長らくテレビを見ていなかったライター・城戸さんが、TVerで見た番組を独特な視点で語る連載です。今回は『午前0時の森』(毎週月・火曜夜23:59-24:54、日本テレビ)をチョイス。
人間の属性について『午前0時の森』
MCの若林正恭と水卜麻美が、色々考えちゃう”こっち側”と、そうでない”あっち側”のゲストをたくさん招いてトークを繰り広げる豪華なバラエティ、『午前0時の森(火曜版)』。ひな壇には所狭しとゲストが座り、MC若林が中心となって、矢継ぎ早に”しんどい”トークが展開されてゆく、まさに、ザ・トークバラエティといった番組なのだ。ちなみに月曜も放送していて、そちらのMCは村上信五と劇団ひとり。ふたりのトークが中心となる、火曜版と比べて小規模ではあるものの、こちらもステゴロなトークバラエティだ。月曜の放送と火曜の放送で内容が変化する、少々イレギュラーな番組なのである。
さて、私はこの番組を初めて見たので、”あっち側”、”こっち側”の定義がいまいち分かっていなかったんだけども、超簡単に言うと、人間関係において、図太い人と繊細な人、ということなのだろう。そうなれば、私も当然、繊細な人、ということになるわけで、どれだけ繊細かというと、部屋のエアコンが落下してこないか不安で眠れないほど。人間関係においても、”色々考えちゃう”どころでない悩みを多く抱えている。私は生来のおしゃべりだし、ウケたがりだから、そういった自身の欲求を全面に出してしまい、相手をないがしろにしてしまうことが多々ある。それで人を傷つけてしまったこともあるから、コミュニケーションを終えた夜、いつもひとりで反省会が行われるわけだ。毎晩つけている日記には、『コミュニケーション・ミス』という項目が存在している。「コミュニケーション・ミスなし」と書かれた日は、今年に入って、まだ一日しかない。それだけ、コミュニケーションというものは難しい……。
とはいえ、番組内に”あっち側”とされている方々にこういった悩みがまったく無いのかというとそんなわけもないだろう。”こっち側”と自分を卑下して開き直るのは勝手だが、”あっち側”が自分と同じような苦しみを抱えていないと決めつけるのは傲慢だ。私は、こういった、個々の性質をすべて一緒くたに二分してしまう乱暴さには自覚的になったほうがいいと考えていて、この番組では、分断を笑うというよりは、個々の性質をテーマにトークをしあうような形になっているから、暴力性を感じることはなかったのだが、普段生きていて、そういった暴力性を目の当たりにすることが多々ある。”陽キャ”とか”パリピ”とか”ギャル”とか、言い方は色々あるけども、知りもしない他者をそうジャンル分けし、自分と切り離すことは、とても危険な行いではないだろうか。あろうことか「自分の抱えているような苦しみは彼らには存在しないだろう」と遠巻きに羨ましがるような振る舞いは、自虐ですらない、ただの加害である。もし自分が根っから明るい性格だとしても、「悩みが無さそうでいいね」とか言われたら鼻を折ってやりたくなると思う。皆、それぞれ何かを抱えて生きている。性格が暗いだの明るいだのは、人間のごく一部についての話に過ぎないのだ。
何より私自身が、こういった属性分けを無邪気にやってきたし、きっと今もやっているのだろう。自分もされているのだろう。誰にでも寄り添える人間にならなくちゃいけない、そう肝に銘じて生きていきたいが、そんなことは、何よりも難しいことである。
ちょっと真面目な話になってしまったけども、この『午前0時の森』はすごく面白かったし、とにかくトークだけで構成されていく(最後にちらっとロケがあるけども)ステゴロっぷりがとても楽しい番組だ。何より、編集の感じが『行列のできる相談所』によく似ている。同じ日テレだし、同じ人が関わっていたりするのだろうか。もしくは、私が知らないだけで、あの密度と速度の同居した独特な味わいが、日テレバラエティの持ち味だったりするのだろうか。いやはや、テレビへの興味は、まだまだ尽きないものである。