長らくテレビを見ていなかったライター・城戸さんが、TVerで見た番組を独特な視点で語る連載です。今回は『恋するシナリオ』(テレビ朝日)をチョイス。
恋愛はゲームだ『恋するシナリオ』
出演者自身が選んだシナリオによって物語が変わるラブ・モキュメンタリー、『恋するシナリオ』。あくまでフィクションなのだが、海辺のヴィラに集まった3人(なちょす、柊太朗、中川勝就)は、それぞれ自分自身を演じており、いわゆる恋愛リアリティ・ショーと似た手触りながら、物語の分岐点に差し掛かったことをベルが知らせてくれたり、古びた引き出しからシナリオが現れたりと、どこかファンタジックな空気を感じさせる独特の番組だ。私は恋愛というのはさして興味がないというか好きじゃないとまで言えるのだが、なんとなく魔が差したので見てみることにした。
さっそく卑屈なことを言うようで申し訳ないのだが、この、舞台となっている海辺のヴィラがスゴイ。ステキと辞書を引いたら載っているような場所。ここにはウンコもオシッコも存在しませんというような清潔感にあふれている。こんなところで恋愛などできるわけがない。何か汚したらどうしよう、どれくらいの修繕費用を取られるのだろう、などと、おおよそロマンスとはかけ離れた不安に頭を支配され、海から上ってくる太陽も私を監視しているようにしか見えないだろう。
さて、私は断然かつあき君派である。どことなくフランクで接しやすい雰囲気がありながら、照れが見え隠れするキュートさも兼ね備えている。夜の濃密タイムはテラサ限定配信となっておりそこでの彼の姿も気になるところなのだが、やはり付き合うなら、この接しやすさが重要だと私は考える。恋人は、友達でもあるべきだ。とうたろう君は、最年少ということもあってか、ちょっとしたぎこちなさがあり、小動物的な魅力を感じさせる。照れながらもリードするその姿からはまさしく恋愛の匂いが香っていて、恋人は友達でもあるべきと考える私にとっては、その恋愛っぽさよりも、お互い素のままに接しあえる関係性を優先したい、と考えてしまうのだ。
偉そうにペラペラと恋バナを繰り広げてしまったが、こういった恋愛番組というのは、見ながらペラペラと自分のことを好き勝手に語れるのが最大の魅力だ。前述したとおり、私は恋愛そのものに興味はないのだけど、恋愛について思うところはたくさんある。恋愛は本当に不思議なもので、恋や愛の形は人それぞれ違って当たり前なのに、こと”恋愛”というゲームには、どっしりとルールブックが用意されている。みな、それに従って自らの行動を決めているような節があると考えていて、私はもっと、色んな形の恋愛を、色んな人が自分らしく実践してみてもいいんじゃないかと思うんだけども、その自分らしさで相手を傷つけてしまうことだってあるだろう。まったく別の人間同士が価値観を共有しようとするのだから、無傷とはいかないはずだ。人と人とが一緒になるというのは、やはり、途方もなくむずかしい……。