絡み合う宿命…按針、鞠子から見た“戦国日本”
特にユニークな点が、イギリス人航海士ジョン・ブラックソーンの存在だ。
ストーリーは、ブラックソーンの視点を通して進んでいく。細長い刃物を振り回し、裁判もせず平気で人の命を奪う者たちへの驚きと恐怖…。何の予備知識も持たないブラックソーンの視点で描かれる日本は日本人の我々にとってもどこか新鮮で、ブラックソーンが一つ一つ日本の言葉やしきたりを覚え“按針”になっていくにつれ、彼と一緒に日本を再発見するような不思議な感覚が味わえる。
サワイ演じる日本人・鞠子が、それを可能にしている。戦国一の武将である虎永と、日本をまったく知らないブラックソーン。2人の間に鞠子が通訳として入ることで、多くを語らない虎永の思惑を読み解きながら、ブラックソーンの日本に対する疑問を受け止める。鞠子は言葉のやりとりだけでなく、五大老たちの思惑が絡み合うストーリーを分かりやすく視聴者に伝える役割も担っているのだ。
3人の宿命が絡み合って物語が動き出す
「宿命がわしらを結び付けたのじゃ。そなた(鞠子)とわしと、そして潮目を変えるやもしれぬその異人(ブラックソーン)とも」。虎永のこのセリフから、すべてが動き出す。この“宿命”は本作を貫くキーワードであり、ブラックソーンが最初に覚える日本語の一つでもある。3人の“宿命”が絡み合い、戦国日本の勢力図が大きく動いていく。
真田が「今まで自分が培ってきた、学んできたあらゆるものをこの作品に注ぎ込める喜びもありました」と語る通り、この作品には「ラストサムライ」(2003年)から20年抱き続けた彼の思いが込められている。日本人にこそ見届けてほしい、ハリウッドスケールの戦国スペクタクルの誕生だ。
◆文=ザテレビジョンドラマ部
※西岡徳馬の「徳」は心の上に一本線が入るのが正式表記
パラマウント
発売日: 2022/11/02