏やかに言葉を紡いで亡くなっていった。「呪術師はクソだ」と言ってきた七海がやっと解放され、後を託せる人間を見つけたことこそ、大きな理非だったのかもしれない。
そしてもう1つ。七海は知らないことだったが、虎杖は宿儺が引き起こした大惨事で心が壊れかけていた。自分のことを死んだ方がいい人間だと思っている。しかし、七海に後を託されたことで虎杖はこの先も心に傷を負いながらも戦い、呪いになると思えた言葉は彼が生きて背負う言葉になっていくのかもしれない。
ここまであくまでも個人的な思量であり、今回のエピソードには色々な角度から理非を考えることができるだろう。ネットではそれどころではなく、七海の最期にショックを受けている視聴者も大勢見受けられる。しかし、多くのコメントにあったのは、「お疲れ様」と、七海を弔う言葉だった。
※島崎信長の崎は正しくは「たつさき」
■文/鈴木康道
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