ハロー!プロジェクトのグループ、つばきファクトリーでの活動から、現在はソロアーティストとして活躍する小片リサが、12月6日(水)に2ndシングル「映画の趣味が合うだけ/ちいさな世界」をリリースする。ソロでの活動を始めてから2年半。今回はハロプロ時代ではあり得なかった形で楽曲制作に携わり、大きな意識改革になったという。これは活動休止から始まった新しい音楽活動の道標でもあった。
マスタリングまで同席。技術より感情を乗せて録った2ndシングル
――今回の2ndシングルについて。楽曲を受け取ったときの印象からお聞かせください。
グループ時代から落ち着いた雰囲気の楽曲が似合うという言葉をいただいていたこともあって、1stシングルはそこに寄り添った楽曲だったと思います。今回はそれとはだいぶ違うライブ向けの楽曲で、自分にとっては挑戦のような曲でした。それもあってレコーディングではどう表現して歌いたいかをしっかり伝えて、ずいぶん話し合いを行いました。
――今までのレコーディングでは、そういうやり取りはあまりなかったわけですか?
グループのときはディレクターさんのイメージを再現するという意識でした。ソロになるとやっぱり気持ちが違って、自分の歌という意識が強くなりますね。自分の得意な部分を活かしつつ、ちょっと強気な面を歌声に乗せたい、とか。今回、トラックダウンまで行っていただいた編曲家の先生たちもスタジオに来てくださったので、すごく細かいところまで積極的に伝えましたし、一度録っては意見交換をしながらというレコーディングでした。だいたいどの曲も丸っと4回は録っていて、細かい箇所のテイクは数え切れないほど。日を変えて録ってみようかという提案をいただけたのはありがたかったです。時間を空けて自分の声を客観的に聴いてみると歌い方への発見があって、ここは音を強めに歌ってみよう、ここは正確さより感情に寄せてみようとか、曲へのイメージがまた違う形で広がっていきました。そのおかげで突き詰めるところまでいけて、納得のいく作品にできたと思います。
――最初のテイクと完成音源はだいぶ違うわけですね。
同じ曲ですが、聴きご心地はずいぶん変わりました。最初に録った「映画の趣味が合うだけ」の場合ですと、これまで通り正確に音をハメる、リズムを重視して、という歌い方をしています。それは私の中につんく♂さんの教え、ハロプロで身に付けた技術が生きているからです。でも、それを意識しすぎたせいか、改めて聴いてみるとどこか淡々と歌っているような違和感を感じてしまいました。あくまでも私の意識の中でのことですが、もしかしたらこの曲に対しては「ちょっと違うかも」って。そこから感情に素直になって、歌い直していきました。例えばギターの音が響いているからそこに寄り添いたい、とか。2番のサビ、「普通の言葉で泣いちゃう」という歌詞はピッチが崩れてもいいからあえて感情を込めて歌っていて、特にここは何回か録ったテイクの中から自分でセレクトさせてもらったこだわりの強い部分です。
他にもトラックダウンでは、ここでドラムが弾けてきたらもっと疾走感が生まれるんじゃないか、ベースのリズムを聴かせてあげたいとか。音楽をしっかり勉強したわけではないので気持ちをお伝えしただけですが、色々意見を出せたのはとても良い経験になりました。マスタリングまで呼んでいただいて、1つの作品がどう出来上がっていくのかを知られたのは本当に大きな収穫でした。
――トラックダウンへの同席は珍しくないですが、マスタリングはなかなか聞かないですね。
そうみたいですね。私も知識としては知っていても、工程を直に見たのは初めてでした。
――小片さんが歌いたい曲がここに完成したということで、愛着も大きいのではないですか?
作品に対しての愛着もそうですが、関わってくださる皆さんへの感謝も大きいです。編曲家の先生にはグループ時代からお世話になっていてもお会いする機会はなかったので、今回直接自分の思いを伝えられたのはすごく貴重でした。私は自分のことを歌手と言っていいのかまだ自信がないのですが、今回の経験で、楽曲をいただく側の自覚は確実に芽生えています。もっと音楽のことを知りたいと思ったし、今までの自分だったら意見をするなんてあり得ないことだったので、それを正しいことだと教えていただけたのも今後の成長に繋がっていくことだと思います。