日本最大級のCS映画専門チャンネル「ムービープラス」では、日本時間3月11日(月)に開催される「第96回アカデミー賞」授賞式に先駆け、3月4日(月)から過去の受賞作や関連作などを連夜特集放送。今回のアカデミー賞で最多13部門にノミネートされた映画「オッペンハイマー」、11部門の「哀れなるものたち」に次ぐ10部門にノミネートされた「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」を手掛けた名匠マーティン・スコセッシ監督の「ハスラー2」や「カジノ」もラインアップされている。日本人にもなじみ深い、リビングレジェンド・スコセッシ監督だが、アカデミー賞の作品賞および監督賞を受賞したのは今回のノミネート作「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」で6度目のタッグを組んだ、レオナルド・ディカプリオ主演の「ディパーテッド」(2007年受賞)のみ。ノミネートは2019年の「アイリッシュマン」以来だ。それでも次々と新星が現れては消えていく激動のハリウッド映画界で、御年81歳の今もなお第一線で活躍するスコセッシ監督をフィーチャーし、彼がタッグを組んだ実力派俳優との色あせない名作の歴史をひもとく。
盟友ロバート・デ・ニーロと歩んだ若き時代
スコセッシ監督は半世紀にわたり数多くの傑作を世に送り出してきた、映画界のリビングレジェンド。「ミーン・ストリート」(1973年)、「タクシードライバー」(1976年)、「グッドフェローズ」(1990年)、「カジノ」(1995年)、「ディパーテッド」(2006年)、「ウルフ・オブ・ウォールストリート」(2013年)など、作品名を挙げればきりがないほどハリウッドの映画史に作品とその名を刻んできた。イタリア系移民の家系のスコセッシは、米・ニューヨーク州で生まれイタリア人街で育った。マフィアが支配する社会で過ごしたことから、彼の作品の中では、リアルな暴力描写や裏社会の事情、登場人物たちが心の奥底に抱く精神的な闇を冷徹に映し出している。そしてこれらの作品に欠かせないの俳優が「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」にも出演するロバート・デ・ニーロだ。
遡ること51年前に公開されたニューヨークのイタリア人街で繰り広げられる青年2人のダークな友情を描いた「ミーン・ストリート」で、スコセッシとデ・ニーロは初めてタッグを組んだ。同作は、次代の映画界を担う旗手として彼の名を世に知らしめたと同時に若手俳優のデ・ニーロも脚光を浴びた。
2人のタッグにおける代表作の一つ「タクシードライバー」では、ニューヨークを舞台にタクシー運転手へとして働き、戦争で負った心の傷に苦しむ孤独なベトナム帰還兵・トラビスをデ・ニーロが演じた。社会の不条理にいら立ちを感じていたトラビスの狂気を見事なまでの役作りで表現したデ・ニーロの秀逸な演技も高い評価を受け、同作は「第29回カンヌ国際映画祭」で最高賞パルムドールを受賞している。
そして1970年代のラスベカスのカジノを舞台に、欲望渦巻くギャンブル街での金と犯罪にまみれた人間模様を描いたバイオレンス作「カジノ」。同作はスコセッシ監督作「グッドフェローズ」の原作者でもある、ニコラス・ビレッジのノンフィクションを基に製作されており、今作でもビレッジはスコセッシと共同で脚本を手掛けている。また彼の作品ではおなじみとなったデ・ニーロが演じる、ラスベカスのカジノギャング、ジミー・コンウェイを筆頭に物語の登場人物や時代背景は事実、実話に基づき描かれているため、当時の華やかなカジノシーンとギャンブルの街を仕切るギャングたちの裏事情がリアルに感じられるとても見応えのある大作だ。
「ハスラー2」では当時の若手俳優トム・クルーズを起用
1970年代〜80年代、当時まだ“大勢いる若手の一人”だったデ・ニーロと切磋琢磨しながら至高の“ギャング映画”を生み出す一方で、ハリウッド界のトップスターの一人、ポール・ニューマン主演の「ハスラー」(1961年)の続編でメガホンを取ったことも彼のキャリアを振り返る中で忘れられないだろう。前作はロバート・ロッセン監督が手掛けており、賭けビリヤード師として頭角を現した新星ハスラーのエディ・フィルソン(ニューマン)と伝説的なビリヤードプレイヤーのミネソタ・ファッツ(ジャッキー・グリーソン)との対決を描いている。
ニューマンからオファーを受け、監督を務めた「ハスラー2」(1986年)はファッツとの決戦から25年後のストーリー。ニューマンはエディ役を続投し、新星ハスラーとして登場するヴィンセントには当時若手俳優としてブレイク中だったトム・クルーズを起用した。
同作は現役ハスラーを引退し、お酒のセールスマンとして暮らしていたエディが、才能あふれるヴィセントに出会い、若き頃の自分の姿を思い出して彼を一流ハスラーへと育て上げていく。前作と同様にビリヤードにフォーカスしているものの、ビリヤード自体が分からない人でもエキサイティングに映し出すカメラワークや師弟関係となる2人の掛け合いが存分に楽しめる魅力的な作品だ。また当時日本で公開されるやいなや、ビリヤードホールが相次いで開店するなど、お茶の間で“ビリヤード旋風”を巻き起こした。
本作は見事に大ヒットし、「第59回アカデミー賞」では4部門にノミネートされ、ニューマンは念願の主演男優賞を受賞している。
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