倉崎憲「彼女の芝居がノブさんに見え、1年間一緒に走り続けたいと思った」
オーディション時の今田の印象を聞かれた中園は「すごい方々がオーディションを受けてくれたので選ぶのが大変でした!でも、今田さんの最終オーディションの時、スタッフが何人か泣いていて。それを見た時に、『ああ、ノブさんってこうゆう人だったんじゃないかな』と思えました。(今田さんは)温かくて力強くてみずみずしくて、最終オーディションのその瞬間に決めてました」とコメント。
そんな中園のコメントを聞いた今田は「うれしいの一言につきます」と照れながら笑顔を見せた。
また、倉崎氏は今田について「今田さんは、台本のせりふやト書き一つ一つを、ご自身の中で分かって理解して芝居に出してくれたので、自然と私たちの心を動かしました。彼女の芝居がノブさんに見え、1年間一緒に走り続けたいなと思いました。他のスタッフさんなども満場一致で今田美桜さんを選ばさせていただきました」と今田を選んだ理由を明かした。
続けて、「今田さんの芝居や姿勢は非常に自然でナチュラルだなというのが、オーディションを経て一番印象に残っています。あと、彼女の笑顔で、いい意味で緊張が高まり、いい意味で現場の雰囲気が変わるのを肌で感じました。ストイックでまじめで誠実な姿勢に、我々も向き合わされましたし、一つ一つのせりふへの読解力がすごく、芝居に落とし込んでいるので、今田さんだからこそ感じ取った資料がほとんどないノブさん像を、自分なりに演じてもらい、この作品を作っていけたらと思っています」と語った。
「あんぱん」の物語
昭和のはじめ頃、高知の町中をものすごい勢いで走る少女がいた。その少女は「ハチキンおのぶ」こと、朝田のぶ(あさだのぶ)。一方、幼い頃に父を病気で亡くした柳井嵩(やないたかし)は、叔父の家に引き取られ、そこでのぶと出会う。二人を結びつけたのは、一個のあんぱんだった。
戦争の足音が近づく頃、女学校に通っていたのぶは周りと同様に、妄信的な軍国少女となった。やがて戦争が始まり、嵩は出征。嵩は弟・千尋(ちひろ)を戦争で亡くし、のぶも最愛の人を亡くしてしまう。
女学校を卒業し、のぶは戦争で全ての価値観が変わり、「何が正しいかは自分で見極めなければならない」と新聞社に女性初の記者として就職。戦後、クズ拾いの仕事を辞めた嵩が新聞社に入社してきて、二人は同じ雑誌の担当に。嵩は東京で漫画家を目指したい気持ちがありつつも、生活していけるか不安だった。のぶはそんな嵩に「あなたも後から来なさいよ。先に東京に行って待ってるわ」と告げ、新聞社を辞め上京。
のぶを追いかけ上京した嵩と、六畳一間のオンボロアパートでの生活がスタート。お風呂はなく、トイレは共同。トイレの天井には穴があき、雨の日は傘をさして入らなければいけないが、晴れた夜には星が見える。そんな暮らしをおもしろがり、「どんな環境でも楽しめるこの人と一緒にいたい」と二人は結婚。「手のひらを太陽に」「アンパンマン」が世に出るのは、まだまだ先のことだった。