コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、インカ帝国さんの『冬眠できない女の子の漫画』をピックアップ。
11月11日に作者がX(旧Twitter)に投稿したところ、その切なくも心温まる物語に5.9万以上の「いいね」が寄せられ読者から大きな反響が集まった。この記事では作者であるインカ帝国さんにインタビューを行い、創作の背景やこだわりについてを語ってもらった。
動物たちがみんな冬眠する世界で…“冬眠できない”女の子の切ない物語に反響続々
雪が降り積もった冬のある日、義母であるクマと人間の見た目をした少女・シオンは冬眠の支度をしていた。お金や薪の場所を念入りに伝える義母だったが、シオンは「大丈夫だよママ」「毎年の事だからもう慣れてる」と言い、平気なそぶりを見せる。そして眠る前にハグをすると、義母だけが長い長い冬眠に入っていった。
次の日、シオンは朝から屋根の上の雪かきに追われていた。しばらくして街へ出向き、休業の店ばかりの中で唯一開いているチューおじさんの店へ立ち寄ると、買い物を済ませる。「困ったことがあったらなんでもオレに言うんだぞ!」という親切な言葉に嬉しくなったシオンだったが、次に店を訪れたときには「冬眠しました」の看板が掲げられ、その静かな店内に寂しさを感じてしまう。
冬眠に入ってしまったら、いくら暖かくしても、いくら呼びかけても、動物たちは春が来るまで目を覚まさない。冬眠できないシオンは、今年もひとりぼっちで寂しく冬を越すことが辛く、義母が眠るベッドに寄りかかり涙を流す。そんな中、シオンはある夢を見て…。
いつもひとりぼっちで冬を越しているシオンの寂しさや孤独感がひしひしと伝わってくる描写に反響が集まっている本作。優しく親切な動物たちのキャラクターや春の暖かさを感じさせるラストシーンも話題を集め、X(旧Twitter)上では「切ないけど心が温まる」「これは…泣ける」「感動しました」「優しすぎる世界」「春がいちばん待ち遠しくなる漫画」「ネズミのおじさん冬眠中でも女の子のためにお店開けてくれてて優しい」「素敵な作品」「早く春よ来い」など読者からの声が多く寄せられている。
“また会える”と希望を持てる物語に 作者・インカ帝国さんが語る創作の背景とこだわり
――『冬眠できない女の子の漫画』を創作したきっかけや理由があれば教えてください。
『冬眠できない女の子の漫画』を生み出したきっかけは、大切な人との別れと、また再会できると希望を持って終わるという話を書きたいなと思って考えました。
当初は輪廻転生をテーマに描こうかと思ったのですが少し暗い話になりすぎてしまいそうだなという懸念があったのと、幼い頃に見たムーミンの冬眠の話をふと思い出したのもあって冬眠の話に置き換えようとこういう形の話になりました。
――みんなが冬眠する世界で、ひとり冬眠しないシオンのキャラクターはどのように生み出されたのでしょうか?
冬眠する動物たちの世界で一人孤独なシオンのキャラクターは、そういう設定のために人間のビジュアルにしようというのがあったのと、そのことに対するコンプレックスを隠すために動物の耳のカチューシャ(義母と同じ熊の耳を模したもの)をつけさせようと考えました。
――本作では、ゆったりと時間が流れている空気感や、春を待ち侘びるシオンの寂しさや切なさが伝わってくる繊細な表情描写がとても印象的でした。作画の際にこだわった点や「ここを見てほしい」というポイントがあれば教えて下さい。
こだわった点はいうと、チューおじさんというネズミのキャラクターがいるのですが、このキャラクターだったら自分の店の前を雪かきした際ついでに雪だるまでも作ってるんじゃないかと思って彼の店の傍にネズミ型の雪だるまを描き足したのですが、思ったよりいい感じになったのでそのコマの絵が気に入っています。
―― 本作の中でインカ帝国さんにとって特に思い入れのあるシーンやセリフはありますか?
特に思い入れのあるシーンやセリフは、最後に夢から覚めたシオンがどういう感情で窓の外を見つめているのかすごく悩んだので、自分としてはそのシーンが印象に残っています。
――インカ帝国さんは本作以外にも『桃太郎の仲間になりたい鯉の漫画』や『角刈りの兄鬼』(集英社)など様々なテーマで漫画を描かれていますが、創作活動全般においてのこだわりや特に意識している点がありましたら教えて下さい。
創作活動のこだわっている点は、なるべく読者の方にわかりやすく楽しんでもらいたいなと思って描いています。
――最後に作品を楽しみにしている読者やファンの方へメッセージをお願いします。
自分の作品を読んでいただきありがとうございます。毎回自分が面白いとか感動するとか思いながら描いている話は他の人にとっても同じなんだろうか?とか思って恐怖しているのですが楽しんでいただけたなら幸いです。