「パラサイト 半地下の家族」「怪物」「ドクター・プリズナー」など、巧みなストーリーテリングで魅せるミステリの多い韓国ドラマ。なかでも「奇跡の兄弟」は、芸歴20年以上のキャリアを誇るチョンウと期待の若手俳優ペ・ヒョンソンのタッグが話題を呼んだ傑作だ。緻密に組み上げられた謎、各キャラクターの魅力など、見どころ満載な本作を深掘りしていく。
“記憶喪失の男”がカギを握るヒューマンミステリ
何事にも全力な男ユク・ドンジュ(チョンウ)は、有名な作家になりたいという熱い気持ちを持つ青年。しかし家族や友人とのトラブルによって背負うことになった借金も、情熱と同じくらい大きな金額へふくれ上がっていた。
そんなドンジュの人生は、急展開を迎えることに。母親と言い争いをしながら運転していたところ、急に飛び出してきた謎の少年カン・サン(ペ・ヒョンソン)を跳ねてしまったのだ。
慌てて少年を病院に運んだドンジュだったが、相手の少年は身元も不明なまま。そしてそんな少年のカバンから見つかったのが「神は死んだ」という小説だった。すばらしいクオリティを誇る同作に魅入られたドンジュは、それを自分の作品として世に発表。一躍ベストセラー作家となってしまう。
一方、搬送先の病院で奇跡的に目を覚ました少年。自分の名前もわからない記憶喪失状態の彼には、人の苦しみや思いを感知する特殊能力があった。頼るべき相手もわからないためドンジュと一緒に暮らすことになった少年だが、特殊能力が原因でさまざまな人を助けることになる。
ここまでならハートフルSFなのだが、同作には複雑な要素を持った謎が絡んでくる。たとえばユン・ドンジュが拾った小説は多くの人に称賛される仕上がりだった。しかし見る人によっては、その内容が27年前に起きたある殺人事件の内容に似すぎているとわかる。あまりに克明な小説の描写は、事件を追っていたある刑事の目に留まるほど。
とはいえドンジュはカン・サンの荷物から見つけた原稿を発表しただけで、当然刑事から事件との関係を疑われても何も答えることはできない。そこで自分でも27年前の事件を調べてみることにしたのだが、事件の関係者が通っていた高校で“ありえない写真”を見つけることとなる。
カン・サンの特殊な力と次第によみがえってくる記憶が、散りばめられた謎のピースを徐々に埋めていく。ファンタジックな要素がありつつも、点と点が少しずつ結ばれていくカタルシスは本格ミステリそのもの。見終わったあとに「奇跡の兄弟」というタイトルを見て感じる感慨と、絶妙なタイミングで差し込まれる名言が胸に突き刺さる名作だ。
人柄と愛嬌で視聴者を引きつける“チョンウ”と弟感満載の“ペ・ヒョンソン”
有名作家を志すドンジュを演じるのは、芸歴23年目に入る俳優のチョンウ。2001年に映画「7人の夜明け」でデビューを果たし、2009年に主演した自主映画「風」で大鐘賞映画祭で新人男優賞を受賞する。そして2013年に主演を務めた「応答せよ1994」が大ヒットしたことで、見事ブレイクを果たした。
男女問わず美貌の持ち主が目立つ韓国俳優陣において、特に見た目より演技力に注目を向けられるのがチョンウ。ドンジュでもそうだが、華やかな能力と経歴を持つイケメン主人公…ではなく、人柄と愛嬌で視聴者を引きつける温かい演技が魅力の1つだ。
そして正体不明の謎の少年カン・サンを演じるのは、若手期待の星であるペ・ヒョンソン。2018年放送のドラマ「キム秘書はいったい、なぜ?」でデビューしたあと、「恋愛プレイリスト」シリーズ、「偶然見つけたハル」などへの出演で広く顔を知られるようになった。
ユニークなのはファンから付けられたあだ名で、「3秒ボゴム」というもの。「国民の彼氏」とも呼ばれる美貌の俳優パク・ボゴムに、“3秒だけ見間違える”からだという。だが評価されているのは“子犬のようなかわいらしさ”を感じさせる演技力。「奇跡の兄弟」でも、不安定で放っておけない“弟”感にやられた人は多いはずだ。
安心して見ることができるチョンウとキラキラ輝く若手俳優ペ・ヒョンソンの好演が見どころの同ドラマ。脇を固める共演陣にはパク・ユリム(「ドライブ・マイ・カー」)、オ・マンソク(「愛の不時着」「ライアー」)、イ・ギウ(「スターの恋人」「18アゲイン」)など、豪華な実力派俳優が勢ぞろいしている。
緻密なミステリと壮大なヒューマンドラマを、韓国ドラマならではの味付けで表現した「奇跡の兄弟」。同ドラマは映像配信サービス「Lemino」にて独占配信中だ。