TVerアワード2023受賞の傑作ドラマ3作品、その魅力を改めて振り返る「あなたがしてくれなくても」「VIVANT」「夫婦が壊れるとき」
丁寧な心理描写が受賞につながった?「あなたがしてくれなくても」
「あなたがしてくれなくても」は、ハルノ晴による大ヒットコミックを原作としたドラマ。多くの夫婦が抱える、けれど他人にはなかなか打ち明けられない“セックスレス”の問題に切り込んだ衝撃作として話題となった。
主人公の吉野みち(奈緒)と夫の陽一(永山瑛太)は結婚5年目の30代夫婦。セックスレスと聞いたら愛が冷めきった夫婦像を思い浮かべるかもしれないが、2人の場合は仲が良く、はたからは何の問題もないように見える。だが、みちは陽一がセックスに応じてくれないことに人知れず悩みを抱えていた。
そんなみちの心にスッと入り込んできたのが、上司である新名誠(岩田剛典)の存在だ。イケメンで仕事もでき、かつ奥様思いと評判の彼もまた妻・楓(田中みな実)とのセックスレスに悩んでいた。みちと誠は同じ苦しみを共有することで打ち解け、いつしか恋仲に。
いわば不倫であり、普通ならば世間から叩かれる対象となるが、放送当時SNSでは2人を応援する声が多かった。一方で、陽一と楓に同情、あるいは擁護する声も。それだけ意見が割れたのは、丁寧な心理描写によるものだろう。
セックスレスと不倫というセンセーショナルなテーマを扱いながら、過激さを売りにすることなく、キャラクターひとり一人の心情を掬い上げた。また、それを見事に体現した役者勢の功績も大きい。それぞれの抱える痛みに、誰もが無関係ではいられなくなる。それが今回の受賞に繋がったのではないだろうか。