「キャスティングに関してもゼロから一緒に作り上げた」
――キャスティングにも関わられたということですが。
スタッフィングの後、キャスティングに関してもジャスティンに最後の2、3人に絞られてきたところで意見を聞かれて、日本語のこと、演技のこと、キャラクターに合ったキャスティングをしたいということだったので、意見を申し上げました。元々は違う役で参加することになってスケジュールを空けていた方も「もしかしたらこちらの役のほうが合うんじゃないか」ということを申し上げて、それが採用されたこともありましたので、キャスティングに関してもゼロから一緒に作り上げた感じです。
――キャストもそれぞれハマり役ですね。
(虎永の家臣の)藪重役の(浅野)忠信君は、彼が10代の頃からの付き合いですから、僕にとって“藪重”にピッタリでした。広松役の(西岡)徳馬さんに関しては、数人いた候補の中から「もう彼以外考えられない」って僕が推薦して決まりました。虎永にとって非常に重要なパートナーですから、徳馬さんとは30年以上の付き合いでいろんな役で対峙(たいじ)してきましたので、「その長きにわたる関係性をセリフではなく、言葉ではなく、見た方に伝えるにはこの人しかいません!」と。実際、素晴らしいパフォーマンスをしていただいたのでうれしく思っています。
――淀君にインスパイアされた“落葉の方”役の二階堂ふみさんも雰囲気、存在感がすごいですね。
まさしく存在感が素晴らしいです。自分の役として、髪飾りの選び方一つ、履き物の選び方一つまでこだわられていました。直接的な絡みは少ないのですが、重要なライバルですよね。彼女は日本で一度“淀君”を演じられていて、僕は僕で家康を一度演じたことがあったので、お互いに役をしっかりとつかんでいて、会話のないところでも目と目を合わせるだけで、2人の過去や奥行きを感じさせることができました。
それに絡みは少ないとはいえ、彼女のシーンも僕は全部付いていて、演技を見ていました。割と早く向こうの現場になじんで、後半はクルーとも友達になってやりとりしていました。そういうところも彼女の良さですね。
――セットも大掛かりなものに。
ハリウッドの力技と言えるぐらいのスケールの大きなセットを組むことができました。嵐のシーンのセットも、空中に浮かんで自動で操縦できる実物大の船を作ってしまって、その上にウォータータンクがあって、実際に役者を乗せて船を揺らしながら水がダーッと流れてくるんです。それをカメラマンが手持ちのカメラで撮影するという、ディズニーのアトラクション的な感じでした(笑)。
忠信くんが崖の下で溺れそうになるシーンも、セットで崖を作って、ウォータータンクを積んで一気に何トンっていう水を流して実際に波を作ったりして。忠信くんも体を張った演技を見せてくれています。そういうスケールの大きさとダイナミックなところと、繊細な日本の美学というのが今回のテーマだったので、その辺りが見てくださる方に伝わるといいなと思っています。
「1600年の日本に浸って見てもらえれば」
――海外制作の作品で“日本人”を多く演じられてきた真田さんだからこそ、表現できたことも多かったのかなと思いました。昨年の「ジョン・ウィック:コンセクエンス」でのコンチネンタル・ホテル大阪支配人・シマヅも日本語で話していましたし、正しく紹介されているのを感じました。
「ジョン・ウィック―」もチャド(・スタエルスキ)監督が日本の武士道をリスペクトしてくれていて、僕の役には武士の在り方みたいなものを表現してほしいというものがありましたので、現代物とはいえ、その志は刷り込んだつもりです。割と日本人以上に海外の方が日本人の精神性に興味を持ったり、憧れたりしてくれているんですよね。ですから、「SHOGUN 将軍」もどこかそういうものをあらためてくみ取っていただけるチャンスになればと思っています。1600年の日本の世界に浸っていただいて楽しんで見てもらえればと思っております。
そしてこれが配信されて、さらに日本の題材やら人材やらを紹介する作品がどんどん増える。その架け橋にこの作品がなればいいなと思いますし、また機会があればプロデューサーとして日本の素晴らしいタレント、スタッフ、美学を紹介していければいいなということも思っています。
◆取材・文/田中隆信
撮影/永田正雄
ヘアメイク/高村義彦(SOLO.FULLAHEAD.INC)
※西岡徳馬の「徳」は心の上に一本線が入るのが正式表記
https://www.disneyplus.com/ja-jp/series/shogun/
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発売日: 2022/11/02