「1人を特別扱いするということは、他の人を不当に扱うということ」
許されないことであると分かっていながらも、他に若月を助ける方法が見つからなかったと告白する鷺沼。若月本人には“若者を助けるための制度”の審査に通ったことで、税金の支払いを回避できたという適当な理由をつけて説明したという。徴税禁止リストには若月の働く清掃会社の社長も掲載されていたことを利用して、若月の名をリストに掲載させたのだとか。
「でも、俺は今目の前にいる人を助けたかったんだ。助けようともしないで、なんとかできたかもしれないってずっと後悔することになるのが嫌だった」。鷺沼が絞り出した言葉で饗庭の脳裏に蘇ったのは、助けられなかった財務省時代の同僚が飛び降りる瞬間の記憶だった。
「目の前の人を助けたい。助けられなかったら後悔する…そんなもん当たり前じゃないすか。それでも起きてしまったことに向き合って、できることをやるしかないんすよ」。大声ではないのに、気持ちを強く感じる饗庭の言葉。続いて華子も「誰か1人を特別扱いするということは、その他の人を不当に扱うということです」。震える唇で鷺沼に訴えかける。
饗庭の目には怒りではなく、もっとずっと複雑な感情が渦巻いて見えた。「ねえ鷺沼さん。今までどんな気持ちで俺たちと一緒にいたんですか。どんな気持ちで一緒に働いて、一緒に笑っていたんですか。公平公正に仕事している俺たちのこと、どんな目で見てたんですか」。誰もいなくなった静かな第三課係のオフィスに、饗庭の静かな声が響く。「鷺沼さん、公務員なめないでください」。
ついに徴税禁止リストを手に入れた饗庭と華子は、副市長・相楽義実(本郷奏多)に突きつける。しかし、間一髪リストに記載されていた企業を捜索したという資料を第一係の係長・日比野みのり(石田ひかり)が持ち込んだ。徴税禁止リストは「記載のある企業・個人が捜索を受けない」というもの。相楽は捜索を受けた企業名が記載されている以上、これは偽物の怪文書に過ぎないとリストを認めなかった。
せっかく手に入れたリストが不正の証拠として認められず、うまくかわされた形の饗庭と華子。しかし、作成者であった鷺沼は責任を取って辞めようとしていた。それを見た饗庭は、「相楽たち“上”はまだそのリストのことを認めてない。存在してないものを理由に、鷺沼さんの退職を認めんのかっつー話」と問題を投げかける。
「ダメだ…そんな、こじつけの理屈。これは俺のケジメの問題だ」と譲らない鷺沼に、饗庭は「だったらそのことを、俺たちと一緒に証明してくださいよ」とダメ押し。「逃げないで戦ってくださいよ…先輩…」という饗庭の優しい声に、鷺沼の目からは涙がこぼれた。
SNSでも「優しい人ほど、利用されて追い詰められるんだよな…。鷺沼さんのやったことは悪いことだったけど、饗庭ちゃんの言葉で救われた」「逃げるな戦えって、深いことをいうなあ。贖罪の方法は人それぞれだと思うけど、饗庭ちゃんのそれは優しさなのか厳しさなのか…」「今回の『公務員、なめないでください』がかっこよすぎた」といった声が相次いでいる。