旅で得たのは「相手を分かろうとすることの大切さ」
――ドキュメンタリーとドラマの割合はどれくらいでしたか?
ドキュメンタリー:ドラマ=9:1くらいではないでしょうか。
「ここはドラマにした方が面白いんじゃないかな?」というポイントを思いついて撮り直したこともありましたし、そういったことを毎日スタッフさんと語り合っていました。
最終的にどこに落とし込むか、自分自身も撮影チームの皆さんも未知のままサイパンに行ったので、みんなでいろんな意見を出し合った末に見つかった最後のゴールだったんです。それが非常に心揺さぶられるものでしたし、生きる上で大事な気づきを得た撮影になったと感じています。
――今回のテーマである「美しい海と精霊」には元々興味があったのでしょうか?
正直、スピリチュアルは信じたいけれど信じられない、半信半疑な気持ちがあって。本当に知れるなら知りたい、その世界に行けるなら行きたいんです。ですが、現実的な自分もいる。興味はあるけれど「精霊なんて本当にいるの?」とも思っていました。
ただ、視野の狭い自分は嫌で、もっとすてきな物を見る目を養いたいし、それが少しでも垣間見えるのであれば…と。行こうと思った動機は「どうなの? 精霊って何なの? スピリチュアルって何なの?」という気持ちでした。
――実際に行って気持ちや考え方は変わりましたか?
変わりました。実際に精霊を信じている先住民・チャモロの方たちがいて、信じていない私がいて。信じている人のことを分かろうとする。彼らって本当に、全てにリスペクトをする人たちなんです。
目がキラキラしていてものすごく幸せそうな顔をしていましたし、人に対しての接し方全てにリスペクトが込められていて、それが相手の心を動かすんですよね。
そこで、リスペクトについても考えました。リスペクトすることが大事だとは分かるけれど、リスペクトするってやっぱり難しい。でも、リスペクト=分かろうとすることなんだと、彼らとの出会いを通して気がついたんです。
リスペクトすることは出来なくても、分かろうとすることは出来るじゃないですか。例えば「この人ちょっと嫌だな」と思っている人のことも、分かろうとすることは出来る。そうすることで、嫌いだと思っていた人に対して違う見方が出来ますよね。
旅の中で、スピリチュアルのことはやっぱり分からなかったけれど、分かろうとすることはしました。そして、分かったふりをしないことがとても大切だということにも気づきました。ドラマと言えど、うそをついてはいけない領域が自分の中にあり、そこは今回守ったつもりではあります。
――「相手を分かろうとすることの大切さ」が松本さんのサイパン編には詰まっているんですね。
ちゃんとこれから先の人生でも大切にしていこうと思いました。自分の好きな人たちだけと生きればいいやではなく、そうではない人のことも分かろうとすることが大事だなと。大変だけど、頑張ろうと思います。