俳優デビューから2024年で12年を迎える松井勇歩。当初は「芸能界にまったく興味がなかった」と話す松井に、俳優として歩んでいくきっかけとなった出来事や特に思い出深い作品についてインタビュー。俳優人生について振り返ってもらいつつ、リークス役での出演を控える最新作、獣愛ブースト音楽劇『Lamento(ラメント) -BEYOND THE VOID-』(2月16日[金]〜25日[日])への意気込みについても聞いた。
当時のマネジャーからの言葉で奮起
――友人と一緒に受けたオーディションがきっかけでこの業界に入ったとのことですが、そもそも芸能界に興味はあったのでしょうか?
いや、最初はまったくありませんでした。高校卒業後にフリーターをしていたんですが、そろそろ就職を…と思っていたときに、友達に付き添って行ったオーディションがきっかけで事務所に所属することになりました。
――その後、劇団Patchに所属されましたが、芸能界に興味がなかった松井さんが俳優に挑戦してみようと思ったのはなぜですか。
劇団員として集められた15人のうち、僕も含めて13人は舞台未経験者だったんです。ほとんどの人とスタートラインが一緒だったし、僕はずっとサッカーで団体行動をしてきたというのもあって、みんなで何かをするというところに興味を持ちました。だから、当初は部活に近い感覚でした。
――経験や知識のないまま飛び込んだことで、苦労したことも多かったのでは?
そうですね。その時の座組の演出家が末満健一さんだったんです。今となっては鍛えていただいたと言えますが、当時はとても厳しくて。やりたいことじゃないのに、どうしてこんなに言われないとあかんねん、という思いはしばらくありましたね。
――その時点で辞めるという選択肢もあったと思いますが、それでも続けてこられたのはどうしてでしょう。
劇団の第2回公演が選抜キャストだけの出演で、僕は選抜外で舞台に出られないことになったんです。いいタイミングだから辞めようとその時に思ったんですけど、当時のマネジャーさんに「どうせ辞めるなら、あいつを辞めさせたのはもったいなかったと思わせてから辞めてみろ」と言われて。
――そこで火がついたんですね。
その言葉がなかったら、ここまで続けられていなかったと思います。だから、出番はなかったけど、毎日稽古場に行って全員のセリフを覚えていました。そうしたら、本番の数日前に出演予定だったメンバーがひとり出られなくなってしまって。その役の動きやセリフが入っていた僕が、急遽出演できることになったんです。そういう経緯で立った舞台だったからか、「芝居って楽しい」と初めて思いました。
劇団Patchが原点であり、一番大事なもの
――今は俳優としての仕事の楽しさや、やりがいをどういうところに感じていますか?
舞台上で自分がセリフを発する時は、大きい劇場だと1000人のお客さんたちが自分だけを見るので、やっぱりその瞬間はめちゃくちゃヒリつきますね。そういう楽しさと、ミスをしたらそれもそのまま届いてしまうという怖さ。その2つの感情を同時に感じられることが舞台の面白さだなと思います。
――舞台でしか感じられない刺激ということでしょうか。
そうです。舞台は毎回、何が起きるか分からないですし、もしかしたらけが人が出るかもしれない、舞台セットが倒れるかもしれない。だからこそ、全員でたくさん稽古するし、全員がその日のカーテンコールに向けて集中して作っていく。そういうところが好きですね。
――楽しさ以外に、この仕事を続けているモチベーションをあげるとしたら?
僕は2023年に劇団Patchを卒業したのですが、今でも一番大事なものは劇団Patchなんです。やっぱり僕の原点だし、劇団のメンバーたちが頑張っていると聞くと、僕も負けないようにしないとと思いますね。今は新しい環境でしっかりやりつつ、そしていつか、僕の活動が何らかの形で劇団Patchに還元できたらいいなと考えています。
――これまでの活動の中で、特に思い出深い作品はありますか?
初めて主演をさせてもらった劇団Patchの1周年記念公演というのはひとつの転機になっています。そして、舞台『刀剣乱舞』ですね。“刀ステ”のオーディションを受ける少し前、実はいろいろと悩んでいたんです。いつまで役者を続けられるかとか、このまま東京にいていいのかとか。そんなときに、これでダメだったら今の状況を変えようという思いで挑んだのが、“刀ステ”のオーディションでした。
――区切りをつける作品が“刀ステ”だったのは何か理由があるのでしょうか?
『刀剣乱舞』はものすごく大きいコンテンツなので、これで落ちたらもう自分は2.5次元作品では無理なんだろうなと思って。当時、劇団の中でもオーディションを受けられる人は限られていたし、他に向いている子がいるかもしれないから、僕がダメなら他にチャンスを与えた方がいいんじゃないかと思いました。
でも、結果的に“刀ステ”で役をいただけることになって、そこからは状況がガラリと変わりました。お客さんに見ていただける環境がすごく増えましたし、今もこうやって仕事を続けさせてもらっているので、本当にありがたいなと感じています。
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■獣愛ブースト音楽劇『Lamento(ラメント) -BEYOND THE VOID-』公式サイト
https://s-size.co.jp/stage-info/stage/lamento/
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