そんな展開が描かれた第11週。スズ子と愛助の関係はたった4回で出会いから交際話が飛び出すまでに進んだ。
だが、急だった印象はない。前半は愛助の“強火オタク”ぶり、中盤では乗り込んできた坂口のコテコテなキャラクターが注目を集め、愛助に告白されたスズ子が「せやけど九つも下やろ…」と悩む過程では、おでん屋の伝蔵(坂田聡)の「なんだお前、歳のことなんか気にすんのか。大事なのはな、おめえの気持ちだろう」という熱い助言が反響を呼び…と、2人の関係が周囲を巻き込んで進展していく展開が印象深いディテールとともに綴られたからだろう。
スズ子の生きる糧・原動力になっていく愛助
そして何より説得力があったのは、水上演じる“年下男子”愛助の真っすぐで力強い瞳だ。楽団員たちもいる前で歌手・福来スズ子の魅力を語る愛助の目の輝きは、“推し”への愛を語るオタクそのもの。そしてスズ子と2人きりで関係を深めるシーンでは、同じ熱量で「戦争終わったら、外国行って、おもろい芸人をぎょうさん日本に連れてきたろかな思うてるんです」と力強く夢を語る。戦争の影響で思うように活動できないスズ子が、これほど力強く未来を語る青年に心を動かされるのは自然の流れに思える。告白シーンで愛助がスズ子をまっすぐ見つめて言う「年の差なんか関係あらへん」も率直で誠実そのものだ。
愛助役の水上はインタビューで「僕は、愛助自身というよりは“スズ子にとっての愛助”という見方を意識して演じています。スズ子の人生の中で、『愛助がいてくれたから歌いたい』と生きる糧・原動力になっていく愛助は、いったいどんな人なんだろうと考えながら台本に向き合っています」と語っている。愛助から立ち上る誠実さ、力強さ、スズ子の心を動かす人物としての説得力も、彼自身が“スズ子にとっての愛助”を意識しているからこそなのかもしれない。
18日(月)からの第12週「あなたのスズ子」では、愛助の母で村山興業社長のトミ(小雪)が2人の交際に反対するという。9歳の年の差に加え、周囲の反対などハードルの多い2人の恋のゆくえに注目だ。
NHK出版
発売日: 2023/09/25