コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、北原順一さんの『異次元おじさん』をピックアップ。
2024年1月27日にX(旧Twitter)で本作を投稿したところ、多くの「いいね」や反響コメントが寄せられた。本記事では、北原順一さんにインタビューを行い、創作のきっかけや漫画を描く際のこだわりについて語ってもらった。
呼び出した人を望むところへワープさせてくれる“異次元おじさん”の噂話
この村には、とある噂があった。決められた順序を踏んで“異次元おじさん”を呼び出すと、呼び出した人を望むところへワープさせてくれるというのだ。
村に住む小学5年生のカズキとみさきは、ある夏の日、みさきの家から脱走した犬を探していた。しかし、どれだけ探しても見つからなかったため、カズキが異世界おじさんに頼んでみることを提案する。
半信半疑のまま噂通りの順序を踏んだところ次元の狭間が出現し、本当に異次元おじさんが現れた。そして、暗闇の中に続くトンネルのようなところを抜けると、犬の元に辿り着いたのだ。
実際に異次元おじさんに会えたことで、みさきはもう1回呼びたいとカズキに伝える。みさきが2歳頃まで一緒に暮らしていた父親に会いたいというのだ。悪い予感がしていたカズキだったが、真剣なみさきを止めることができず、もう一度、異次元おじさんを呼んでしまう。そして、暗闇の中に入っていったみさきは二度と帰ってこなかったのだ。
後に、みさきの母親から父親はすでに他界していたことを聞かされたカズキは、あの暗闇の先に出口はなかったのだと悟る。みさきはずっと、暗闇の中を彷徨っているかもしれない…。
そして10年後、カズキは決意を固める。異次元おじさんを呼んで、失踪当時のみさきがいるところに連れていってもらおうと…。過去と同じ段取りで異次元おじさんを呼び出し、カズキは再び次元の狭間に身を投じる。果たして、カズキは10年前のみさきに出会うことができるのか、そして無事にこちらへ帰ってくることができるのか…。衝撃の結末は、ぜひ漫画を読んで確かめてほしい。
作者・北原順一さん「取り留めのない恐怖心がストーリーを生み出す原動力」
――『異次元おじさん』を創作したきっかけや理由などをお教えください。
「異世界」が流行っていたため、自身もその波に乗りたいと思っておりました。しかし、どうしても上手く描くことができなかったため「異次元なら描けるのではないか」と思い書き始めたのがきっかけでした。
――本作を描く中で、特に力を入れた部分や、大切にしたことなどをお教えください。
異次元おじさんは幼い頃の思い出や恐怖を中心に描いた作品なので、誰もが通学路で歩いたような田舎町の雰囲気を大切にしました。「夕暮れ時のY字路に現れる化け物」というワードを聞いただけで小学生の頃の噂話を思い出される方もおられるのではないでしょうか。そういうノスタルジックな気持ちを読者の方にも共感していただけたら幸いです。
――ストーリーの最後、異次元おじさんになったカズキは、子供の頃のカズキとみさきに呼び出されます。これは、みさきを救ったとしても同じことが永遠に繰り返されてしまうということなのでしょうか?
みさきが救われれば、カズキの過去は変化して異次元おじさんを再び呼び出すこともなくなります。つまり、カズキの未来は2つに分岐したのです。異次元おじさんになってしまった世界線のカズキだけが未来永劫救われることなく時空の狭間を彷徨い続けます。
――北原さんはホラー漫画を多く創作されています。ストーリーを考える際、どのようなところから着想を得ているのでしょうか?
普段犬と散歩をするコースが古くて長閑な田舎道でして、とにかく平和です。そんな散歩道だからこそ歩いている時に「もしも…だったら」という妄想がよく頭をよぎります。「もしも、そこの電柱の影から手が伸びてきたら」「もしも、このY字路に化け物が現れたら」など。そういう取り留めのない恐怖心がストーリーを生み出す原動力です。
――最後に、今後の展望・目標をお教えください。
新しい作品に取り組んではいるものの、描いているうちにホラーに寄っていってしまいます。なので今後は「ホラーではない作品」に挑戦したいと考えております。心温まる作品や楽しい気持ちになれるポジティブな作品に憧れています。私自身の性質と合わないかも知れませんが、いつか形にしたいです。今後とも北原順一を応援よろしくお願いいたします。