思わず顔が綻ぶ壬氏と猫猫のやりとり
壬氏曰く、浩然はある時突然辛党から甘党になったとのこと。猫猫はそれについて、浩然が塩味だけがわからなくなる味覚障害にかかっていたのではないかと予想する。
もともと禁欲的な性格だった上に、流行り病で妻と子を亡くしたという浩然。精神的にも相当な負荷があったのだろう。それでも酒と甘味を唯一の楽しみに、仕事にも真面目に取り組んできた。それなのに、ちょっとした嫌がらせのつもりで誰かが仕掛けた悪戯に殺されたのだとしたら、あまりにもやるせない。浩然に昔世話になったという壬氏の横顔も、いつになく憂いを帯びていた。
そんな中で、ちょっとした壬氏と猫猫のやりとりが「可愛い」と話題に。壬氏からお礼として酒が入った瓢箪をもらった猫猫。喜ぶ彼女を見て、悪戯心に火がついた壬氏は「そういえばこんな法案があったな」と二十歳未満の飲酒の禁止を匂わせる。慌てた猫猫が必死の形相で「それ絶対通さないでください」と迫ったところ、壬氏が久しぶりに笑顔を見せるというシリアスな展開を中和させるような二人のやりとりに思わず顔がほころんだ。
「毒殺にして頂けませんか?」
しかし、その後まもなく、今度は後宮の下女が水死体となって見つかるという事件が発生。衛兵の見解では、投身自殺とのことだった。だが、下女が身を投げたと思われる後宮の城壁は猫猫の身長の4倍ほどの高さがあり、登るための道具も一切ない。猫猫が調べたところ、外壁には職人が利用したと見られる突起がいくつかあったが、同じようにそれを利用して上に登るのは下女の纏足(足先をきつく縛り、小さく変形させる風習)では難しいとの見立てだった。
さらには掘から這い上がるために壁を何度も掻いたのか、下女の指先は赤い血で染まっていた。つまりは、他殺も十分あり得る状況である。今回だけじゃない。これまでも猫猫はいくつも誰かの悪意によって命を奪われる、あるいは死の危険に晒される人々を見届けてきた。貴人にも平民にも、死は平等に訪れる。だが、その命の価値は決して平等には見なされていない。
そんな中で、「私を処刑する場合、毒殺にして頂けませんか?」と猫猫は壬氏に願う。きっと、壬氏は突き放された気分になったことだろう。浩然の死に心を痛めていた壬氏。彼にとっては猫猫もまた大切な存在であり、そこに貴賎はない。一方で、嫌というほど身分の差というものを目の当たりにしてきた猫猫がそうして一線を引くのも分かる。どんなに仲良くなろうとも、大きな壁が二人を隔てていることを実感させた第9話に、SNSでは「猫猫に『毒殺にしてほしい』と言われた時の壬氏、切ないな」「距離が近くなったと言えど、二人には身分の差がある事を改めて痛感した一話」「毒殺にして欲しいと頼んだシーンはアニメならではの演出で良かった」「この台詞は何かのフラグなのだろうか」という感想が呟かれた。
◆文=苫とり子
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