テレビ大好きイラストレーター・渡辺裕子さんが、お気に入りの番組をかわいいイラストで紹介する連載「いつもテレビをみています」。第18回は「出川哲朗の充電させてもらえませんか?」(毎週土曜夜7:54-、テレ東系)をチョイス。
どんな有名人でもやっぱり初対面の人にはドキドキしちゃうんだ
出川哲朗さん・ゲスト・ディレクターが電動バイクでゴールまでのんびり走るロケ番組、「出川哲朗の充電させてもらえませんか?」。電動だとバイクの音が小さいから、風景を見ながらおしゃべりする声がよく聞こえて楽しい。しかし楽しく走れば走るほどバッテリーは減っていき、あっというまに0%に!荷物が多いディレクターのバイクがまず止まり、続いて「オーマイガー」の声とともに出川さんのバイクが走行不能に。残されたゲストは、知らない土地で見ず知らずの人に、タイトル通り、充電させてもらえないかとお願いすることになる。
毎回思うんですが、これ、自分なら絶対できないです。知らない人に「こんにちは、〇〇と申します、テレビ番組のロケをやっておりまして」と話しかけ、ましてや充電をお願いするなんて。変な人だと思われるんじゃないか、厚かましいと思われるんじゃないかと、脳内でマイナスな感情がグルグルして、声をかけるところまで行きつきそうにない。でも芸能人なみなさんなら楽勝ですよね…と思ってたら、結構、ゲストのみなさんも緊張して話しかけている。おどおどと遠慮がちにしている様子を見て、どんな有名人でもやっぱり初対面の人にはドキドキしちゃうんだと、垣間見える人間味に、なんだかホッとします。
しかし出川さんは、どこに行っても「出川さん出川さん」と子どもからお年寄りまでみんなに囲まれて、明るく「充電お願いできますかね?」「このへんでおいしいお店ってどこ?」と屈託なく聞けてしまうのがすごい。そして聞かれたり頼まれたりした人たちも、頼られたことがうれしそう。「やばいよやばいよー」「オーマイガー」と自分の弱さをさらけ出して「助けて」「教えて」と笑顔で言えてしまう出川さん、弱そうに見えて実は生きる力がとても強い。
人に助けられることを肯定してくれているような番組
ゴールは設定されているけれど、その途中の道はだいたいしか決まってないバイク旅。途中でおなかがすいたら、食事する店を人に聞いて探す。出会った人たちと、スポーツ対決になることもある。なりゆき任せで人任せ、せっかくたどりついた店も定休日だったりするけれど、そこからまた他の人に聞いて別の店に行ってみる。偶然や人との出会いに自分をゆったり合わせて、うまくいかなくても「やばいよやばいよー」と言いながらバイクでとにかく進んでみる。ガチガチにすべて決めることなく、弱い自分のままで笑って楽しむ。そういうのも、いいものですね。いつも「頼み事して、失礼だと思われたらどうしよう」「調べてから行動しないと不安」と思いがちな気持ちがちょっとゆるみます。
弱さをさらけ出すこととと、人に助けられることを肯定してくれているようなこの番組、でもそれがうまくいくのはやっぱり出川さんの笑顔の愛らしさゆえ、なんでしょうね。
■イラスト・文/渡辺裕子
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