スズ子の小さな体から、久しぶりに歌うことの楽しさがあふれ出たこのシーン。羽鳥が、スズ子にとっての「心から歌いたい歌」を思い出させた。
いま、警官に監督され、三尺四方のマスをはみ出さないよう歌うスズ子に足りないのは、ステップでもダンスでもない。心底楽しんで歌っている、この歌だから歌いたい、歌うのが楽しくてたまらない、というスズ子自身の情熱だ。カカシのように棒立ちになっているのは、スズ子の体ではなく、心だ。
「本当の福来スズ子がやっと見えた」
羽鳥と2人きりで演奏された「ラッパと娘」には、心底好きな歌を、心底楽しんで歌うスズ子の“バドジズ”があふれていた。撮影はカットをかけずカメラ長回しで行われたという。番組公式SNSは放送後「趣里さんが通しで歌い踊っています。その活き活きとした歌と踊りに監督も興奮気味でした」と打ち明けた。
スズ子が羽鳥と見せた魂のセッションに、視聴者からも「素晴らしいシーンだった」「どんな時も変わらない羽鳥先生の『トゥリートゥーワンゼロ』に促されて弾けるように歌うスズ子。本当の福来スズ子がやっと見えた」「これこそバドジズ!やっぱりスズちゃんはこれなんだ」と感動の声が続出。演じた2人にも「草なぎさんの、感情を抑えた佇まい、趣里さんのあふれる“歌いたい”が詰まった名シーン」「趣里ちゃんの歌が圧巻の一言だった」「スズ子が何を歌いたいのか一発でわかった。趣里さんの演技と歌唱力に圧倒された」と、絶賛の声が上がった。
だが、梅丸楽劇団は解散。「せっかくラッパと娘を思い切り歌えたのに、稽古場だけ…なんて、つらいよ」「スズちゃんが『本当に歌いたい歌はこれだ』と気づいたのに、歌える場所がなくなってしまった」「最高にバドジズしてたからこそ切なくて、涙があふれた」と、スズ子が直面する現実に胸を痛める視聴者も多い。12月1日放送の第45回では、歌う場所をなくしたスズ子が今後について思い悩む展開が描かれる。
※「草なぎ剛」のなぎは、弓へんに前の旧字体その下に刀が正式表記
NHK出版
発売日: 2023/09/25