1979年にテレビ初回放送がされた日本アニメーションの金字塔『機動戦士ガンダム』が、来年(2024年)に45周年を迎える。初作から途切れることなくシリーズは送り出され、今年は地上波で『機動戦士ガンダム 水星の魔女』Season2、ネット配信で『ガンダムビルドメタバース』を展開した。さらに2024年1月26日(金)には劇場映画『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』が公開になる。この盛り上がりを受け、再びガンダム熱が高まっているファンもいれば、これを機に興味を持ったという方もいるだろう。今やアニメを飛び越えた巨大コンテンツなだけに「ガンダム」という名前を聞いたことがないという人は少ないかもしれないが、「アニメとしてはよく知らない」という方はまだ多いだろう。そのときどきの時勢を反映し、時代によってその姿を変えるのがガンダムシリーズの魅力でもある。そこでWEBザテレビジョン編集部のガンダム担当が、主だったテレビシリーズを中心に、年代ごとのガンダムシリーズの流れをまとめてみた。少々難しいうんちくもありつつ、シリーズの豆知識でもあるので、『SEED FREEDOM』のためにも覚えておいて損はないだろう。
1979年~1980年代 ガンダムシリーズの原典が誕生
前述したように、ガンダムシリーズは『機動戦士ガンダム』(以下、ファーストガンダム)から始まっている。これを生み出したのが、原作者であり、監督の富野由悠季だ。初期の3作、『機動戦士ガンダム』(1979)、『機動戦士Zガンダム』(1985)、『機動戦士ガンダムZZ』(1986)は富野が手掛けた連作もの。リアルな戦争描写と奥深い人間ドラマが盛り込まれ、その大人びた作品性が中高生から大人まで幅広い層でファンを獲得した。それまでのロボットアニメ=キッズアニメというイメージを一変させ、日本のみならず海外のクリエイターにも影響を与えている歴史的作品と言っていいものだ。
この3部作はガンダムシリーズの進む道を確立したシリーズの原典。ファンにとっては「原点」と言える作品だ。人がスペース・コロニーに暮らす本格的なSF世界を作り上げ、巨大ロボットはモビルスーツという人型機動兵器に。異星人対地球人というそれまでの定番構図から脱却し、勧善懲悪では語れない人類同士の戦争を物語にした。また、時代は折しもアポロ11号のアームストロング船長が月に降り立ってから10年が経つ頃。地球圏という舞台設定も、あと少しで手の届きそうな近未来的光景となって高揚感を与えてくれるものだった。
この3部作後、富野は映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(1988)を手掛けている。同作はファーストガンダムから14年後を舞台にし、アムロ・レイ、シャア・アズナブルの最後の戦いを描いた作品として大きな反響を呼んだ。また、OVAになるが、80年代にはシリーズの大きな転換期になった『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』(1989)もある。これは富野以外が作った初のガンダムシリーズだった。ヒューマンドラマ重視の内容の良さからファンに受け入れられ、本作の成功でガンダムシリーズは様々な監督が手掛ける広がりを手に入れたと言っていい。ちなみに、当時のOVAはテレビシリーズではできない作り込みをしており、『ポケットの中の戦争』もそう。同作は今観ても引き込まれる作品だ。
1990年代前半 アナザーシリーズの誕生で「ガンダム」は多角化の時代へ
ガンダムシリーズにはファーストガンダムの物語を起源にする宇宙世紀シリーズと、宇宙世紀外の通称アナザーシリーズという二軸が存在する。これはかなり壮大な話になってくるのでまた別の記事に譲るとして、1990年代前半は、このアナザーシリーズが生まれた時代だ。宇宙世紀シリーズはOVA、テレビ、映画と足を固めていたが、それとは別に、コア化が進むガンダムシリーズの新機軸として生まれたのが、『機動武闘伝Gガンダム』(1994)だった。
『Gガンダム』はアナザーシリーズの記念すべき第1弾で、超熱血主人公、登場メカは全てガンダム(頭がガンダムなら全てガンダムだ!)、ガンダム同士の格闘試合(まさかのガンダムファイト!)が行われるという、とにかく破天荒で突き抜けた作風だ。シリアス、リアリティーで進んできたガンダムシリーズの中に生まれた突然の異分子だったが、必殺技も放つガンダムファイトは理屈なく楽しめて、ガンダムシリーズから離れていた子どもたちを呼び戻した。そして、ガンダムシリーズへの固定観念を取り払った功績は非常に大きかった。
1990年代後半 『∀ガンダム』で20周年に突入。そこで衝撃の黒歴史!
1990年代後半にはアナザーシリーズ第2弾で、『新機動戦記ガンダムW』(1995)というヒット作が生まれる。5人の美少年を主人公に配し、周りを固めるサブキャラクターも誰もが美形キャラ。彼らが織り成す群像劇は特に女性層の支持を得て、男の子のアニメだった「ガンダム」に女性ファンが増えるきっかけを作る。
この時代は『機動新世紀ガンダムX』(1996)、『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』(1996)という傑作もあるが、注目は富野の久しぶりのシリーズ作、『∀ガンダム』だ。シリーズの歴史で言うと、『∀ガンダム』で20周年に突入。本作はそれを記念した作品でもあったが、“ガンダムの生みの親”の富野は、自らここで“ガンダムの終わり”を描いたのだ。『∀ガンダム』には「黒歴史」という封印された過去史の記録があるのだが、この中にはアナザーシリーズも含めた全てのガンダムシリーズの歴史が記録されていた。つまり人類は幾度となく滅亡と再生を繰り返し、『∀ガンダム』の時代に帰結するというのが富野の回答だったのだ。
富野は「ガンダム」における神様に等しい存在だ。その神様が言うのだから間違いないが、ファンへ与えた衝撃はとんでもなく大きかった。そんな出来事もあり、これも「ガンダム」を知るなら観ておきたい一作だ。
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