テレビ大好きイラストレーター・渡辺裕子さんが、お気に入りの番組をかわいいイラストで紹介する連載「いつもテレビをみています」。第19回は「飯尾和樹のずん喫茶」(毎週土曜夜10:00-、BSテレ東)をチョイス。
和の香り漂うレトロな「喫茶店」が気になっています
最近、おしゃれな「カフェ」ではなく、昭和の香り漂うレトロな「喫茶店」が気になっています。看板に書かれたメニューにはクリームソーダ、ナポリタン、ピザトースト、そしてもちろんコーヒー。街で見かけたそんな店に、入ってみたい気持ちはあるのですが、だいたいどこも、初めて入るには勇気がいる店構えだったりしませんか? あの重い木の扉を開けたら、カウンターの奥に怖そうなマスターが待ち構えていたらどうしよう、注文の仕方が変だと思われたらどうしよう、常連さんたちでいっぱいだったらどうしようなど、余計なことを考えてしまって、店に入るためのあと一歩が出ない。「初めて」ってこわいですよね。
「初めて」はそんなに怖いものじゃないんだなあと、ホッとします
しかし、ずんの飯尾さんは違います。冒頭から「ぺっこり45度」などと笑顔でギャグを飛ばし、「この街は初めて来ました!」とニコニコ歩いてたどり着いた店でも、店長さんや常連さんたちに同じように笑いながら話しかけ、いつの間にか店の一部のように馴染んでしまう。初めましてを恐れていない、むしろ「初めて来ることができた!」という喜びでいっぱいの飯尾さんに、お店の人たちもお客さんたちも、来てもらえてうれしいという笑顔になっている。長い年月を営業してきた喫茶店それぞれの物語を、どんな話でも決して湿っぽくなりすぎず、からりと明るく受け止める飯尾さん。つられるようにお店のみんなが笑っていて、ああ、「初めて」はそんなに怖いものじゃないんだなあと、ホッとします。
そして飯尾さんが迷いながらも選ぶメニューがいいんですよ。お店の人の説明を聞いて「絶対おいしいやつだー」と思ったものをピンポイントで頼んでくれるのがうれしい。カレーライス、ホットサンド、スワンの形のシュークリーム……そしてそれをまた、本当においしそうに食べてくれる飯尾さん。同じものを今すぐ注文したい、とテレビのこちらでジタバタしてます。次の休みには、思い切って知らない街の喫茶店で「初めまして」をしてみようかしら、飯尾さんの笑顔を真似して。
■イラスト・文/渡辺裕子