まるで主人公とヒロイン、ソウジロウとユノ
リチアを離れる馬車の中。世界詞のキア(CV:悠木碧)は、リチアの街を救えなかった後悔をエレアに吐露する。エレアは落ち込むキアを慰めつつ、その強大すぎる力を自分がコントロールすることを決意する。動乱の翌日、墓地に赴いたクゼは墓守とともに埋葬を手伝う。敵も味方も関係なく、両陣営の死者をいたむクゼは、できる限りの人を救いたいとの想いをより強くする。一方、柳の剣のソウジロウ(CV:梶裕貴)と遠い鉤爪のユノ(CV:上田麗奈)は徒歩で黄都へ向かっていた。自分の欲望最優先で、ほかのことは一切気にも留めない姿勢のソウジロウに対して、ユノは改めて真っ向から異を唱える。さらには、リチアを出発しようとする鎹のヒドウ(CV:岡本信彦)の前には星馳せアルス(CV:福山潤)が姿を見せる。上覧試合に出てハルゲントと戦いたいと申し出るアルスに、ヒドウは自分がアルスを擁立することを約束するのだった。
中盤は、生き残ったキャラクターそれぞれの現在の心境が語られた。無敵の力をもっと多くの人々のために使いたいと願うキアと、自分の望みのため、手練手管でキアの信頼を得ようとするエレアの関係性は変わらずだが、キアからの好感度はさらに上がっており、ここまではエレアの思惑通りと言えそうだ。一方、殺すことでしか人を救えない自分に悩み、「勇者」という存在に希望を見出そうとするクゼは、タレンの「勇者が欲しいな」という言葉に多少なりとも影響を受けている様子。ちなみに、静かに歌うナスティーク(CV:堀江由衣)は、最終話で初めて「救われたいの?」というセリフを喋っており、SNSでは「うわあああ! 喋った!」、「声優さんの無駄遣いもここまでくるとアッパレ!」など、反響が大きかった。さらに注目したいのは、ソウジロウとユノの関係性だ。ユノは「だって世界は、どうでもよくなんかないから」と自分の気持ちを冷静に、しっかりとした言葉でソウジロウに伝えており、これはユノなりの成長に違いない。またソウジロウがその言葉に対して「そうなのかもな」と返答しており、一定の理解を示したのもポイントだ。それぞれの信条は変わらず、依然として交わらないままではあるものの、お互いに歩み寄ろうとする姿勢が見られたのだ。今後、もしかしたらふたりは良い相棒になれるかもしれないと期待させる一幕だった。
多くの謎を残した最終話、第二期制作決定に反響
舞台は一年前に遡る。黄都二十九官のひとりである速き墨ジェルキ(CV:子安武人)は、本物の魔王を倒したとされる「勇者」を探して奔走するも、いまだに見つからないでいた。そこに、まだ幼い黄都女王セフィト(CV:石見舞菜香)を連れたエレアが通りかかる。勇者探しに明け暮れるジェルキに対して、「本物が必要?」と口にするセフィト。ジェルキの頭に、勇者自称者を黄都に集めて上覧試合を行うというアイデアが生まれた瞬間だった。
最終話の最後で描かれたのは、異修羅世界の根幹を成している「本物の魔王」と「勇者」、そして「修羅」たちの関係性だ。現女王はまだ幼く、国民からの求心力を得るには「本物の魔王」を倒した「勇者」の存在が必須であること。また一方で、次なる魔王の誕生を防ぐためにも、強者による一斉潰し合いが望ましいこと。これらを上覧試合として成立させるというのがジェルキの構想だろう。しかし、もしクゼの疑念が正しいのであれば、ジェルキとタレンは裏で組んでいたということになる。もしかしたら、お触れを出しての上覧試合では真の強者は集まらないと考え、意図的にタレンの造反という状況を生み出したのかもしれない。戦争状態にすることで、地位や名誉以外の価値観で動く強者を集めようとしたのだ。これらは推測に過ぎないが、最後に描かれたジェルキのモノローグからは、すべては最初から仕組まれていた可能性が捨てきれない。そしてさらに恐ろしいのは、女王セフィトの存在だ。純真であどけない外見とは裏腹に、全てを見通すような瞳を向けるセフィトは、まるでジェルキを誘導しているかのようで、間違いなく只者ではないだろう。
こうして多くの謎を残したまま最終話を終えた本作だが、さっそく第二期制作が発表されるとSNSでは「キタキターー!」、「ありがとうございます!」、「最高のアニメ!」と大盛り上がりだった。結局、第一期で生き残った修羅は4名。第二期ではさらなる修羅が多数登場することは確実なので、さらなる盛り上がりに期待して待とう!
※朴ロ美のロは、王へんに路
■文/岡本大介
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